ここから本文です

岐路に立つ固定価格買取制度、2017年度に実施する改正に多くの難題

スマートジャパン 10/5(水) 9:25配信

 経済産業省が毎年度の買取価格を決めるための「調達価格等算定委員会」を例年よりも3カ月早く10月4日に開催した。固定価格買取制度を規定するFIT(Feed-In-Tariff)法を2017年4月1日に改正することが決まり、2017年度から買取価格の決定方式を大幅に変更する必要があるためだ。

【その他の画像】

 法改正による買取価格の変更点は3つある。1点目は太陽光からバイオマスまで再生可能エネルギーの電源ごとに中長期の価格目標を設定する。2点目は従来の単年度の価格設定に加えて複数年度にわたる価格を一括で決定する。そして3点目は事業用の太陽光発電を対象に入札制度を導入することである。

 2012年7月に固定価格買取制度を開始して以来、国内の再生可能エネルギーは太陽光発電に偏って導入が進んできた。この問題を法改正によって改善して、適正なバランスで再生可能エネルギーを拡大することが目指す方向だ。とはいえ新たな価格決定方式を導入するには難問が多く、10月4日の委員会でもさまざまな課題が浮き彫りになった。

 2017年度から実施する価格決定方式は現時点ではイメージしか固まっていない。新方式では電源ごとに中長期の価格目標を設定して、それを参考に各年度の価格を決定する。太陽光と風力の買取価格を2030年度の目標に向けて大幅に低減させる一方、地熱・水力・バイオマスは2030年度以降に電気料金に匹敵する水準まで引き下げることを目指す。

 さらに事業用の太陽光のうち大規模な発電設備を対象に入札制度を導入する。住宅用の太陽光には価格目標に合わせて今後の低減スケジュールを示す方針だ。そのほかの電源は複数年度の買取価格を一括で決定して、事業者が発電設備の運転を開始できる時期を見越して買取価格を想定できるようにする。ここで問題になるのは、中長期の価格目標や複数年度の買取価格の設定根拠である。

事業用の太陽光は2020年度に16円へ

 新しい価格決定方式で最も大きな影響を受ける事業用の太陽光を例にとると、目標設定の根拠になるのは産業用の電気料金だ。電気料金と同程度の価格水準になれば、発電事業者が固定価格買取制度に頼らずに、火力発電などと同じように小売電気事業者に売電できる状態になる。現在の産業用の電気料金の単価は1kWh(キロワット時)あたり15円程度である。

 10月4日の委員会では太陽光発電の価格目標を設定するにあたって2種類の根拠を示した。1つは発電コストで、事業用(非住宅用)は2020年度に14円/kWh、2030年度に7円/kWhを目指す。住宅用は2019年度の買取価格が家庭用の電気料金並みに下がることが目標だ。家庭用の電気料金の単価は平均して25円/kWh程度である。

 もう1つの根拠になるのは太陽光発電システムのコストである。事業用は2020年度に1kWあたり20万円に、2030年度に10万円まで引き下げる。2016年度の買取価格を決定した時点では30万円/kWだったことから、2030年度までに3分の1に低減する挑戦的な目標だ。この目標を前提に2017年度以降の買取価格を決定した場合には、事業用の太陽光は2016年度の24円から2020年度には16円あたりまで下がる。

 同様に風力に対しても、2030年度までに発電コストを8~9円/kWhに低減する案が委員会で示された。現時点の風力の発電コストを13.7円/kWhと想定して、今後さらにシステム費用と運転維持費が低減することを見込んでいる。

 しかも従来は風力発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を20%に設定していたが、直近の実績値をもとに2017年度から25%に引き上げて買取価格を決定する方針だ。この設備利用率の改善だけでも、買取価格を2割近く下げる要因になる。

 風力をはじめ地熱・水力・バイオマスの買取価格は2017年度から複数年度を一括で決める方式に変わる。このうち風力だけは価格が低減していくモデルになる。実際に何年間にわたって、どのくらい下げるのか。価格目標の設定根拠と合わせて十分な議論が必要だ。

 このほかにも事業用の太陽光に導入する入札制度の実施方法を決めなくてはならない。入札の対象になる発電設備の規模をはじめ、入札量や上限価格の決定方法、買取期間の設定方法など難題が多い。入札の実施方法を規定したガイドラインの整備も必要になる。

 委員会は2017年3月までに合計5回の開催を想定している。第2回で入札制度を検討して、第3回で複数年度の価格決定方式を議論する。さらに1月から2月にかけて2017年度の買取価格を大筋で固めたうえで、3月に最終案をとりまとめる予定だ。新しい価格決定方式が再生可能エネルギーの導入量を増やす有効な対策になることを願いたい。

最終更新:10/5(水) 9:25

スマートジャパン