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勘違いによって核戦争が起きていたかもしれない。太陽の磁気嵐による軍事システムダウン

ギズモード・ジャパン 10/4(火) 20:10配信

今後も起きるかもしれない、大規模な磁気嵐。

現代の戦争は、ますますテクノロジーを駆使した情報戦の様相を呈するようになっています。ミサイルを落とされて初めて、戦争を仕掛けられたと気づくなんていうのは昔の話で、ミサイルなんて飛んでこようものなら、着弾する前に撃ち落とす警戒網が常に張られているのは今では当たり前ですよね。

今回は現代のハイテクな軍事技術だからこそ発生した、米軍の勘違いによる「究極のニアミス」の事例をご紹介します。

上の写真は、1962年にアラスカで稼働していた弾道ミサイル早期警戒システム(BMEWS)を上空から撮影したものです。冷戦真っただ中の当時、BMEWSのようなシステムはとりわけ重要度が高いものでした。ところが1967年5月23日、ソビエト連邦からの攻撃に備えて張りめぐらされていたBMEWSのレーダーが、そろいにそろって全てダウンする非常事態が発生しました。

米軍司令部は、これが敵国ソ連からの戦争行為に違いないと決断。直ちに米空軍には、核兵器を搭載したミサイルも含め、いつでも発射できるよう戦闘機の準備をするようにと緊急命令が下されます。

ところが、この報復の核攻撃が実行される寸前、突如として警戒態勢を解くようにとの指令が流れ、軍事行動は回避されたのでした…。では、それは何故だったのでしょうか。

”あれはまさに究極のニアミスだった。”

当時を知る、元米空軍司令官で、現在はコロラド大学の物理学者のDelores Knipp博士はこのように語って、事態を改めて検証する研究論文を発表しました。

実はこれに先立つ同年5月18日、太陽表面には異常に大規模な黒点の活動領域が出現。続いて5月23日に、巨大な太陽フレアが発生しました。この太陽の一連の活動によって、強烈な磁気嵐を伴う、20世紀最大規模の爆発現象「Great Solar Storm」が確認されています。なんとこの磁気嵐が、ソ連への警戒態勢までに至った、BMEWSのレーダーシステムのダウンの原因だったと判明したのです。

幸い北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)は、レーダーシステムのみならず、磁気嵐などの観測研究も早くから進めていました。一触即発の核戦争になりかねない緊急態勢に入った当時も、太陽予報センター(Solar Forecasting Center)の観測から、すべてのレーダーに電波妨害を仕掛けた犯人の正体が、ソ連軍ではなく太陽フレアの磁気嵐にあるかもしれないとされていました。この太陽フレアに関する情報が、間一髪で警戒態勢を解除し、核戦争が起きかねない状況を回避できた理由なのです。

こうした一連の非常事態から教訓を得て、現在も米軍では、いち早く宇宙天気予報を入手する態勢が整えられています。通信を遮断させる規模の磁気嵐に関する情報などは、事前に幅広く共有されているようです。

なお、1967年のGreat Solar Stormは確かに大規模でしたが、観測史上最大の磁気嵐は1859年に発生しており、電磁波障害を何か月間も引き起こすレベルだったといわれています。

もしこんな巨大な磁気嵐がこの現代の地球で発生したなら? 通信システムに生活を頼る私たちの危機は、太陽フレアの大爆発からやってくる、なんてシナリオも決してありえないものではないのかもしれませんね。

image by Wikimedia

Maddie Stone - Gizmodo US[原文]

(湯木進悟)

最終更新:10/4(火) 20:10

ギズモード・ジャパン

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