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ニンテンドー3DSと「プチコン3号 SmileBASIC」を授業で活用―泉尾高校の公開授業をレポート

インサイド 10/9(日) 20:00配信

2020年度からの新学習指導要綱で、小学校での必修化が検討されるなど、にわかに社会的な注目を集め始めているプログラミング教育。もっとも教員不足をはじめ、実現にむけて課題が山積みなのは言うまでもありません。こうした中、ニンテンドー3DSでBASICのプログラムができる「プチコン3号 SmileBASIC」を活用し、独自の取り組みを進めているのが大阪府立泉尾高等学校です。

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大阪府立泉尾高等学校
泉尾高校ではもともと、シャープと任天堂が共同開発した授業支援システム「ニンテンドーDS教室」が導入されていました。その後、同校の大見真一教諭が中心となって「プチコン3号」開発・販売元のスマイルブームと提携し、同社から30台のニンテンドー3DSとソフトを無償貸与。2015年秋から3年生の選択科目「パソコン演習」の授業で、プログラミング教育の教材として活用されています
(参考記事:http://www.gamebusiness.jp/article/2015/08/18/11303.html)

こうした中、泉尾高校でニンテンドー3DSを物理の授業に使用する試みが10月4日に行われました。当日は同校の森井辰典教諭の指導のもと、15名の二年生の生徒が一人一台ずつニンテンドー3DSを使用し、「プチコン3号」で作成されたオシロスコープソフトを使用。生徒達は口々に声を発したり、音叉を鳴らしたりして、画面に表示される音波の形状や変化を観察しました。

授業風景
音叉の大小で音の波形の違いを解説
「プチコン3号」はニンテンドー3DSの立体視・タッチペン・マイク・ジャイロセンサーといった、さまざまな機能をBASICで制御することが可能です。この特徴を活かして、オシロスコープソフトを自作したのが東北文教大学人間科学部の眞壁豊准教授。もともとシンセサイザーに興味があったという眞壁氏は、約2週間でプロトタイプ、約2ヶ月で一通りの機能を実装させたといいます。

眞壁豊准教授
教育工学が専門だけあって、完成後にFacebookやTwitterで授業での使用を呼びかけた眞壁氏。すると、これを見た小林氏から大見教諭に連絡が届き、大見教諭は同僚の森井教諭に相談。これがきっかけとなって、授業での試験実施が決定しました。当日は公開授業となり、スマイルブーム代表の小林貴樹氏や眞壁氏らが視察に訪れました。

授業では、はじめに森井教諭が音の三要素「大きさ」「高さ」「音色」について解説。続いて生徒たちが複数の音叉を鳴らしたり、マイクに向かって口頭でしゃべるなどしたりして、波形がリアルタイムに変化する様子を観察しました。二台のニンテンドー3DSを利用して、各々の内蔵音源をわずかに異なる振動数で再生し、「うなり」と呼ばれる現象を観察する時間もありました。

ニンテンドー3DSで音の波形を観察
泉尾高校におけるニンテンドー3DSを用いた授業は、三年生の選択科目「パソコン演習」で行われており、二年生の生徒達にとっては、授業でニンテンドー3DSを触るのは初めての体験となります。「小さい頃に遊んだニンテンドーDSと違う」などと、電源スイッチの場所がわからない生徒も見られました。それでもゲーム機特有の使いやすさもあり、みな画面の波形を興味深く観察していました。

オシロスコープソフト(上画面)
オシロスコープソフト(下画面)
授業終了後、森井教諭に感想を聞くと「50点くらい」と辛めの自己採点でした。事前に生徒たちに操作に慣れさせておくだけで、ずいぶん授業が違ったはずだと言います。またオシロスコープソフトの感度が敏感で、扇風機をはじめ、周囲の雑音が問題になった点もありました。ニンテンドー3DSの画面が小さく、「うなり」の波形をうまく生徒たちに紹介しにくかった点もありました。

もっとも、こうした音波の観察は通常、本物のオシロスコープが使用されるため、たいてい学校に数台しかないといいます。そのためニンテンドー3DSのソフトとはいえ、一人一台の環境を作って、リアルタイムに波形の変化を観察させられたのは大きかったとのこと。また、波形の画面を制止させたり、周囲に画面を見せたりできたのも、ニンテンドー3DSならではの利点だったと語りました。

またソフトを制作した眞壁氏は「なにより、実際の授業で使ってもらえたことが有り難かった」と言います。その上で教材として使用する上で、いろいろと改良点が見えてきたとコメント。実際にニンテンドー3DSを授業で使用したことで、どの程度生徒たちの理解力に変化が生じたのか、アンケートを通して分析したいと語られました。

森井辰典教諭
ただし、ニンテンドー3DSを用いて音波の観察を行う授業はこれで終了。泉尾高校では現在も「ニンテンドーDS教室」をドリル形式で活用するなどの試みを行っていますが、今回のようにアプリを本格的に使用した授業を行うためには、圧倒的にアプリの数や種類が不足しています。森井教諭は「今回の授業で手応えを感じたので、もっと活用できる機会があれば」といいます。

大見真一教諭
これに対して大見教諭は「生徒たちにとっても、教員にとっても、今回の授業が一つのきっかけになればいい」と語りました。実は眞壁氏によると、オシロスコープソフトのプロトタイプに要したプログラムはニンテンドー3DSの一画面に収まるほどだったといいます。そのため、さっそくプログラミングの授業で使用したいと申し出があり、眞壁氏も快諾していました。

スマイルブーム 徳留和人氏
2018年に近隣の大正高校と統合が計画されている泉尾高校。公開授業でも大正高校の教員の姿が見られました。泉尾高校でニンテンドー3DSを用いたプログラミング授業を行っていることは、教育委員会や近隣の学校でも注目を集め始めているとのこと。スマイルブームの徳留和人氏も「多くの大人が授業を見学しにきたことで、生徒たちも何かを感じ取ってもらえたのでは」と語りました。

スマイルブーム 小林貴樹氏
代表の小林氏も「今時BASICなどと言われるかもしれないが、1980年代にBASICが圧倒的に普及したのは、それだけ優れた言語だったから。現役のゲームクリエイターもBASICで学んだ割合が多い。今後もWiiUでリリースが予定されている『プチコンBIG(仮)』のリリースをはじめとして、次世代のゲーム開発者教育に貢献していきたい」と抱負を語りました。

最終更新:10/9(日) 20:00

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