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【読書の秋】なぜ、人はくだらない「投資本」を買ってしまうのか?

ZUU online 10/5(水) 17:10配信

読書の秋である。

株式投資やFXなど、書店に行けばイヤというほど投資に関する本が並んでいる。

主婦や学生、素人が相場で大儲けした「成功談」を読むと、自分にも大儲けのチャンスが巡ってくるような気がする。いや、自分ならもっとうまくできそうな気がする。そう考える人は意外と多いのかもしれない。

だが、こうした本は本当にあなたの投資に役立つのだろうか。

■実は私も買っている

なぜ、こんな内容の記事を書くことを考えついたのか。読みもしない本を整理しようと本棚を見てみると、私自身こうした類の本を結構買っているのだ。

そのほとんどは一度目を通したきりで、二度とページを開くこともない、はっきり言って買う必要もなかった本ばかりである。

私は株式投資を始めて20年以上になる。

投資を始めたばかりの頃にもたくさんの本を買った。インターネットが普及した今では投資に関する情報は本よりもネットで得ることが多くなったが、昔は紙媒体から多くの情報を得ていたのだから、ある意味それは当然かもしれない。しかし、最近になってもそれなりに投資に関するノウハウ本を買っているのには、我ながら驚かされた。

なぜこんな本を買ったのか。記憶を遡ってみよう。大きな損失を出したり、うまくいかずに投資を縮小した時期がある。そんな時には、できる限り相場には近づかないようにしていたのだが、傷が癒えてくると、ついついこうした投資本に目がいってしまうのだ。

「一体、他人はどんな投資方法で利益を出しているのだろう」

きっと誰もが気になるはずだ。
書店に並ぶ投資本をつい手にしてしまう。まるで経験も知識もない素人投資家が大成功を収めたというサクセスストーリーだったり、長い間相場を研究した結果、あみ出したという独自のトレード手法という触れ込みについつい惹きつけられてしまうのだ。

「よし、これなら自分も成功できるに違いない!」と何の根拠も無く確信する。あなたは映画館で映画を観た後、テレビドラマを見た後、まるで主人公になったような気分になることはないだろうか。それと、全く同じ効果が投資本にはある。

そう、投資本を読むとあなたは歴史に名を残す相場師や巨額の資金を動かすトレーダーになったかのような気持ちになるのだ。実際には何も変わっていないのに。

■そもそも投資で勝つことはできるのか?

銀行員として金融商品を販売している立場の人間がこんなことを言うのも変だが、ほとんどの人は投資で失敗している。

投資で大儲けしたという人は確かにいる。私のお客様のなかにもたくさんの利益を出している人は実際にいる。しかし、そんな人はほんの一握りに過ぎない。

なかにはこんな人もいる。リーマンショックに引っかかり、大きな痛手を負ってしまった。もう投資はこりごりとばかりに、10年近くも塩漬けのまま放置していたところ、いつの間にか運用益が出るようになっていた。果たして、これを投資といって良いものかどうか。

やはり、実感として投資で勝つことは非常に難しい。正確に言えば、「勝ち続ける」ことは難しい。不思議なことに、多くの人は一時的には、それなりに成功を収める。しかし、継続して利益を出し続けることは、とてつもなく難しいことなのだ。そして、一度の失敗でこれまで積み上げてきた利益を全て吐き出してしまうのが、相場の世界なのだ。

なぜ継続して勝ち続けることができないのか。

相場環境は常に変動する。新興国投資に流れが来ていると思いきや、いつの間にか先進国へ資金が逆流することがある。日本株に限っても、大型株が買われていると思っていると、いつの間にか流れは中小型株へと移っているということもある。輸出関連株が盛況だと思いきや、いつの間にか内需関連株が買われていることもある。

多くの人が失敗する原因はこうした潮目の変化を読み取ることができないからだ。「今までこの方法でうまくいった」そんな成功体験が潮目の変化を読み取る感覚を鈍らせている。自分自身の成功体験ですら、弊害となる。ましてや他人の成功体験など一体どれほど役に立つというのだろう。

■雨乞いは必ず成功する

「あの人の言うことはよく当たる」「あの人の相場予想は素晴らしい」そんな話をしばしば耳にする。それも投資本を買ってしまう動機の一つかもしれない。

相場を予想することは「雨乞い」と同じだ。
昔、偉いお坊さんが雨乞いを行ったところ、たちどころに雨が降り出したという伝説が日本中に残っている。

では、雨乞いを行ったにもかかわらず、雨は一滴も降らなかったという伝説を聞いたことがあるだろうか? 過去に行われたすべての雨乞いが100%の確率で成功したとは常識的に考えられない。失敗した雨乞いは山ほどあるはずだが、それらは人の記憶に残らないのだ。

そもそもどんな干ばつであろうとも、10年も20年も一滴の雨も降らないなど考えられない話だ。つまり、雨が降るまでの時間さえ拘らなければ雨乞いは必ず成功する。

相場もまったく同じである。
「株は騰がる」と、言い続けていればいつかは騰がるのだ。たとえその間にリーマンショックが起きようとも、結果として雨乞いは成功したことになる。逆もまた然りだ。常に「株は暴落する」と言い続ければ、いつか株は下がる。その時には「リーマンショックを予測した」などというキャッチフレーズでもつければ、本の売り上げに多いに貢献するだろう。

■投資本とは「雨乞いの記録」である

つまるところ、投資本とは雨乞いの記録なのだ。干ばつで多くの人が途方に暮れていたところ、雨乞いを行ったら見事に雨が降ってきた。その時にはこんな儀式を行ったという記録なのだ。雨は降るべくして降ったのであり、決してその「怪しげな儀式」が雨を降らせたわけではない。

投資本にもこれがピタリとあてはまる。投資本を買うくらいなら、映画でも観に行った方がよほど楽しいのではないだろうか。(或る銀行員)

最終更新:10/5(水) 17:10

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