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流刑に処す 島流し・・・ 実は 農村体験ツアー 石川・能登島で企画

日本農業新聞 10/7(金) 7:00配信

 右の者、能登島への島流しに処す――。江戸時代に流刑地だった石川県七尾市能登島の歴史を逆手に取った農村体験プログラムが都会人に人気だ。企画したのは、地元農家らでつくる能登島観光協会青年部。都会人を「流人」に設定し、田植えや稲刈りといった田舎暮らしを「刑」に見立て体験してもらう。今年からは、流人と島の農家が育てた酒造好適米を使った酒造りがスタート。新たな産物を生み出し、耕作放棄地の解消につなげたい考えだ。

稲刈り、温泉、グルメ

 企画名は「うれし! たのし! 島流し!~都会を忘れる強制田舎暮らし」。参加者は「流人」となって「囚人服」と呼ぶピンクのつなぎ服に着替え、農村体験という「刑」に服し、同協会青年部員らが「看守」となって見守る設定だ。

 本州と島を結ぶ能登島大橋を渡る「橋渡しの刑」からスタート。流人は全員、わら縄で手を縛り、橋の中間地点で「奉行人」が「石川に通い続けているのに能登に今まで来たことがなかった」など、それぞれ罪状を言い渡す。

 刑もさまざま。稲刈りは「稲でカイカイの刑」、温泉入浴は「あったかい塩水にまみれる刑」、昼食の海鮮丼は「白い米を酸っぱくして大量の魚を載せないと食べさせてもらえない刑」などがある。

 今年から能登島の酒プロジェクトも始動。能登町の数馬酒造が提案し、島の6農家が参加。流人の耕す「島流し農園」を含む7カ所(計70アール)で酒造好適米「五百万石」を作り日本酒を醸造、来年冬の完成を目指す。

文化交流の歴史再現を

 きっかけは2013年、能登空港を活用して交流人口を増やそうと、県が首都圏の会社員らが参加する市民大学「丸の内朝大学」の受講生に働き掛けたこと。島がかつて流刑地だったことに着目。政治犯が都市文化を伝え、島民は流人の世話をした歴史が残ることから「都会人と島民との関係性を築く、現代版島流しはどうか」と提案し、実現につながった。

魅力満喫 “常連”も

 14年から年4回の島流しツアーがスタート。参加費は食費や宿泊費、体験費など含めて1泊2日2万4000円。これまで11回開催し、延べ182人が参加、その半分が(89人)リピーターだ。

 なぜ、リピーターが多いのか。秘訣(ひけつ)は「また来たい」と思ってもらう仕掛けづくりにある。ツアーの質低下を防ぐため募集は1回20人程度に限り、告知もインターネットの交流サイトだけ。年4回全て参加すると「囚人服」がもらえるなどの特典も用意、募集を始めて2時間で定員に達したこともある。

 これまでに5回参加した「流人」の常連、東京都大田区の細谷祐美子さん(43)は「少人数で地元の人たちと接し、農作業に携われるのが醍醐味(だいごみ)。私の第二の地元」と言い切る。移住した“猛者”もいる。プロジェクト事務局の小山基さん(31)だ。「耕作放棄地を解消し、日本酒を島の新たな名物にしたい」と奔走する。

 同協会青年部長で農家の石坂淳さん(41)は「都会の人に、島の当たり前の景色が素晴らしいものだと気づかされる。本当の古里のように思ってくれる人が増えればうれしい」と期待する。(前田大介)

日本農業新聞

最終更新:10/7(金) 7:00

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