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もはや「格安スマホ」にあらず――ハイエンドのSIMフリースマホが増えている理由

ITmedia Mobile 10/8(土) 6:25配信

 「格安スマホ」という愛称も、そろそろ意味が通らくなるかもしれない。従来売れ筋だったミッドレンジモデルの枠を超えたSIMロックフリースマートフォンが、秋冬モデルとして続々と登場しているからだ。Huaweiは、楽天モバイルとタッグを組み、サブブランドのフラグシップ端末「honor 8」を発売。ASUSも「ZenFone 3」を日本市場に投入、「ZenFone 3 Deluxe」も10月下旬以降に発売される。

【FREETELの「かえホーダイ」】

 また、Lenovo傘下のMotorolaはフラグシップモデルの「Moto Z」や、ややスペックを落とした「Moto X Play」を用意。プラスワン・マーケティングのFREETELも、スペックにこだわった「KIWAMI 2」や「RAIJIN」を発売する。

 商品によって価格の違いはあるが、いずれもミッドレンジ上位からハイエンド、プレミアムに位置付けられるジャンルの製品で、価格も高いものでは10万円に近づいてくる。端末の本体価格だけを見ると、もはや「格安」とは呼べない状況だ。各社がこぞってこのようなSIMロックフリースマートフォンを投入する背景には、MVNOのユーザー層が徐々に変化していることがありそうだ。

●ユーザー層の幅が広がり、高機能端末へのニーズが高まる

 SAMURAIシリーズの最上位モデルであるKIWAMI 2を12月に発売する、プラスワン・マーケティングの増田薫社長は、SIMロックフリースマートフォンのニーズの移り変わりを次のように説明する。

 「(料金プランも)大容量化し、ハードウェアスペックを要求するアプリケーションが増えてきている。これはゲームも一緒。そうすると、そこに合ったものを提供するという動きが、他のメーカーも含めて加速しているのだと思う。日本のSIMフリーだけを見ると、2年前は1万円台の端末がワーッと出てきて、2万、3万だと売れませんという状況だった。それが1年前だと2万円台が出始め、今は3万円、4万円と上がっている。SIMフリーを買おうと思っている方が増えてきている中で、ニーズが多様化している」

 当初は一部のコアなユーザーが、トータルコストを節約するために、超低価格な端末とMVNOを組み合わせて使っていたが、一般層に拡大するに従い、大手キャリアと同じような使い方が求められてきた。そのニーズに応えるために、各社とも、徐々にスペックを上げた端末を投入しているというのが増田氏の分析だ。MVNOであれば通信料も安く、ハイエンド端末を買っても、トータルコストは大手キャリアより低く抑えることもできる。

 もちろん、ハイエンド端末も以前から市場になかったわけではないが、最近では、販売ランキングなどにも、こうしたニーズの変化が表れ始めている。調査会社BCNの運営するBCN RETAILによると、7月には、Huaweiのフラグシップモデル「P9」が7位にランクインしている。

 ランキングの上位はいわゆるミッドレンジモデルが多数を占めているが、P9も構成比は5.2%と決して小さな数字ではない。「P9 lite」や旧機種の「P8 lite」で数を稼ぎつつ、ハイエンドモデルのP9も堅実に売れているHuaweiは、SIMロックフリースマートフォン市場で首位に躍り出ている。

 honor 8の発表会に登壇したファーウェイ・ジャパンのデバイス・プレジデント、呉波(ゴハ)氏は、スマートフォン全体のシェアを挙げつつ、HuaweiがApple、ソニーモバイル、シャープに続き、4位につけていることを明かした。呉氏は「SIMフリースマートフォンがメインになっていくよう、頑張っていきたい」と意気込みを語ったが、その過程では、やはりラインアップの多様化が求められる。P9、honor 8と、ハイエンドモデルを立て続けに投入したHuaweiの狙いは、ここにありそうだ。

●MVNOの販売スタイルも多様化し、高くても買いやすい環境が整う

 ただし、端末の“素の価格”が見えやすいSIMロックフリー端末は、大手キャリアの“実質価格”と比べると、どうしても割高に見えやすい。大手キャリアで一般的な割賦販売が定着しておらず、イニシャルコストの負担が重くなりがちなことも、ユーザーがハイエンド端末に二の足を踏みやすい要因といえるだろう。

 一方で、こうした環境も、徐々に変わりつつある。割賦販売の提供を開始するMVNOが増えつつある上に、通信料と端末代がセットになった販売方法が採用されるケースも出てきた。例え、先に挙げたhonor 8をMVNOとして独占販売する楽天モバイルは、SIMロックフリースマートフォン、通信料に加え、「5分かけ放題オプション」をパッケージ化した、「コミコミプラン」を導入している。

 コミコミプランは、現状ではローエンドからミッドレンジモデルまでが対象で、P9やhonor 8のようなハイエンドモデルは含まれていないが、端末の種類は徐々に広がっており、9月下旬にはASUSの「ZenFone 2 Laser」や、シャープの「AQUOS SH-RM02」がラインアップに加わっている。楽天モバイルのチーフプロダクトオフィサー、黒住吉郎氏によると、コミコミプランは「大変ご好評をいただいている」というだけに、今後はハイエンドモデルにまで拡大される可能性もありそうだ。

