ここから本文です

琉球ゴールデンキングスの新たなる挑戦「沖縄の宝」がBリーグの頂点を目指す日々。(1)

沖縄タイムス 10/8(土) 12:45配信

◆プロバスケットボール新時代の幕開け

 今季、琉球ゴールデンキングス(以下、琉球キングスまたはキングス)を含めた各チームが、未知の世界に一歩を踏み出したことは言うまでもない。

この記事の他の写真・図を見る

 これまでNBLとbjリーグに分かれていた日本の男子プロバスケットは、日本協会がリーグを統合できていないことを理由に2014年11月、国際バスケットボール連盟(FIBA)から加盟資格を停止され、国際試合禁止の厳しい処分を受けた。その後、川淵三郎を中心に協会の改革を進め、新リーグへの統合が決まったことで15年6月に処分は解除。16年9月22日、いよいよ「Bリーグ」が開幕したのだ。

 その記念すべきオープニングゲームを戦うチームとして選ばれたのは、2015―16シーズンのNBLレギュラーシーズンで1位となったアルバルク東京(旧トヨタ自動車アルバルク東京)と同シーズンのbjリーグの覇者・琉球キングスだった。

 沖縄で別件の取材が続いていたわたしは東京の開幕ゲームへ駆けつけることを泣く泣くあきらめて、テレビ観戦に専念した。

 結果は周知の通り、琉球キングスの2連敗(75―80、53―74)。

 旧NBLのレベルの高さをある程度は知っていたから、連敗自体には驚かなかった。長いシーズンは今始まったばかりなのだ。厳しい状況からのスタートも決してマイナスとは言えないだろうと考えたりもした。ただ、キングスの選手たちのムードが落ち込んでいなければよいが……と、「チームのメンタル」の現状が少々気にはなっていた。

 そこで、この連載第1回に合わせ、チームのメンタル面については、10月1、2日の滋賀レイクスターズ戦後、キャプテンの岸本隆一選手と、前キャプテンで球団創設からのメンバーでもあるベテラン金城茂之選手にインタビューした。

 まずはそのあたりからお伝えしよう。ちなみに試合はBリーグになって初のホーム戦で、2連勝(59―56、77―49)を飾った。

◆キャプテン岸本にのしかかった重圧

 岸本隆一は、ホーム初日10月1日の記者会見でも、東京での開幕ゲームには尋常ならざる緊張や責任を感じていたという話をしていた。それゆえに2試合目に集中力を欠いてしまっていたかもしれないと率直に認めていた。「2連敗というのは、あってはならないこと、ぼくにとっては緊急事態でした」との発言もあった。ではキャプテンとしてチームのムードを見たとき、東京の試合が終わってやはり落ち込んでいたと感じたのか、だとすれば、そこからうまく立て直すことができたのかを、2日の試合終了後に尋ねた。

 キャプテン岸本はこう答えた。

 「まず開幕試合が木曜日だったために、(第2節の土曜まで)間隔が空いた点はよかったと思います。気持ちを切り替える時間が持てて、シーズンが今週(10月1日)から始まるかのような準備を、チームとしてしっかりできたのがよかったと思います」

 チームや自分が落ち込んでしまった事実は否定しなかった。

 会見ではこんなふうに語ってもいた。

 「東京での第1戦は、今まで経験したことがないほど、(緊張で)吐きそうなぐらいに気分が悪くて、それは自分の弱さなのかな、とも思ったり、不思議な感情がありました。キングスにとって2連敗は許されないことなんで、2試合目はもっと危機感を持って臨まなきゃいけなかったはずなんですが、木曜日の開幕戦が終わった時点でどこかホッとしてしまっている自分がいたんだと今になって思います。開幕ゲームで責任を感じていながら、納得いくプレーもできず、しかし終わってホッとする面のほうが強かった、というのが正直なところです」

 そして、次節のホーム開幕ゲームを勝利で飾った感慨をこう付け加えることも忘れなかった。

 「ホームに帰ってきてフレッシュな気持ちで試合に臨むことができたと思います。ホームのキングス・ファンは、いつも相手にとっては脅威ですし、僕はいつも一緒に戦っている仲間という気持ちでいます。すごく感謝しています。今日のような僅差の苦しい試合でもホームのみんなの力で勝ち切ることを繰り返していきたいし、それからもっと点数がたくさん入るゲームをお見せしたいですね」

◆心・技・体、完全復活の金城茂之

 東京での開幕2連敗についての感想は、ベテラン金城茂之にも求めてみた。

 ――金城さんは、球団創設当初からのメンバーとして、山あり谷ありのいろんなチーム状態を知っているわけですが、現在のチームのムードをどう見ていますか。例えば岸本選手は、開幕2連敗をあってはならない「緊急事態」と受け止めていたようですが。

 「確かに東京の試合が終わって岸本は落ち込んでいたように見えましたが、キングスのいい時しか知らないからかな(笑)、という気もしましたよ」

 ――金城さんは、チーム状態の悪い時もかなり知っていて、ある種の「免疫」があるわけですね? 

