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セブン&アイ、10年で特損6200億円のなぜ?

ニュースソクラ 10/6(木) 15:40配信

鈴木前会長の「負の遺産」の清算を

 セブン&アイ・ホールディングスは6日夕、2017年2月期中間決算を発表する。井阪・新社長は中期経営計画も合わせて公表する。いわば、新社長のデビュー戦となる。

 メディアの一員としては、お手並み拝見、カリスマ経営者を継ぐだけの資質を見せられるか。5日にもライバルの小売り企業の中間決算の発表があるが、どこよりも注目されているのは間違いない。

 もし、質問が許されるなら、聞いてみたい点がひとつある。それはセブン&アイがこの10年ほどの間に積み上げた特別損失の山についてだ。2006年2月期から特別損失が発生していない決算期はない。

 もっとも少なかった2014年2月期で311億円、最も多かった2010年2月期は866億円もの特別損失を計上している。2006年2月期以降の特別損失の累積損は6200億円にも及ぶ。同じ期間の最終利益の合計額は1兆3000億円。もし特別損失がなければ最終利益は1.5倍に増えていたことになる。

 特別損失の計上はいまの日本では非常に増え、恒常化しているが、それでも10年以上にわたって最低でも300億円もある特別損失を切れ目無く出し続けている会社はさすがにほとんどない。そこだけを捉えれば、まるで倒産寸前の経営悪化の会社にしかみえない。

 もちろん、セブン&アイは売上高で日本で小売業ナンバー1の超一流企業で、利益率も高い。なのになぜ、これほどの特別損失を計上し続けて生きたのか。

 特別損失のなかみは、いろいろのようだが、たとえば、2009年2月期。有価証券報告書には、「減損の実施および西武百貨店所有のクレディセゾン株式に対する有価証券評価損を計上したこと等によるものであります」と書かれている。

 最近の有価証券報告書での特別損失に関する記述が見当たらないことが気になるが、要するに、会社買収に伴う株式投資や店舗など不動産への投資が失敗しているということだ。他の小売業にも特損体質は見えるが、やはり損失額は見逃せない額だ。

 これは、鈴木敏文前会長兼CEOの下で、百貨店など新たな事業投資がまったく会社に利益をもたらすことがなかったという事実を示しているのではないか。世界に誇れるといえるほどの便利なコンビニを日本に築きあげた鈴木氏だが、最後の10年は経営判断の過ちから、6000億円を超える損害を会社と株主に与えていたのではないか。

 船出した井阪体制にとって、もっとも明らかにしなければならないのは鈴木体制のもっていた負の遺産を明確にすることだ。今期決算では600億円の減損処理で、負の遺産を受け継がない姿勢は示した。しかし、これまでどおりの特別損失の計上体質から逃れられていないと受け取る株主もいるだろう。

 井阪氏は、今期の特別損失がいままでとは性質の違うものであることを説明する必要がある。同時に、井阪社長にとっての恩師である鈴木前会長の功績をたたえるばかりでなく、鈴木経営の問題点をも整理して語る必要があるだろう。それがなければ、顧客と株主、取引先、コンビニオーナー、従業員から信頼を得ることはできない。

■土屋直也(つちや・なおや) ニュースソクラ編集長
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設

最終更新:10/6(木) 15:40

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