 KIWAMI 2を発表したFREETELも、斬新な販売方法を開始した。それが「かえホーダイ」だ。かえホーダイとは、6カ月で機種変更が可能になるプログラムで、端末代と通信料、無料通話、保証サービスなどがセットで提供される。購入した端末を機種変更する場合は、プラスワン・マーケティングに利用中のものを返却しなければならないが、常に最新モデルを使い続けられるのは魅力的だ。

 回収した端末は、「メーカーなのでリファービッシュして、国内外の市場で販売する」(同)予定。いわゆるリース契約に近い形だが、同様のプログラムは、Appleも米国などで展開しており、ハイエンド端末を販売する方法として注目を集めている。

 かえホーダイ導入の狙いを、増田氏は「新しい機種が出たら、すぐに変えたいと思う。それは普通の消費者心理。そこに応えたいと思った」と語る。KIWAMI 2の場合、かえホーダイを使うと価格は3990円から。この最低価格には、1GBのデータ通信量や保証サービスも含まれている。より上位の料金プランを選ぶと、そのぶん料金は上がってしまうが、5GBのプランを選んでも違いは1000円ほど。仮に半年で機種変更したとしても3万円以下で済み、手軽にハイエンドモデルを試せる。

 同様にau系MVNOでは、UQ mobileが「端末購入アシスト」を導入しており、大手キャリアと同じように、割引を受けながら、端末を割賦で購入できる。ASUSのZenFone 3、ZenFone 3 Deluxeは、auのVoLTEやネットワークに対応し、デュアルスタンバイで2回線同時待受けが可能だが、このモデルも発売と同時に、UQ mobileに採用された。ZenFone 3は2年利用時の実質価格が2万4000円(ぴったりプラン)か1万2000円(たっぷりオプション)。よりハイエンドなZenFone 3 Deluxeでも、実質価格が3万6000円(ぴったりプラン)か2万4000円(たっぷりオプション)となり、単体で端末を購入するより、コストを抑えられる。

●メーカーの世界観を打ち出しやすく、差別化にもつながる

 ハイエンドモデルの比率が上がることは、SIMロックフリースマートフォンを開発、販売するメーカーにとっても、メリットがある。利幅を考えると高価なモデルの方が有利になる上に、コストを削りつめなくてもよくなるため、デザインや機能、スペックなどで、他社と差別化できる要素も増えてくる。メーカーの世界観を打ち出しやすいのも、ハイエンド端末だ。

 分かりやすいところでいえば、冒頭で挙げたMotorolaのMoto Z、Moto Z Playだと、背面に「Moto Mods」と呼ばれるアタッチメントを取りつけることができる。これによって、カメラやスピーカー、プロジェクターなど、さまざまな機能を拡張できるというのが、両機種の特徴だ。Moto Modsは、ハッセルブラッドやJBLといった、その道のメジャーブランドとコラボレーションした製品がそろえられており、本格的な撮影や音楽を楽しめる。

 Huaweiのhonor 8やP9は、背面にデュアルカメラを搭載。一眼レフカメラで撮影したときのように、背景を大きくボカしたり、深度を記録しておき、あとからピントを合わせる位置を調整したりといった操作が可能になる。honor 8は背面にガラス素材を使い、15層のコーティングを施したデザインも特徴。対するP9は、金属素材を使って、フラグシップモデルならではの重厚感を打ち出すなど、手に取ったときに分かる質感でも違いを打ち出せている。

 差別化の要素を、スペックに振るという選択肢もある。FREETELのKIWAMI 2は、MediaTek製の10コアCPUを搭載。メインメモリも4GBを搭載して、ディスプレイにはコントラストの高さで定評のある有機ELを採用した。KIWAMI 2と同時に発表された新シリーズの「RAIJIN」は、バッテリー容量を5000mAhまで増やし、長時間駆動を実現する。これに対し、ASUSのZenFone 3 Deluxeは、最上位モデルでQualcommの「Snapdragon 821」を採用。メモリも6GBと、大手キャリアのスマートフォンを上回るスペックを実現している。

 ここまで取り上げてきた、Huawei、ASUS、FREETEL、Motorola以外では、10月13日にZTEが発表会を開催する予定。音楽を示唆するティーザー画像も公開しており、9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFAで初お披露目となった「AXON 7 mini」が、日本に投入される可能性が高そうだ。

 もちろん、高機能モデルはそのぶん価格も高くなり、スマートフォンに必要最低限のスペックを求めるユーザーにとっては負担感も大きい。ボリュームゾーンという意味では、SIMロックフリースマートフォンの主戦場がミッドレンジであることに変わりはないだろう。ただ、ユーザー層の裾野が広がるにつれ、徐々にではあるがハイエンド端末の入り込む余地ができ始めているのも確かだ。選ぶ楽しみが増えるという意味で、ユーザーにとっては歓迎すべき状況になりつつあるのかもしれない。

最終更新:10/8(土) 6:25

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