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「勘違いする力」が世界を変える

ニュースイッチ 10/4(火) 15:46配信

《「読学」のススメ》科学ベンチャーのエコシステムとは

 近年、日本のメディアや企業の広報などで、ベンチャー企業と同じ意味で「スタートアップ」という言葉が使われることが比較的多くなっているようだ。だが、本来のスタートアップの意味は、ベンチャー企業とは異なる。

 そもそもベンチャー企業は和製英語であり、そのまま米国などで使うとベンチャーキャピタルか、ベンチャーキャピタルの支援を受けている企業のことかと勘違いされることだろう。日本では既存の大企業ではできない、あるいはやろうとしない新規性の高いニッチな事業に挑戦する小規模の企業、といった意味で使われることが多い。

 スタートアップはシリコンバレー発のIT企業に多く、新しいビジネスモデルやサービスで出資を受け、短期間に急成長した企業を指す。そのほとんどがエグジットと呼ばれる、大企業への事業売却や上場をめざしており、いわばできるだけ早期に一攫千金を狙う企業群といえる。

 シリコンバレーにはスタートアップを支援する「Yコンビネーター(YC)」という組織がある。そこでは単に資金面のサポートをするだけでなく、起業を志す者にアイデアやビジネスモデル、投資家へのアピールの仕方などをアドバイスする。支援というより養成機関の役割を果たしており、可能性を認められて“入学”するスタートアップの卵たちの中には、はっきりと起業アイデアが固まっていないケースも少なくないという。また、「ピボット(旋回)」といってアドバイスを受けながら起業アイデアそのものを別のものに変更することも良しとされ、むしろ推奨されている。

 『「勘違いする力」が世界を変える。』(リバネス出版)に登場する11社は、いずれもスタートアップとは言えない。紛れもない「ベンチャー企業」だろう。同書では、株式会社リバネスの代表取締役CEO・丸幸弘さんが、関わったベンチャーの創業者たちと対談し、それぞれの思いとアイデアを聞き出している。

きめ細かさなど「日本の強み」を生かしたイノベーションに可能性が

 同書に登場するベンチャー企業は、丸さん自身も技術顧問として起業に関わり、ミドリムシを使った食品や燃料を開発して有名になった「ユーグレナ」、孤独を癒す分身ロボット「Orihime」を開発する「オリィ研究所」、遺伝子解析の「ジーンクエスト」、生体信号をコントロールする筋電義手をつくる「メルティンMMI」、形状や歪みを瞬時に計測する機器を発明した「4Dセンサー」など幅広い。

 これらの企業が提供する技術や製品は、まったく新しいものとは限らない。たとえば義手にしても、センサーにしても、以前からある技術だ。しかし、メルティンMMIの筋電義手は、従来の義手では考えられないくらい、「ものをソフトにつかむ」など細かい手の動きを再現できる。4Dセンサーの計測機器は、既存のセンサーでは数十秒かかる形状チェックをほぼ「瞬時」に行うことができる。これであれば、工場のラインを止めずにリアルタイムで製品のチェックが可能になる。

 こうした、既存の技術を研ぎ澄まし、機能を極限まで向上させたり、きめ細かな改善を加えるというのは、これまでの日本企業が得意としてきたことでもある。リバネスのエコシステムが完成し、「日本の強み」を生かしたイノベーションが再び世界を驚かせる日もそう遠くないのかもしれない。

※『「勘違いする力」が世界を変える。』(丸幸弘編・リバネス出版)

情報工場編集部×ニュースイッチ

最終更新:10/4(火) 15:46

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