 「はい、そうですね(笑)。しかも今の状態は、なんで負けたのか訳がわからないというようなことではなく、はっきりと課題の見える負け方をしているので、極端に落ち込む必要はないと思っています。もちろん同一チームに2連敗というのはぼくとしても久しぶりだし、残念なことではありますけど」

 ――東京のゲームで見えた課題とはなんでしょうか。

 「身長差、高さへの対応。もう一つは、ディフェンスでのミスを相手の得点につなげられてしまったというところです」

 ――旧NBLチームとの対戦に当たっては、サイズの差、高さに対する横の動きのスピードが当然必要になりますよね。

 「ええ、キングスはそこの部分で戦っていくしかないですからね」

 ――そういう意味では、東京での試合、ホームでの試合を通じて、金城さん自身はいい動きができているんじゃないですか?  今日(日曜)たまたま得点はなかったですが、昨日も走り込みながらパスを受けてシュートを決めるという、金城さんの持ち味を出す見せ場もありました。

 「あれが自分に求められている動きだと思いますし、得点を決める決めない以前に、得点につながる動きをするのがチームから求められている僕の役割だと思っています」

 ――高さのある相手との戦いで必要な点をもう少し教えてもらえますか? 

 「例えばアルバルク東京戦を振り返ってみると、日本人選手の身長は高いし、インサイドに外国人の大きい選手を揃えていて、そこにbjのチームとの大きな違いを感じました。ただ旧NBLのチームは、奇策とか用いず正攻法のゲームをする印象があります。ディフェンスでは、相手の大きな選手がゴール下で待っている感じです。そこへこちらが無策で飛び込んで行っては駄目ですから、スピードを生かしてどうやってシュートに持ち込むか、または引き付けておいていいパスを出せるか、といった攻略の仕方を工夫しないといけません。要は、相手のビッグマンがゴール下から離れなくちゃいけないように持っていかないといけません」

 ――今シーズンも金城さんやチームのスピード感あふれるプレーに期待します。金城さんは、今のチームのムードをどう捉えていますか。

 「今、各々がチームをよくしようという雰囲気も、話し合いの場もあるので、ムードは悪くないと思います。去年あれだけいいチームを作れたわけですが、ベースは同じでも、今年は今年で新しいチーム作りをしなくてはいけないので、いい意味で試行錯誤の段階だと思います。もっといいバスケをお見せしたいと思います」

 ベテラン金城茂之と久しぶりに話をするうちに、なんだかとてもうれしくなってきた。

 これほど自信に満ちた話し方をする明るい表情の金城と会えたのは、長い付き合いのなかでもそう何度もないような気がしたのである。この明るさについて、彼がプロバスケット選手として経験を積み重ねて得た貫録、とだけ説明するのは十分でないだろう。

 度重なる膝の故障・手術・リハビリを乗り越え、今は彼の持ち味のスピードを生かす「走り」が満足にできている。そのコンディションの良さが、表情にも表れている気がするのだ。

 昨シーズンの開幕のころの会話を思い出した。あのころの金城もちょっぴりうれしそうだった。

 「トレーナーやコンディショニングコーチのプランにしたがって調整しているので、膝はもう心配ないです。思いっきり走れます。スタッフのケアに助けられています」

 1年後の今、さらに膝の状態はよくなっているように見える。

 プレータイムを調べてみたら、ホームゲーム開幕の10月1日が26分34秒と、なんとチームで最も長く、翌2日も18分20秒で5番目に入っていた。

 金城茂之のいちファンとしては、今シーズンの楽しみが大いに増えて喜ばしい限りである。

◆「選手思いのヘッドコーチ」=伊佐スタイル

 さてこの連載第1回において、伊佐勉ヘッドコーチの記者会見での言葉も紹介しなくてはなるまい。

 その印象から先に記せば、「これまで以上に謙虚で、そして選手思いのムーさん(伊佐HCの愛称)であるのだなぁ」である。

 チームがbjリーグに参戦した2007年以来アシスタントコーチを務め、ヘッドコーチに就任して4季目の伊佐は、もともと高圧的な「上から目線」で選手を従わせるようなタイプではない。それぞれの選手の能力や長所をなんとか引き出したい、コートで持てる力を発揮させてやりたい、つまり元来、そう願う人である。

