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ポケットで水素を運べるプラスチック、新しい水素貯蔵材料へ期待

スマートジャパン 10/7(金) 7:10配信

 早稲田大学理工学術院の西出宏之教授、小柳津研一教授らの研究グループは2016年9月、小型かつ水素をためている状態でも手で触ることができる「水素運搬プラスチック」を開発したと発表した。身近な場所での水素貯蔵を可能にし、地域分散型のエネルギーシステム構築への貢献に期待できる成果だという。

 次世代のエネルギー源として水素の活用に注目が集まる中、関連研究開発や製品開発が加速している。一方、政府の掲げる「水素社会」を実現する上では、水素の製造や貯蔵だけでなく、水素をどういった状態で、どのように運搬していくかも重要な項目だ。

 現在の水素の運搬方法は、高圧ボンベなどで保管し、液化した状態で運搬するといった方法が主流だ。しかし万が一の爆発など、危険性の課題を指摘されることも多く、より安全かつ効率の良い水素運搬体の開発も期待されている。こうした背景から研究グループは、水素の貯蔵・運搬・放出においてエネルギー負荷が少なく、さらに安全で軽量な、新しい形式の水素運搬体の開発を目指した。

 研究グループがその素材として利用したのが、プラスチックシートとして成形できるケトンポリマーである。ケトンポリマーを水に浸し、マイナス1.5V(ボルト)の電圧をかけると、化学結合によって水から水素イオンが取り込まれ、水素が固定されたアルコールポリマーが生成されることを発見した。こうして水素をケトンポリマーに水素を固定する。

 このアルコールポリマーは80度に加温すると、水素ガスを放出することも分かった。これにより固定した水素を放出させることができる。さらに水素の固定と放出のサイクルは温和な条件下で簡易に行え、その繰り返しも可能であることを確認できたという。

手で触ってもOK

 ケトンポリマーに電圧をかけて水素を固定するプロセスは、マイナス1.5Vの電圧でよく、さらに1時間程度で済むとしている。80度の加温によって水素を取り出すと、アルコールポリマーはケトンポリマーに戻る。1グラムのケントポリマーを利用することで、約30ミリリットルの水素ガスを取り出すことができるという。

 また、こうした水素と固定と発生のプロセスは、約50回のサイクル試験を行った後でも性能減少はわずかだったとしている。アルコール、ケトンポリマーはともに安定で、室温・大気下で長期保存することもできる。約1カ月保存しても、性能劣化はなかったとする。

 研究グループは今回の成果のメリットとして以下の点を挙げている。まず、ケントポリマーを利用しているため、毒性・揮発性がなく、防爆対策が不要である点だ。さらにこのケントポリマーは軽量かつ成形性にも優れ、運搬や保存も容易である。水から室温での電解により水素を固定するため、水素ガスを原料とせず、高温高圧環境を必要としないというメリットも挙げた。

 プラスチックとして水素をためている状態でも手で触ることができ、例えばポケットに入れて持ち運ぶことも可能だという。身近な場所での水素貯蔵材料などとしての展開が期待できるが、今後の課題として残るのが質量水素密度が低い点である。現時点の質量水素密度は1.1wt%程度。研究グループではこの課題の改善に向け、よりコンパクトな分子構造のアルコールやケントポリマーを検討していく方針だ。

最終更新:10/7(金) 7:10

スマートジャパン