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ウェアラブル機器こそ、無線充電で狙うべき市場――ルネサスが初参入

EE Times Japan 10/5(水) 10:03配信

■小電力機器にこそ、ワイヤレス充電は向く

 ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)が、ワイヤレス充電市場に参入する。同社が狙う市場は、ヘルスケア機器、ウェアラブル機器、補聴器など、ボタン電池で動くような小電力機器向けのワイヤレス充電システムだ。

【受電IC「RAA457100」の回路ブロック概要】

 ワイヤレス充電といえば、現時点では、スマートフォンやノートPCなど小型・中型のモバイル機器向けが中心である。開発においては、より電力が大きな白物家電、そして究極的には電気自動車をターゲットにしているケースも多い。だがこれらの分野では、「Qi」や「Airfuel」などの規格の乱立や、発熱や電波に対する安全性、相互運用性、ワイヤレス充電用のインフラの整備、各国の電波法への対応といった多くの課題がある。ルネサスは「こうした分野では、有線で高速に充電したいというニーズの方が強いのではないか」と分析する。

 ルネサスが目を付けたのは、スマートフォンよりも電力が小さい、ウェアラブル機器などだ。ルネサスは「これらの機器では、例えば歩数計に無線通信機能が搭載されるようになり、それによって一次電池ではなく二次電池が搭載されるようになっている。また、洗えるように防水、防じんへのニーズや、小型化、薄型化へのニーズも強い」と説明する。“ワイヤレス充電が本当に必要な機器は何なのか”を考えた結果、小電力機器こそがその答えだったという。

■充放電に必要な機能を1パッケージに

 ルネサスが今回発表したのは、ワイヤレス充電用の受電IC「RAA457100」と送電IC「RAA458100」である。ワイヤレス充電の方式としては電磁誘導を採用している。

 受電ICには、

・アンテナコイルに励起した交流電流を直流電流に整流する整流回路
・リチウムイオン二次電池を充電するための充電制御回路
・電池保護機能
・アプリケーションのシステム動作用電圧を生成するためのDC-DCコンバーター

といった、リチウムイオン二次電池を充放電管理するために必要な機能を、3.22×2.77mmの1パッケージに収めたところが最大の特長である。通常、受電ICでは、電池保護ICやDC-DCコンバーターが外付けになっていることが多い。パッケージは41端子WLBGAだ。入力電圧は18V。充電終了電圧は4.05V、4.2V、4.35Vから選択でき、急速充電電流は最大70mAに設定できる。DC-DCコンバーターは、1mA程度の軽負荷時に85%の高効率を実現している。

■ウェアラブルに特化した無線充電IC、「まだない」

 送電ICは、アンテナコイルに交流電流を印加するブリッジ回路を駆動して、受電側が必要とする送電電力値になるように制御する。I2Cインタフェースを搭載していて、これによって外部EEPROMデータを読み取り、レジスタを書き換えることで、温度や充電電流などのパラメータ値を変更できる。さらに、外部のマイコンと接続することでアプリケーションに合わせたカスタマイズも可能だ。なお、モバイルバッテリーなどから電源を供給できるように、送電ICの電源電圧は5V単一となっている。

 ルネサスによれば、現時点では、小電力機器向けのワイヤレス充電用受電IC/送電ICは、ないという。仮にスマートフォン充電向けの受電IC/送電ICを流用するとなると、充電電流が大き過ぎる。数百ミリアンペアほど流れてしまうからだ。そのため、発熱の問題が出てきてしまう。さらに、アンテナコイルのサイズも大きいので、機器に搭載できない場合もある。やはり、補聴器やウェアラブル機器には、それ専用の受電IC/送電ICが必要になるのだ。「ウェアラブル機器に特化したワイヤレス充電用ICは、まだ市場にはない」(ルネサス)

■標準規格に準拠する必要はない

 ルネサスの受電IC/送電ICは、QiやAirfuelといった標準規格には準拠していない点も特徴だ。ルネサスは「そもそも、これらの規格が策定された目的は、電池の消耗が速いスマートフォンなどを出先でもケーブル無しで充電できるよう、考えられたもの。(カフェや商業施設など)どこでも充電できるようにするには、やはり規格が必要だ」と説明する。だが先述した通り、一方で規格の乱立が足かせとなり、普及が進まないという側面もある。さらに規格に準拠していることをうたうとなると、認証試験も必要になり、時間とコストが掛かる。「ウェアラブル機器は電池が長時間持つので、自宅で充電するケースがほとんどだと想定している。そのため、独自規格でまったく問題ないと考えている」(同社)

■評価キット

 受電IC、送電ICともに2016年11月からサンプル出荷を開始する。サンプル単価は受電IC、送電ICともに1000円。2017年第1四半期(1~3月)には量産対応が可能になる予定だ。

 受電IC、送電ICを搭載した評価キットも用意している。現在のところ、同評価キットを販売する予定はなく、貸し出しで対応するという。評価キットには、レジスタを書き換えてパラメータをセットするためのGUI(Graphical User Interface)ソフトウェアが付属している。

最終更新:10/5(水) 10:03

EE Times Japan