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税金逃れ批判「脱税と節税」ってどう違うの?

ZUU online 10/9(日) 11:10配信

アメリカが大統領選挙戦で沸き立つ中、トランプ氏の税金逃れ問題が今、注目を集めている。トランプ氏は1990年代に巨額の損失を申告し、結果、18年間にわたって不当に納税を逃れたと報じられている。有名人や大手企業、政治家の税金逃れはたびたびニュースとなるが、一般人はここで「はて?」と立ち止まるからもいるのではないだろうか。「何が脱税で、何が節税になるのか」と。

■節税は法律範囲内、脱税は違法行為

では、節税と脱税はどう違うのだろうか。一言で言うと、節税は税法の目的や内容にのっとって行う税金の節約行為、脱税は税法の目的及び内容に違反して税金を不当に安くしたり、逃れたりする行為である。

具体的な判定基準や対処方法は国ごとによって異なるが、日本ではよく、「納税義務者又は徴収納付義務者が、偽りその他不正の行為により税金を不当に免れ、又は還付を受ける行為」が脱税である、とされている(所得税法238条1項、法人税法159条1項、相続税法68条1項、消費税法64条1項等)。そして、脱税の手法は大きく分けて次の二つがある。

1.売上などの収入をわざと減らしたり、ゼロにしたりすること
2.仕入れや経費の金額を水増ししたりウソをついて計上したりすること

実際には、故意でなくても脱税とみなされる場合もある。知識が伴わないが故の計算ミスや税法の解釈間違いにより本来の税額より少なく納めた場合にも、脱税の疑いがもたれることがある。この場合、故意ではないことがある程度立証されるのならば、脱税ではなく単なる「申告漏れ」として扱われる。ただし、延滞税などのペナルティは免れられない。

一方、節税は、税法内でいくつかの所得や税額の計算方法が定められている場合に、より税金が安くなる方法を選択したり、特定のケースに該当する場合に申告や必要書類を添付すれば税金を安くすることができる行為を指す。車や備品などの償却方法で定額法ではなく定率法を選んだり、日本版401kに加入して税金を安くする行為が節税に当たる。

■脱税は犯罪、国税犯則取締法の存在

そしてもう一つ、節税と脱税で大きな違いがある。「脱税は犯罪」ということだ。つまり、刑事罰の対象となる。ただ、犯罪であるけれども、租税という特殊性から、刑事訴訟法ではなく、別途「国税犯則取締法」という法律により、担当の徴税職員に調査・処分の権限が与えられる。脱税と聞くと「マルサ(国税局の査察部)」を思い浮かべる方が多いと思うのだが、このマルサは、この国税犯則取締法により、地方裁判所または簡易裁判所の裁判官の許可を得て、納税者の臨検・捜索・差し押さえを行うことができる。また、このマルサの調査は強制調査だ。

そして、犯罪であるからには、刑法上でいう「構成要件」に該当している必要がある。ここでいう構成要件とは次のようなものだ。

1. 犯罪の主体は納税義務者
ここでいう納税義務者とは、単なる名義人ではなく、納付すべき税金の課税対象となる所得の帰属主体のことだ。たとえば、預金の名義が子どもであっても、その実質的な持ち主が親ならば親が犯罪の対象とみなされる。

2. 偽りその他不正の行為の認識
自分の所得や税金の計算方法などが偽りや不正であることを認識していることを指す。

3. 脱税の結果を認識していること
所得が存在するにも関わらず、これに対する正当な税額の一部や全部の納税を逃れる結果になることをわかっていることをいう。

また当然のことながら、罰則が適用される。所得税や法人税の場合には、5年以下の懲役や500万円以下の罰金、あるいはその併科とされる。

■「マルサ」のリアル

では、こういった場合の調査はどのようなものだろうか。通常の税務調査と異なり、マルサの調査は納税者にバレないよう、調査を行い、証拠を集めていく。そして脱税の疑いが濃厚となったところで、一気にガサ入れに入るのだ。

一例をあげよう。ある新興の風俗営業の会社が数年前、マルサの調査を突然受けた。理由は、「外注費その他の経費の過度な水増し」。マルサは突然踏み込んできた。社長はのらりくらりとかわしたが、マルサは既に反面調査(取引先への証拠集めのための税務調査)を実施済み、証拠を突きつけられてもう逃げ場がない。帳簿だけでなく、パソコンなどの関連資料はごっそりまるごと持っていかれた。

調査はそれだけでは終わらない。マルサの取り調べはその後も続く。平均するとおよそ半年だ。調書を取られ、刑事処分相当となると、刑事告発されることになる。通常、法人の税務調査は3~5年で1回、とされているが、マルサの脱税調査はこれが一切関係ない。内部告発などにより情報を掴んだら、たとえ新規設立の企業であっても調査に動く。

なお、脱税の案件になりやすい業種としては、不動産業、飲食業(クラブやバーなど)、建設業などの業種だ。いずれも、事業としてのサイクルが極めて短く、そのため、理念を掲げた長期的な経営維持ではなく、目先の利益を追って一発勝負に賭ける傾向にある業種である。「今ここで稼ぐしかない」と思うと、税金は「払う意味のないもの」という位置づけになってしまうのだろう。

税金は、モノの購入やサービスと違い、費用対効果の分かりにくい支払だ。実際に自分の支払っている税金がどう使われているのか、そして自分自身にどう還元されているのかが分かりにくい。だから税制改正のニュースで「増税」の二文字を目にすると誰もがため息をつくのだろう。

しかし、税金は日常の私たちの生活に活きている。税金がなければ、帝王切開で出産することはできないし、医療費も3倍から10倍に跳ね上がる。図書館もなくなるから日本人の識字率は一気にさがるだろうし、水道の水を安心して飲めなくなってしまうかもしれない。我々の「当たり前」の中にこそ、税金は使われているのだ。

年末調整や確定申告の時期はこれからだ。申告の際には魔がさすこともあるだろう。けれど、一人一人が納税に誠実でなくなった瞬間に、日本の平和は破たんする。脱税を含め、税金の話題に触れる際には、是非、税金が我々の身近に生きていることを思い浮かべてほしい。

鈴木 まゆ子 
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年に税理士登録。外国人の在日起業の支援が中心。現在、会計や税金、数字に関する話題についてのWeb上の記事執筆を中心に活動している。心理については、リトリーブサイコセラピーにて大鶴和江氏に師事。税金や金銭に絡む心理を研究している。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。ブログ「経済DV・母娘問題からの解放_セラピスト税理士のおカネのカラクリ」http://ameblo.jp/mayusuzu8/

最終更新:10/9(日) 11:10

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