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ヘッジファンド「資金引き揚げ」はリーマン再来の兆候?

ZUU online 10/9(日) 12:40配信

米ブルームバーグが9月29日、一部のヘッジファンドがリスク回避のためドイツ銀行に預けていた証券や現金などの引き上げを開始したと報道した。その報道を受け、米国でドイツ銀行のADRの株価は約7%安と急落した。リーマンショックの再来があり得るのだろうか。

■ドイツ銀のプライムブローカーを解除

ブルームバーグの報道は、銀行でいう取り付け騒ぎとは全く違う。ヘッジファンドは、通常、自分名義で運用はせず、証券会社や投資銀行をプライムブローカーに指定して口座開設を行ない、運用する。

プライムブローカーは、ヘッジファンドの資金調達から、トレーディング、口座管理、証券管理、貸株借株の手配などヘッジファンドに必要な業務を総括してサポートしていくサービスだ。プライムブローカーは1社の必要はない。たとえばゴールドマンとドイツをプライムブローカーにすることが出来る。したがって、ドイツ銀行をはずしても他の投資銀行とプライムブローカー契約があれば問題ない。

一部のヘッジファンドがドイツ銀から資金や証券を引き上げたというのは、ドイツ銀とのプライムブローカー契約を解除して証券や現金を引き上げたということにすぎない。

■リーマンショックも最初はヘッジファンドだった

そうは言っても、リスクに敏感なヘッジファンドが逃げたとなると、ほかのヘッジファンドが追随する可能性がある。

2008年9月、米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻し、金融史に残るリーマンショックが起こった。これも、ヘッジファンドが資金を引き揚げはじめたことで、リーマン・ブラザーズの資金繰りが厳しくなり、株価がたたき売られたことが最終通牒となったという見方が強い。今回のドイツ銀行のパターンもリーマンショックと似てきたと意識せざるを得ない。

リーマンショック後に、サブプライムローンなどのデリバティブ等の流動性が一気に低下する連鎖によりクローズや窮地に陥ったヘッジファンドがあったことことは記憶に新しい。

■ドイツ銀の株価はリーマンショック時を下回る

ドイツ銀行は2015年の決算で約67億ユーロ(約7800億円)の赤字を計上している。欧州経済危機、VWショックなどで、ドイツ最大の銀行として国のために多額の融資を行わざるを得なかったことも経営危機の原因だと言われている。

2015年の年次報告書によると、デリバティブに対するエクスポージャーは約41兆ユーロ(約4700兆円)の巨額の残高を抱えていることが判っている。これはデリバティブの想定元本ベースであり、数字が示すほど大きなものではないが、この取引の中には、財政破綻懸念の強いギリシャ、イタリアへの債権などが含まれており、不良債権化するリスクはあるだろう。

リーマンショック時に流動性の低いサブプライムローンなどを組み入れたデリバティブが、最終的にリーマンを破綻に追い込んだ。ドイツ銀行のデリバティブ残高には、他の投資銀行よりも流動性の低いハイブリッド債などが多く含まれているという。

そういった背景から、ドイツ銀行の株価は、9月30日安値で9.898ユーロと10ユーロ割れまで売り込まれた。年初来の下落率は56%に達し、リーマンショック時の安値をすでに割り込んでいる。ただ何かあったとしてもドイツ銀行は、大きすぎてつぶせないのと言う見方も根強い。

■追い打ちをかけた米司法省の罰金

9月16日に、米司法省は住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売をめぐり、ドイツ銀行に140億ドル(約1兆4400億円)の和解金(罰金)支払いを要求したと報じられた。当日のドイツ銀行の株価は約8%の下落となった。その下げが、9月29日の「資金引き揚げ」による下げにつながったのだ。

ただ、その翌9月30日、ロイターがドイツ銀行の罰金は大幅削減の54億ドル(約5500億円)で近く合意かと報じ、株価は30日を底に一旦反発に入った。

ヘッジファンド界のカリスマ、ジョージ・ソロス氏は、ドイツ当局への報告でドイツ銀行株を6月時点で約700万株をカラ売りしていたことが判明している。その後のポジションを買い戻しているのか、継続してショートなのかは今のところ判らない。これからもドイツ銀行をめぐるニュースと株価の動きは世界の金融市場を揺さぶる可能性が高そうだ。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

最終更新:10/9(日) 12:40

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