ここから本文です

【漢字トリビア】「神」の成り立ち物語

TOKYO FM+ 10/7(金) 13:19配信

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「神」。十月は、全国各地の神々が出雲へ集まる「神無月」です。今回は「神」に込められた物語を紹介します。

「神」という字はしめすへんに「申す」と書きます。
「申す」は稲妻の形を描いた象形文字。
光が左右に屈折する様子を縦横の線で貫いて「申す」という形になりました。
稲妻は、天に棲む神さまがその力を示すために発したもの。
そのため、かつてはこの「申す」という字が「かみ」そのものを意味していました。
しかしその後、「言う」「申し述べる」という意味で使われるようになります。
そこで神へのお供え物を置く机を意味する象形文字「示す」を添えて、本来の「神」を表すようになりました。
雷は人知を超えた力であり、それは神の存在を象徴するものだったのです。

大きな音をたて、空を引き裂く稲妻。
雨を集めてほとばしる滝、苔むす巨大な岩
里に降り立つりりしい雄鹿。
神さまの姿は、目で見ることはできないけれど、ありとあらゆるところに宿り、人々に気配を示してきました。
「かみ」ということばの由来をひもとくと、「隠れ身(かくれみ)」を略して「かみ」になったという説や、畏れ多く思って敬う様子を表す「畏み(かしこみ)」を略したという説があります。
人々のそばに降り立った神さまがお喜びになれば恵みがもたらされる。
でも、お怒りになれば猛威をふるって暮らしをおびやかす。
だからこそ、人々は慎み深さを忘れることなく、神に祈りを捧げたのです。

ではここで、もう一度「神」という字を感じてみてください。

出雲地方の十月は「神在月(かみありづき)」。
出雲の国に集まった神さまたちが、人々のご縁に関わる万事諸事を決めてくださいます。
でも、日本には八百万の神がいるのですから、今この瞬間にも姿を隠しつつ、私たちを見ているはずです。
「神を祭るには神在すが如くす」とは、孔子のことば。
大事なことは、そこに神さまがいらっしゃる、そう感じながら祀ること。
爽やかな秋風が吹く朝、高く澄み切った青空の午後、月の輝きに照らされる夜。
いつでもどこでも心を静め、謙虚な気持ちで手を合わせたそのとき、神さまはそっと、あなたのそばへ降りたちます。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『暮らしのしきたりと日本の神様』(新道学者:三橋健、平井かおる /著 双葉社)

(TOKYO FMの番組「感じて、漢字の世界」2016年10月1日放送より)

最終更新:10/7(金) 13:19

TOKYO FM+