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【米雇用統計】トランプ・リスクが再燃する危険性も

ZUU online 10/7(金) 18:10配信

9月の米雇用統計が間もなく発表される。

次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)は11月1、2日に予定されているが、翌週の8日に大統領選挙の投票日を控えていることから、利上げを実施するとは考えづらい。利上げは早くても12月のFOMCと考えると、それまでに雇用統計の発表は今回を含めて3回あることになるので、今回の結果は中間報告の位置づけとなる。

まずは完全雇用の状態にあるのかどうかの確認作業が優先されるが、雇用の拡大が続いているのかどうかもポイントとなる。

■完全雇用は達成されているのか?

FRB(米連邦準備理事会)のスタンレー・フィッシャー副総裁らが指摘している通り、米国は完全雇用に近い状態にあることは間違いないだろう。しかし、ジャネット・イエレンFRB議長は、9月のFOMCで利上げを見送った理由として、労働市場にはまだスラッグ(緩み)があると指摘している。

こうした認識のズレが生じているのは、失業率と雇用者数、賃金の動きがかみ合わないからだ。

まず、失業率を見ると8月まで3カ月連続で4.9%と下げ止まっている。昨年10月に5.0%まで低下した後、1年近くの間おおむね横ばいで推移していることから、既に完全雇用に達している可能性がある。

その一方で、雇用者数は8月までの3カ月平均が23.2万人増加と人口の増加を吸収するのに必要な10万人程度を大きく上回っている。にもかかわらず、8月の賃金は前年同月比2.4%上昇と7月(2.7%上昇)から伸び率が低下した。

雇用の大幅な増加で賃金の伸びは加速する「はず」であるにもかかわらず、実際は鈍化しているということは、労働市場にはまだ「緩み」が残っており、完全雇用には達していないと推測されるというわけだ。

したがって、12月の追加利上げを実現するためには、とにもかくにも賃金の伸びが加速する必要がある。

■気になるインフレ率の動き

雇用者数の増加を過去12カ月平均で見ると、2015年2月の26.2万人増加をピークに今年8月の20.4万人増加まで緩やかに鈍化していることが分かる。

失業率の動きにも注意が必要だ。失業率の上昇は景気のピークアウトを示唆している可能性が高く、特に前年同月を上回るとその可能性が強まる。失業率が年末にかけて5.0%を上回るようだと、年明け以降にリセッションが始まることも想定されてくる。

イエレン議長は9月のFOMCで利上げを見送った理由として、インフレ率が目標となる2%に達していない点も指摘したが、ここにも問題がある。

8月のCPI(米消費者物価指数)は前年同月比1.1%上昇した。7月(0.8%上昇)に比べて0.3%ポイントの上昇である。食品とエネルギーを除く8月のコアCPIは2.3%上昇となり、昨年11月以降は2.0%を上回る伸びを続けている。CPIの今後については、原油価格の動向次第で2.0%に向けて上昇する可能性もある。

■個人消費にも陰りが見え始める

賃金が伸び悩むなかで物価がのみがジリジリと上昇した場合、家計の購買力が低下して個人消費にマイナスの影響を与えることが懸念される。最近の経済指標を見ると、景気をけん引してきた個人消費にも陰りが見え始めている。

まず、個人消費のバロメータとされる自動車販売が失速している。米自動車販売台数は9月まで2カ月連続で前年を割り込んでおり、2016年は通年でも前年を下回る公算が大きい。8月の小売売上高も前月比0.3%減少と予想を上回る減少となった。

医療費や家賃の上昇に加え、最近では原油価格も持ち直している。雇用者数の増勢に陰りが見られるなかで、個人消費が息切れするようだと、雇用の拡大も頭打ちとなる恐れがある。

■株価伸び悩みなら「トランプ・リスク」再浮上も

雇用統計の結果に対する株価の反応はネガティブとなる公算が大きい。雇用増加が予想を上回れば、利上げ観測が強まる一方で、予想を大きく下回るようだと景気の先行きが心配され、いずれにしても株安を誘うだろう。

9月26日に開かれた大統領選のテレビ討論会では共和党のドナルド・トランプ候補に対する大統領としての資質が改めて問題視されたが、最近では「税金逃れ」も批判の対象となりさらに支持率を落としている。

とはいえ、株価が伸び悩むようだと、トランプ候補が息を吹き返す可能性がある。

9月30日付けでブルームバーグが配信した記事によると、1944年から2012年までの18回の大統領選挙において、その年の7月31日から10月31日のS&P500株価指数の動きを調べてみると、上昇したのが11回でそのうち9回で政権が維持された。一方、下落した7回のうち6回で政権が交代している。

10月4日現在、S&P500株価指数は年初来では5.2%上昇しているものの、8月以降では1.1%下落している。株価は景気のバロメータであり、株価の低迷が政権交代を促しても不思議ではない。現在は民主党政権であることから、10月も株価が伸び悩んだ場合には、共和党のトランプ候補には追い風となる。

雇用統計の結果が株価を支援できず、大統領選が再び接戦となった場合、「トランプ・リスク」がドル安を招く可能性が高まることも否定できない。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

最終更新:10/7(金) 18:10

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