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十勝のクリエイターとつくりあげた、ここにしかないホテル空間。/北海道

Webマガジン コロカル 10/4(火) 14:14配信

リノベのススメ vol.123

コロカル・Web連載【リノベのススメ】とは?
地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。4つの都市から週替わりでお届けする、リノベーションの可能性。今回は、帯広市のリノベーションホテル〈HOTEL NUPKA〉(ホテルヌプカ)に担当していただきます。

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〈HOTEL NUPKA〉(ホテルヌプカ)の坂口琴美です。連載も第3回目となりました。

2016年8月末に北海道・東北地方を直撃した台風10号は、十勝全土にこれまでに経験したことがない大きな爪痕を残しました。自然の保水量を超えた豪雨で川が溢れ、交通インフラが破壊され、基幹産業の農業は多大な被害が生じ、そして貴重な命が失われました。いまだ完全な復旧に向けた道筋が見えない状況です。被害に遭われた多くの方にお見舞いを申し上げます。 HOTEL NUPKAのスタッフ一同も、地元再興に向け今できることを取り組んでいきたいと思っています。

これから十勝の秋は深まり、やがて冬の季節を迎えます。雪の広がる十勝平野、澄んだ空は青く、夜は星空が広がります。農作物の恵みとおいしい食べものを楽しみに、たくさんの方が訪れますように。NUPKAで、十勝の旅のお話をお聞かせください。


■十勝のクリエイターたちとの出会い

ホテルは泊まって眠るだけの場所ではない。旅行者と地元で暮らす人が交流する「まちをつくるホテル」でありたい。そんな私たちの思いを受けとめ、東京の〈UDS株式会社〉の皆さんが提案してくれたのは「Urban Lodge」というコンセプトでした。

「十勝・帯広の市街地の真ん中にあるホテルが“まち・ひと・もの・こと・場所”をつなぎ、コミュニティが生まれ発信される拠点」=「Urban Lodge」

世界中から旅人に訪れてほしいと自信をもって思える普遍的なコンセプトだと思いました。一方で、これからつくりだすホテルとしての場所や空間は、世界でここだけにしかない十勝を感じるものにしたいと私たちは考えました。

今回は、そのような私たちの願いを受けて止めて、「十勝を感じる」場所づくり・空間づくりに力を貸してくれた地元十勝の魅力的なクリエイターの皆さんをご紹介しようと思います。


■十勝のアウトドアの魅力を、空間リノベーションに結びつける

最初にご紹介するのは、十勝で造園業を営む川井延浩さん。旧〈ホテルみのや〉の土地と建物を、NUPKAのしかけ人である柏尾哲哉さんが取得した2014年3月、川井さんが経営する〈かわい造園〉のブログのなかで、事務所の敷地内で「冬キャンプ」を楽しむ様子が紹介されているのを柏尾さんは見かけました。

「十勝の極寒の冬にキャンプで一夜を過ごすなんてありえない」と思いながら、清々しい冬の十勝の空気のなかで、焚き火や食事を楽しむ写真には、これまで見たことのない楽しい様子が表れていてとても気になりました。その当時、川井さんと柏尾さんはまだ1、2度会ったことがある程度の面識でしたが、柏尾さんは川井さんに連絡し、ブログに写っていた「キャンプ場」の見学を依頼しました。

見学の当日、その「キャンプ場」は、十勝川を見下ろす高台の森の中にありました。山から切り出した木でつくった即製のコーヒースタンドで、川井さんは温かいコーヒーを入れて迎えてくれました。お湯は焚き火で沸かされたもの。静寂に包まれる森の中で、ポータブルスピーカーから心地よいBGMが流れ、冬の澄んだ青空の下、雪の白さが際立ちます。屋外なのに、家の中にいるような居心地のよさ。十勝の豊かな自然を生かしたインテリア空間を川井さんはつくっているのだと感じました。今では流行りとなった「グランピング」という言葉も当時は知らないまま、川井さんは本能的に十勝の自然を解釈し、表現していたのです。


■川井さんがつくり出した十勝サロンアネックスの室内空間

HOTEL NUPKAがオープンする1年半前の2014年9月。実験的に、旧〈ホテルみのや〉の1階部分を改装し、イベントスペース「十勝サロンアネックス」をオープンしました。私と柏尾さんは、その改装工事のディレクションを川井さんにお願いしました。造園業を本業とする川井さんにとって室内空間のプロデュースは初めて。「僕でいいのですか?」と聞かれましたが、私たちは、川井さんこそが中心市街地で十勝らしさを表現してくれると信じていました。

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最終更新:10/4(火) 14:14

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