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移住先を探すフォトグラファーが、岡山の陶芸家夫妻の家で感じたこと/岡山

Webマガジン コロカル 10/4(火) 14:58配信

暮らしを考える旅 わが家の移住について vol.2

コロカルWeb連載【暮らしを考える旅 わが家の移住について】とは?
自分たちの暮らしを自分たちで丁寧につくりたい。そんな思いから移住を決意した一家の物語。移住先を探す旅、そしてその暮らしを、夫婦で交互に綴っていきます。

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■夫婦で交互に綴る暮らしと移住のはなし

コロカルで『美味しいアルバム』を連載するフォトグラファー津留崎徹花が夫、鎮生とともに移住を決意。夫は今年6月に会社を辞め、現在は無職。ふたりと5歳の娘は、改造したワンボックスカーで移住先探しの旅に出ることに。夫婦で交互に綴る連載、今回は妻の徹花が見た、岡山の陶芸家夫妻の暮らしについて。

写真・文
津留崎徹花 つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。東京での仕事を続けながら、移住先探しの旅に出る日々。自身のコロカルでの連載『美味しいアルバム』では執筆も担当。


■私の背中を押してくれたもの

私は2年前に会社を辞め、フリーランスのフォトグラファーとして仕事をしている。『コロカル』や『anan』など、雑誌やウェブの仕事がメインで、それまでは社員カメラマンとして出版社に18年勤めていた。2011年に娘が生まれたときに育児休暇をとり、翌年の春から職場に復帰して2年間フルタイムで働いた。

40歳が目前となったとき、いったい自分は何をしているんだろう……と、ふと思った。子育てと仕事に追われ、時間に追われ、いつもイライラしている自分にようやく気づいた。40歳といえば人生の折り返し時点、このままだと死ぬ前にきっと後悔する……。仕事も含めて、自分が本当にやりたいこと、やるべきことは何だろうと考え始めた。家族との時間をもっとゆっくり穏やかに過ごしたい。この先、自分たちがどんな環境で何をして暮らすのがいいのだろうか。その答えを探し始めた。

すると、「そういうことだったのか!」と、自分たちに気づかせてくれる人たちが次々と目の前に現れ始めた。

コロカルの連載で出会ったおばちゃんたちからも、人生におけるヒントをたくさんもらった。沖縄で土を耕しながら店を営んでいるおばちゃんからは、こんな言葉をもらったこともある。「無理して高収入得なくても半分くらいにしてさ、地方で何もかも自分で工夫して育ててさ。やってみたらわかると思うから、土を身近に感じる暮らしのよさがね」本当に移住に踏み切っていいのか悩んでいた私の背中を押したのは、おばちゃんの教えだったように思う。

移住したいんだと友人に話すと、「お金どうするの?」と聞かれ「うーん、どうするんだろ、なんとかなるんじゃない?」と答える。不安がないわけではないけれど、何となくどうにかなるような気がしている、漠然と。でも時々は不安になって、父親に相談したりもした。すると、「人生は冒険だ。予測がつくことなんて何ひとつない、前に進め!」というメッセージが返ってきた。そうだ、人生は一度きり、前に進もう。


■すべてがひと続きになっている暮らし

岡山に住む友人の寺園家も、私たちを激しく揺さぶってくれた人たちだ。時間にとらわれない丁寧な暮らしをしている彼らに出会ったことで、自分たちが進みたい方向がはっきりと見えた気がする。

寺園家を初めて訪ねたのは昨年の秋のこと。証太さん(以降、証ちゃん)とゆうこさん(ユウ)と私は、同じ大学に通っていた。卒業してからふたりが結婚したことは聞いてたのだが、どんな暮らしをしているのかは知らないまま18年が経っていた。たまたま共通の友人から、証ちゃんが陶芸家になったこと、その暮らし方が独特で魅力的だと聞き、ちょうど岡山に行く用事があったので、ついでに寄らせてもらうことにした。

寺園家が住んでいるのは、岡山市から車で1時間ほど東寄りの瀬戸内市牛窓(うしまど)町。豊かな自然がありつつ市街地も近いというのは、子どもを育てるうえでもとても生活しやすい環境だと思う。

寺園家は牛窓に土地を購入して、ハーフビルドという方法で自宅を建てている。基礎や構造は業者に依頼して、内装などは自分たちで自由につくるというのがハーフビルド。自分たちでつくり上げたという家の内部は、普通とは少し違っている。それは、仕切りが極端に少ないこと。トイレとお風呂以外は一切壁がなく、生活スペースと仕事場もすべてがつながっている。作陶するときはどこかにひとりこもるんだよね? と思ってしまうが、寺園家の場合はすべてが混在している。

寺園家は「無理だからあきらめる」という思考から遠いところにいるのだろう。自宅に隣接している登り窯は、家族や友人で3年の歳月をかけてつくり上げたという。立派な窯を目の前にすると、「どうやったらこれ自分たちでつくれるの? 無理でしょ……」とつぶやいてしまう。

もうひとつ驚いたエピソードは、次女モモちゃんを自宅出産したこと。しかも、ユウは40才を超えていて、助産師もなしの完全家族だけ。

「無理でしょ……」

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最終更新:10/4(火) 14:58

Webマガジン コロカル