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無人島でビジネスモデルを考案。エニタイムズ社長角田千佳さん「男前な生き方」の原点

ZUU online 10/8(土) 11:10配信

「人生における『投資』は、私が経験してきたこと全部です」。インターネットのご近所お手伝いコミュニティ「ANYTIMES」(エニタイムズ)創業者でCEOの角田千佳さんは、31歳の今、こう語ります。

経歴をたどると、新卒で大手証券会社に入社した後、IT企業へ転職、パラオの無人島で1週間で考えたビジネスモデルをもとに起業……。関わる業界が次々と変化していますが、節目節目に角田さんはどのような思いを抱いていたのでしょう。

このインタビューでは、起業から3年を経た角田さんの「キャリアと自己投資」に、前後編で迫ります。お話を伺っていると、過度な期待は持たず、次々と新しいチャレンジに取り組む「男前な生き方」が見えてきました。

■ビジネスモデルは、パラオの無人島で1週間で考案した

――角田さんは現在31歳ですよね。何歳で起業しているのですか。

28歳の誕生日です。起業することは決めていたのですが、1週間くらい無人島に行きまして、具体的なアイデアをまとめました。ビジネスモデルもそこで一気に練り上げました。

――無人島ですか! それは、研修かなにかで?

いえいえ、プライベートです。考えるならリラックスできる場所で、情報も遮断できればいいなと考えていたんです。ただ、「自分も行きたい」という友人が3人も現われ(笑)、一人旅ではなくてグループツアーになりました。

行き先はパラオでした。昼間はダイビングに出かける人あり、読書をする人ありと、バラバラに行動していて、夕食のときに私が起業アイデアを話して、意見をもらったりしましたね。

振り返ると、メンバーそれぞれがターニングポイントだった時期でした。そのメンバーとは今でも会って、そのたびにアドバイスをもらったりしているんですよ。

――無人島の夜のシーンが目に浮かびそうです。情報を遮断して、気心の知れた人たちとほどよい距離感を持ちながらビジネスモデルを練った、その効果はありましたか?

インターネットを使ったサービスを作ろうとしているのに、Wi-Fiもない環境を選んでいるわけで(笑)。「自分が作りたいサービス」をシンプルに考えることができました。

私たちを取り巻く課題を考えたとき、超高齢化が進み、地域の助け合いが必要とされているのに、人々のつながりは希薄化しています。一方で非正規雇用の課題もある。でもこの3つは、同時に解決できるのでは、と思ったんです。

便利屋さんのようなBtoCもいいのですが、オンラインを通じて個人と個人がつながるCtoCで、もっと多様な働きかたができるはずだと。それが、ご近所お手伝いコミュニティANYTIMESの原点です。

無人島から帰った次の日に当時のボスに起業する旨を報告して、1カ月間くらいで引き継ぎなどをさせていただけるようにしました。ボスはこの独立について応援してくれ、今もとても感謝しています。

■「ご近所お手伝いコミュニティ」は自分が欲しいサービス

――角田さんにぜひ伺いたかったのですが、高学歴エリートの人って「仕組み」「枠」といった、俯瞰(ふかん)するものの見方をしがちだと思います。角田さんは経歴から見ると、そっち側の人という気がするのですが、なぜ「ご近所」なのでしょう?

私は、子どもの頃に日本人で初めての国連難民高等弁務官、緒方(おがた)貞子さんの本を読んで憧れを持ち、国連の職員になりたいと思っていました。

「まちづくり」をキーワードとして、途上国の自立支援につながる仕事がしたいと思い、大学生、社会人になってからは途上国や新興国に足を運んでいます。

結果として国連のような組織に入るのでなく、起業という道を選ぶわけですが「現場が大事」という価値観や、「個人と個人をつなぐ」は、ビジネスを発想する段階からあったんです。

また、私は東京で生まれ育っていますが、「近所のだれもが顔見知り」というコミュニティがなくなり、隣の人の顔もわからない状態になっているのは実感しています。祖父母は一緒に住んでいたので、身近に高齢化の問題を感じていました。

――「ご近所お手伝いコミュニティ」は、角田さん自身が欲しいサービスだった?

