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「HY戦争」今や昔 “ライバル”ホンダとヤマハ発の提携、両社首脳が語ったこと

ITmedia ビジネスオンライン 10/6(木) 8:51配信

 「2社から『HY戦争』と言ったことは一度もない。熾烈な競争が過去あったのが事実だが、その時のしこりなどは一切ない」──ファンを驚かせたホンダとヤマハ発動機の協業。手を組むのは50cc以下の原付(1種)だ。記者会見で語られた「なんとか残したいという思い」という言葉からも、かつて両社が激しい争いを繰り広げた原付市場の「極めて厳しい状況」が浮かぶ。

【国内2輪車販売台数の推移】

 両社は今後、(1)ホンダが50cc原付スクーターを2018年中を目標にヤマハへOEM(相手先ブランド名による製造)供給、(2)次期50cc原付業務用スクーターを共同開発し、ホンダがヤマハにOEM供給、(3)原付1種クラスの電動2輪車普及に向け、航続距離や充電時間などの課題解決を目指す基盤づくり──について業務提携を検討する。

 原付スクーターのOEM供給では、ホンダは「TACT」(タクト)、「Giorno」(ジョルノ)をベースとしたモデルを供給し、ヤマハはそれぞれ独自デザインによる「JOG」(ジョグ)、「Vino」(ビーノ)に該当するモデルとして販売する。ホンダはOEM供給分を熊本製作所(熊本県大津町)で生産する計画だ。

●激減する原付市場

 1980年代、50cc原付の拡販をめぐって両社が繰り広げた「HY戦争」は今も語りぐさだ。そのライバル2社が手を結んだ背景にあるのは、免許制度や法規まで含め日本独自のものが多い50cc原付の需要が落ち込んでいることだ。

 1980年に198万台を販売した50cc原付は、2015年には19万4000台と、10分の1までに激減している。「価格の上昇や、軽自動車や電動アシスト自転車の普及など、近距離移動手段が多様化した」(ホンダ・青山氏)ことも背景にあるが、2輪市場自体が大きく縮小しており、反転のきっかけも見えない状況だ。

 記者会見で「原付を提供するメーカーとしての社会的責任」が強調されたのも、裏を返せば、撤退もありうるほどビジネス的には厳しい状況に追い込まれているということの現れでもある。

 提携は今年2月、ヤマハからホンダに打診し、検討を進めてきた。ヤマハにとっては世界的に需要が伸びている125ccなどにリソースを振り向けられ、ホンダにとっては熊本製作所の稼働率向上や、生産規模拡大によるメリットも見込める。

 またヤマハは「原付は2輪車へのエントリー(入門口)として非常に重要」(渡部克明 MC事業本部長)としており、規制対応などで価格の上昇が進む原付の価格を、OEM供給を受けることで抑えられると期待する。

 記者会見で語られた、両社幹部の主な一問一答は以下の通り。

 ──過去には「HY戦争」もあった。感情的なしこりなどはないのか。

ホンダ・青山真二 二輪事業本部長 原付1種はビジネス的には極めて厳しい状況が続いており、2社にとってはメリットがある。お客がいる中、メーカーとしての社会的責任を全うするという観点もある。

 「HY戦争」だが、2社から言ったことは一度もなく、メディアがそのような表現をした。80年代初頭から2社間で熾烈な販売競争があったのは事実だが、その時のしこりなどは一切ない。二輪車に親しんでもらいながら、最終的には大型を含めた2輪文化を盛り上げていくというのが両社の思いであり、相反するものはない

ヤマハ発動機・渡部克明 MC事業本部長 私が入社した年にHY戦争に負けて、全員一律5%の減俸だった。HY戦争のしこりやわだかまりは決してない。日本とEUしか市場はないが、2輪車へのエントリーとしても存続させたい。より良いものをお客に提供していくための協業と考えている。OEM供給は自動車では当たり前に行われている。

 ──提携の経緯は。

ヤマハ・渡部 50cc事業は継続という意味では非常に厳しい。排ガス規制などに対応していくことに難しさを感じていた。事業を継続していくにはどうしたらいいか、社内で検討した結果、ホンダとの提携の道を選び、今年2月にヤマハからホンダに提案した。国内の50cc原付は2輪車へのエントリーとして非常に重要だ。なんとか残したいという思いだ。

 ──50cc以下の原付の落ち込みが激しい。

ホンダ・青山 価格は重要な要素だが、保安基準、排ガス基準など年々厳しくなる中、価格が上がっていったことが市場縮小につながった面がある。30キロの速度制限や2段階右折といった各種規制もあり、制約が少ない原付2種が販売構成上増えている。近距離移動手段の代替としての軽自動車や電動アシスト自転車の普及もある。

 ──その他の領域への拡大は。

ホンダ・青山 協業領域は原付1種に限っている。拡大は考えていない。

 ──ホンダからヤマハへはどの程度の供給を想定しているのか。

ホンダ・青山 来年3月ごろに契約を結ぶ予定で、具体的な台数はまだない。熊本製作所ではスケールメリットも出てくるだろう。

ヤマハ・渡部 50ccを生産する台湾拠点はざっくりと35万台規模。その一部の4~5万台くらいのインパクトがあるのではと考えている。

──125cc(原付2種)免許への関心がネットで高まっている。

ホンダ・青山 グローバルスタンダードとして125ccへ流れが移っていくのは望ましいと思う。ただ50ccへのニーズがなくなるわけではない。そこには応え続けていきたい。

ヤマハ・渡部 (普通自動車免許で125ccを乗れるようにするべきかという話題に)ネット上では32万人が反応していて、賛否は半々。日本でオートバイへの認知があまりない中、ポジティブな印象だ。もっと125ccの免許を取りやすくして、シフトしていく流れが望ましいのでは。

──OEM供給でヤマハの「ジョグ」と「ビーノ」はなくなるのか。

ヤマハ・渡部 ジョグとビーノともデザインはヤマハ独自で開発する。魂は乗せた形で、ジョグとビーノは続いていくと考えている。

最終更新:10/6(木) 10:18

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