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「VR」は盛り上がっているようだけれども 各社の動きと利用者の声

ITmedia ビジネスオンライン 10/7(金) 7:27配信

 最近、「VR」のニュースに触れる機会が増えてきた。9月に開催された東京ゲームショウでも、VRブースにたくさんの人が集まるなど、賑(にぎ)わいをみせていた。

【VRゲームを体験する一般ユーザー】

 しかし、である。メディアや業界はVRを取り上げるケースが増えてきたが、世間の人たちはどこまでこの新しい技術を期待しているのだろうか。興味のない人にとっては「VRってなに?」といった感じだし、興味はあっても「毎日のように楽しんでいるよ」といった話を聞くことはほとんどない。このような状況の中で、各社はどのような動きをしているのか。現状を紹介しよう。

●東京ゲームショウではVRが注目を集めた

 多くの人はVRといえば「立体ゲーム」を想像するだろう。今年の東京ゲームショウでもそれを裏付けるように多くのVRゲームが出品されていた。「Oculus Rift」「HTC Vive」「PlayStation VR」の登場で2016年は「VR元年」になるのでは? と期待を寄せる声も多い。実際、VRゲームが数多く展示され、多くのユーザーが体験していた。

 ということは今後、ゲームの主流はVRになるのか。そんな疑問に、VRコンテンツなどを開発しているProduction I.G(プロダクション・アイジー)が答えてくれた。「ゲームが普及していくためには、もちろんキラーコンテンツが必要ですが、どこで販売できるかも重要でしょうね。PlayStation VRはPlayStation Storeで購入できますし、Google CardboardはAPP StoreやGoogle Playでダウンロードができるので、そういう点で有利でしょうね」

 PlayStation VRは10月13日に発売されるが、予約が好調だという。ソニーストアでアクセス過多による障害が一時的に発生したり、量販店でも数日で初回予約分の受け付けが終了している。ゲーム業界ではこのPlayStation VRに大きな期待を寄せている。

●音楽コンテンツで仕掛けるエイベックス

 一方、ゲーム業界ではない企業もこの市場に参入している。エイベックス・デジタルだ。専用アプリ「dTV VR」を無料ダウンロードすれば、人気アーティストのVR動画コンテンツを楽しむことができる。専用コンテンツにはエイベックス所属の「AAA」「超特急」「SOLIDEMO」「Acid Black Cherry」など10~20代を中心に人気のアーティストが並ぶので、ファンにとってはたまらないコンテンツになるかもしれない。

 また、使用機器はスマートフォンとCardbordなので手軽さがウリだ。iPhoneとAndroidの両方に対応していて、Cardboardの専用ゴーグルは1000~3000円ほどで購入することができる。さらに、紙製のCardboardもあり、雑誌やBlu-rayソフトの付録で手に入れることもできる。

 さらに、キャンペーンも展開している。2016年8月27~28日に野外イベント「a-nation」で、来場者全員にdTVオリジナルのCardboardを配布し、体験ブースを設置した。体験ブースでは多くの若者が、アーティストのコンテンツを体験していた。

 エイベックスの発表によると、特設ブースで1万人以上が体験したという。これは過去最大規模の体験会だそうだ。実際に現場で感想を聞いたところ「自分の好きなアーティストが立体で見られて嬉しい」「手軽に楽しめて面白い」といった意見が目立った。ただ気になったのは「お金を出すまでは……」といった意見も多かったことだ。有料化できるコンテンツの充実が今後の課題と言ったところだろうか。

 とはいえ、dTV VRアプリのダウンロード数は8月末時点で累計10万ダウンロードを超えている。これは日本で最も利用されているVRアプリなので、今後の動向から目が離せない。

 エイベックス・デジタル 常務取締役の村本理恵子氏は「同社の強みは、人気アーティストのコンテンツを配信できること。今後は音楽アーティストだけでなくアニメコンテンツなども検討して配信していきたい」と手応えと今後の方向性を語っている。

●各地で体験イベントを仕掛け普及を狙うサムスン

 また、スマートフォン用のVRで、サムスンもチカラを入れている。自社のAndroidスマートフォン「Galaxyシリーズ」用のVRアクセサリー「Gear VR」を普及するために、サムスンジャパンは各地でイベントを開催している。



 9月3日から14日まで開催された「Galaxy Studio」は、Gear VRを使ったアトラクションを体験できるイベントとして人気を集めた。ジェットコースターの疑似体験ができる「VR 4Dシアター」や、実際にボードに載って体験する「サーフィン体験」などが公開され、多くのカップルやファミリー層が順番待ちをしていた。サムスンも「まず体験してもらうことが普及のカギ」と認識しているようだ。

 体験者に話を聞くと「未知の体験だった」「欲しいと思った」という好感を持った意見が多かった一方、「所有するスマホがiPhoneなので」「Galaxyに買い換えないと利用できないんですか?」といった意見も聞こえた。Gear VRを普及させるために「Galaxyシリーズ」の利用者を増やすことが、同社の課題になりそうだ。

●決定的なハードとキラーコンテンツが必要

 今回はゲームや音楽といったエンターテインメント分野での現状を紹介した。このほかにも、製造、建築、医療といった現場でも利用が考えられるし、アダルドビデオ業界でも注目されている。幅広い業界でVRが期待されているが、それを利用するユーザー側は今イチ火がついてない、伝わっていない雰囲気がある。イベント現場で聞かれた「お金を出すほどでも……」という言葉がそれを如実に表している。新しいイノベーションとして認知はされてきているが、「いますぐに必要」とまでは至っていないようだ。

 そのような状況の中で、10月に発売されるPlayStation VRが、ブームの火付け役となるのか。それとも音楽コンテンツのVR化が引っ張っていくのか。はたまたアダルトコンテンツが先行するのか。現時点で確かなことは言えないが、新しい技術が一般家庭に食い込むために、今、業界全体がVRの決定的なハードとキラーコンテンツを待望していることは間違いない。

(甲斐寿憲)

最終更新:10/7(金) 7:27

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