そうですね。「こうあったらいいな」という内容です。私はイケアの家具が大好きだったのですが、組み立てるのに便利屋さんに依頼していました。外資系企業の友人には、フィリピン人の家政婦さんを依頼する人もいました。

でもこれって、ご近所の方にもお願いできること。困っていることをプラットフォームにあげておき、困っている人と手伝える人をマッチングできると便利だし、それが地域の人のつながりになればいいなと。

「外国語を話せるから教えたい」「空き時間で教えて、お小遣い稼ぎにもなるのはいいよね」「今までは発揮できなかったスキルがだれかの役に立つのはうれしいし、面白そう」という、身近な人の意見が背中を押してくれました。

■自己資金で起業。預金を食いつぶしながらの船出

――スタート時はどんな体制だったのですか?

自己資金で立ち上げていて、減っていく預金額を気にしながらのスタートでした。最初の1~2年は、資金を節約したいということもあって、私ひとり。クラウドソーシングなどで募集した、リモートワーカーで組織を作っていました。

海外のメンバーもいましたし、会ったことがない人も多い状態でした。経験もなかったので、それでできると思っていたんですね。資金的な事情を優先させていました。

ただこの状態だと、チームの横のつながりもなく、コミュニケーション不足が起きたり、プロダクトがうまくできなかったり。中身が混乱するということも起きてしまいました。

ANYTIMES は2013年秋にテスト版が、2014年夏に機能がそろった状態でリリースされましたが、そのころにやっと「最初のチームって大事なんだ」と悟りました。

2015年秋にチームを作りなおしました。正社員のみ、フルコミットにしたところ、スピードが倍速になったんです。

今思うと、経験や知識もない上、効率を最優先して、人やコミュニケーションについて全く考えられていなかったことがそもそも間違いだったんですよね。

■「クマ」のキャラクターがなぜか「犬」になって納品

――現在の体制に落ち着くまでは、スタッフのハンドリングも大変だったでしょうね。

そうですね。いきなり連絡が途絶えたその1カ月後、何事もなかったかのように「ハーイ、バカンスから帰ってきたよ!」と悪びれないリモートワーカーがいたり(苦笑)。

当時のキャラクターを使った動画制作をお願いしていたワーカーは、ラフではクマだったはずなのに、仕上がりはなぜか「犬」。しかも、まったく違うのに「同じ絵じゃないか」と言い張られたり、金額がいつの間にか変わっていたり……。

これも、こちらに経験があれば、やり取りの中で見極められたことかもしれません。

――もしかして、角田さんの周囲に、それまでそういう人がいなかった?

そうですね。起業する前はIT系企業、その前は金融系でしたが、会社員だったときは、BtoBの取引先はもちろん、社内でも、要求に対して100%、あるいは120%の仕事が返ってくるのが当たり前でした。ありがたい環境だった、と起業してから気が付きました。

対外的には、会社員のときは、気づかないところで会社が守っていてくれた部分もあったと思います。しかし起業するとすべてが見えることになります。スタートアップのような弱い立場だと、なおさらですね。

■固定観念をなくし、「プランB、C」を常に頭に置く

――経営者になって3年。経験を経て、会社員時代とは違う意識が生まれましたか?

そうですね。あくまでもいい意味で、「過度な期待をしない」ようになりました。新しい、正解のない業界だからというのもあるのですが、期待した成果に比べて100のうちの10、20という仕上がりということもありえます。でもそれは、自分のディレクションが足りない結果かもしれない。

落ち込んだり、悲しい気持ちになったりする理由は、期待したものを下回っているからですよね。最初からそういう期待をしていなければ、お互いハッピーでいられます。

――「~であるべき」、みたいなことがなくなってきた、ということでしょうか?

まず「これを言えば伝わるだろう」という固定観念をなくし、過度な期待はしない。そうすると、プランAがうまくいかなかったときのB、Cを常に頭の片隅に置いておけるし、スムーズに移行できます。起業してからいちばん変わったことですね。

――角田さんの起業の原点、そしてマネジメントに対する考え方が見えてきました。では、「投資」や「お金」についてはどのように考えているのでしょう? 後編に続きます。

【取材協力先】
角田 千佳(つのだ・ちか)さん
ご近所お手伝いコミュニティANYTIMES(エニタイムズ)を運営する、株式会社エニタイムズ 代表取締役・CEO。慶應義塾大学法学部政治学科卒、2008年野村證券株式会社に入社、2010年大手IT企業に転職。2013年起業。

阿部祐子(あべゆうこ)
出版社勤務(雑誌編集者)を経てフリーに。2009年CFP資格取得。社会、金融、ビジネス系記事、やさしい言葉を使ったファイナンス系の読み物などを手掛けています。

(提供:DAILY ANDS)

最終更新:10/8(土) 11:10

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