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世界の衛星メーカーがデジタル&ソフトウェアに投資する理由

ITmedia ビジネスオンライン 10/7(金) 10:38配信

 昨今、自動車分野では自動運転に代表されるようにデジタル&ソフトウェア技術に注目が集まっている。その結果、もはやこの分野は自動車メーカーだけのものではなく、GoogleなどIT企業の参入も相次ぎ、競争がいっそう激しくなっているのが現状である。

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 実はこうしたデジタル&ソフトウェア化の波は、自動車分野にとどまらず、これまでハードウェアが主体であった衛星業界にも押し寄せてきているのだ。

●デジタル&ソフトウェアが今後の鍵

 「衛星はさまざまなハイテク産業の中でも、とても洗練されており、ハードウェアが重要な要素を担っている。しかしながら、我々が現在注力しているのはソフトウェアだ。最も人材を採用しているのもソフトウェア分野だ」

 これは9月中旬にフランスの首都・パリで行われたイベント「World Satellite Business Week」で、大手衛星メーカー・欧Thales Alenia Spaceのジャン・ルイ・ガルCEOの発言だ。同会合では世界の大手衛星メーカーの経営陣が集まり、衛星分野における今後のトレンドに関する意見交換がなされたとのことだが、報道されている各社トップマネジメントの発言内容は今後のビジネス動向を見通す意味でも大変興味深い。

 米Space Systems Loralのジョン・セリCEOは「Software-Defined Payload(ソフトウェア定義・制御による衛星)に注目している。フレキシブルなモジュール生産を行うことで、50~60%のコスト低減にもつながる」と語り、さらには「衛星製造に3年、運用に15年という既存ビジネスとは別のダイナミクスが起きている。将来的にはクルマのように顧客がニーズに応じて機能やオプションを選ぶようになる」と見解を述べる。

 米Boeing Satellite Systemsのマーク・スピワック社長も「衛星のデジタル化とフレキシブル化が進むことで部品点数が減り、製造もシンプルになりコストが下がる」と話すなど、各社トップマネジメントの背景にある共通認識は、衛星に求められる機能とものづくりのあり方が変革する段階に来ているという認識だ。そして、そのコアにあるのがデジタル&ソフトウェア技術と見ているのである。

●ベンチャー企業は小型化・量産化で勝負する

 大手企業だけではなくて、ベンチャー企業からも新たなコンセプトが生まれている。そのキーワードは「小型化」と「量産化」だ。

 現在、欧米の衛星ベンチャー企業では数十~百数十キログラムの小型衛星を量産し、数十機から数百機を打ち上げて、それを連携させるという計画が多数進んでいる(※複数衛星を連携する“コンステレーション(星座)”という概念は古くからあり、米Iridium Communicationsや米Globalstarなどが実現済みだ)。

 地球規模の衛星インターネット網構築を進める米OneWebは150キログラムの衛星900基を配備することを計画しているが、それを実現した暁には過去に例を見ないほどの量産規模になる。また、2014年にGoogleに買収された米Terra Bella(旧Skybox Imaging)は120キログラムの小型衛星を数十機配備して、地球規模の観測網を構築する計画を持っている。

 同様の計画を掲げる米Planetは“アジャイル開発”の手法を衛星開発に取り入れている。技術進化の著しい民生用電子部品の適用も進めることで、わずか数年の間に衛星のバージョンを10回アップデートする。個々の衛星の寿命が尽きる前に、アップデートされた新規衛星を打ち上げ、随時リプレイスしていくことが基本コンセプトだ。

●ベンチャーとの提携も加速

 こうしたベンチャー企業の取り組みに関して、実現には懐疑的な見方があるのも事実だ。他方で、各ベンチャー企業と冒頭に紹介したような大手衛星メーカーとの間に多数のアライアンスが生まれ始めていることは注視すべきトレンドであろう。

 OneWebは衛星製造に関して大手衛星メーカーの欧Airbusと提携している。現在、衛星10機をAirbusのフランス・トゥールーズの工場で製造しており、2019年までにフロリダの工場で700機以上の衛星を製造予定だ。同工場は将来的に他社や政府系機関の衛星製造も引き受けるという。

 また、2017年までに21機の衛星を配備することを計画しているTerra Bellaは、2号機までを自社開発したが、量産段階ではSpace System Loralに製造委託している。現在プロトタイプ1機と商用機18機の計19機の製造契約を結んでいる。

 デジタル化、ソフトウェア化、量産化、小型化など、“ものづくり”が大きく変わりつつある衛星産業。今後もさまざまなビジネス連携などが進むであろう同分野の動向を注視したい。

(石田真康)

最終更新:10/7(金) 10:38

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