 土曜の会見ではこう述べていた。

 「会場の雰囲気が素晴らしくて、ここで負けるわけにはいかないな、と試合開始早々キーブルタッチャーしました(鳥肌が立ちました)けど、やはり実際にホームのお客さんの力を感じました。今日のゲームはアウェーだったら負けていたと思います。ホームのお客さんの力で勝たせてもらいました。これからもお客さんの心に届くプレーをして、クラブとファンと一緒になって戦うようなゲームをしていきたいと思います」

 選手思いの言葉は、特にこんなところに感じられた。

 それはゲームの手応えについての質問に対する答えだった。

 「喜多川(修平)のファウルトラブルでゲームプランが少し狂ったとき、うちには田代(直希)や津山(尚大)もいて、彼らだって勢いに乗ったら誰も止められないぐらいの爆発力を持っているんですが、僕が彼らを伸び伸びプレーさせてあげられなかった。自分がチームを引っ張っていくんだ、ぐらいのメンタルに早くしてあげたいな、と思います」

 なるほど。伊佐スタイルの選手の活かし方が成功すると、キングスはチームを引っ張っていける選手だらけ、という話になる。しかし、キングスの究極の目標は、じつはそういうことなのかもしれないな、と思う。

 それが「チームで戦う」ということ。

 誰か1人が爆発的に得点するのではなく、皆が満遍なく得点できるような、相手にとってはディフェンスの的を絞りにくい、チームオフェンスの威力を発揮することがキングスの当面の狙いだ。 

 ただ落とし穴もないわけではない。キングスの選手たちの間で、「誰がシュートを決めるのか」が明確にならず躊躇する時間が生じ、その隙にターンオーバーが起きるリスク。つまり強みがそのまま弁慶の泣き所となる恐れもある。

 ただ、高さを誇る相手に対して、平面の動きの多彩さとスピードで上回ることができて、「沖縄らしい、人もボールもよく動くチームバスケ」(伊佐HC)が機能し始めれば、日替わりでヒーローが誕生するような、手の付けられない集団になる可能性を秘めている。

 伊佐HCは、新加入ラモント・ハミルトンの活躍に関して水を向けられたときにも「今日は彼からのパスに助けられたところがありましたが、彼の力はもっとあります。本人にはもっとリングへアタックするように伝えてあります」と答えていた。

 これが伊佐スタイル。スキルのある選手をさらに伸ばすヘッドコーチ。

◆喜多川修平の輝き

 Bリーグ次節(10月7日、8日)も、キングスにとってはホームゲームである。琉球キングスvs.シーホース三河。

 10月2日の滋賀とのゲームで21得点をあげてMVPに輝いた喜多川修平の古巣であり、JBLからNBL時代を通じて常に全国優勝を争ってきたトップチームだ。しかも喜多川は、NBLアイシンシーホース時代のキャプテン経験者。彼は10月2日の試合後にこう語っていた。

 「ずっと一緒にやってきた仲間たちとの対戦だから楽しみなんですが、勝負事なので絶対に負けたくないという気持ちが強いです。リバウンドなどインサイドが強いチームで、タレントもそろっているので、アグレッシブなディフェンスをしてリバウンドをしっかり取ることが来週も大切になると思います。個人的にはゴールへアタックすることでチームに貢献したいと思います」

 本当に頼もしい選手である。

 頼もしい、で思い出したので、最後に感想をもうひと言。

 東京開幕ゲームやホーム2連戦を通じて実感したのは、キングスの顔とも呼ぶべきアンソニー・マクヘンリーの存在の大きさである。

 アルバルク東京相手でも、マクヘンリーのスピード感あふれるドライブインによる得点は圧巻だったし、ホームゲームでもゲームの流れを変えたいところで気を吐くプレーは印象的だった。

 喜多川修平も記者会見のなかで、マクヘンリーが仲間に対して積極的にアドバイスしていた事実も明かしてくれた。

 連載第1回ゆえに書きたいことは山ほどあるのだが、次週以降のお楽しみも残しておこう。(文中敬称略)

* * *

◇新連載にあたって◇

 これまで何度か琉球ゴールデンキングスに関する連載を試みましたが、いくつかの要因が重なり、なかなか完遂するところまで至りませんでした。楽しみにしてくださった読者の皆さんには申し訳なく思っています。

 この度、Bリーグ発足にともない、筆者の事情と掲載メディア・リーグ・球団の協力態勢がかみ合いましたので、今後はこの「キングス連載」を良い意味でルーティンワーク化して定期的にお届けできるかと存じます。

 わたしなりにオリジナルな着眼点をもって取材執筆を進めてまいりますので、あらためて、Bリーグの高みを目指すキングスの物語にお付き合いください。

渡瀬 夏彦

最終更新:10/8(土) 12:45

沖縄タイムス