ここから本文です

ノーベル自然科学3賞、基礎研究重視から見えてくる日本の課題

ニュースイッチ 10/8(土) 9:05配信

「出口戦略」偏重への警鐘か。引用論文数のシェア低下

 東京工業大学の大隅良典栄誉教授の生理学医学賞受賞で幕を開けた2016年のノーベル賞。自然科学3賞での日本のノーベル賞受賞者は22人(外国籍を含む)となり、日本の基礎科学力の底力を改めて証明した格好だ。物理学賞と化学賞も基礎研究分野での受賞となったのも今年の特徴。これは実用化を視野に入れる「出口戦略」を重視しつつある現在の科学技術の風潮に警鐘を鳴らしていると受け止めることもできる。

 ノーベル賞を受賞する業績は、医薬品など社会に成果が還元された後に受賞するケースが多いと考えられがちだ。だが今回は、自然科学3賞すべてが基礎的な研究成果に対して贈られる。

 国内では基礎研究を含む科学技術力の低下が危ぶまれる。文部科学省によれば、日本の科学論文数はここ10年でほぼ横ばいだが、インパクトが高く、被引用回数が多い論文数の世界シェアは、年々下がっている。

「若い人は知的好奇心を大切に」

 財政難の中、現在は国全体で事業化や実用化に結びつく応用研究を重視する潮流が強い。それに伴い、次世代の研究を担う若手研究者たちは、すぐに結果に結びつく流行の研究テーマを選びやすい。

 大隅栄誉教授は、「『役に立つ』とは、研究成果を起業化し、製品を生み出すことだけを指すわけではない。若い人には知的好奇心を大切にし、研究に取り組んでほしい」とエールを送る。

 研究成果の社会への還元が重要なのは当然だ。一方で、未来にイノベーションを起こすような技術が生まれるには、その種となる基礎研究が土台になる。応用と基礎のバランスをどのように取るべきなのか、ノーベル賞発表のこの時期だけでなく、国全体で継続的に議論する必要がある。

最終更新:10/8(土) 9:11

ニュースイッチ