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子供たちが3秒返信ルールに耐えられなくなってきた

ニュースソクラ 10/9(日) 19:00配信

【いま大人が子供にできること(22)】いま起きていることを、真剣に聞いてみる

 1970年ごろに日本を、いや、世界を変えたのはウォークマンだったのだと思います。

 昔は音楽を聴きたければ自分で演奏するか演奏者を呼ぶか演奏する場所に行くかしかありませんでした。
 それがエジソン以降は、生身の人間に頼らなくても好きな時に好きな音楽を聞けるようになりました。
 やがて持ち運びできるラジオが生まれ、カセットテープが生まれ、当時の若者はラジオや重いラジカセを担いでどこにでもいきました。

 ラジカセは他の人にも聞こえます。
 というより、嫌がる大人たちに無理やり大きすぎる音を聞かせてわざとひんしゅくを買うことが当時の若者の目的の一つだった……のかもしれない。
 だとしたら、そのときまでは他人を意識していた、ということになります。

 イヤホンで音を遮断し、自分の部屋の空気を身にまとったまま、まるでそこが自分の部屋であるかのように、誰もいない空間であるかのようにふるまうことを可能にしたウォークマン。もう他人を意識したくなくない、と思った人たちがいた、ということなのでしょう。

 もちろんそれはウォークマンなしでもできます。
 でも自力でそこまでいくにはかなりの精神力が必要ですが、ウォークマンは、それをいとも簡単に誰でもできるようにしてしまった……。
 かつまたそういう方法があるんだ、ということを発見させてしまったのです。

 単に、音楽を聴く道具だったはずのウォークマンが、世界をシャットアウトするための道具にもなるなんて、発明した人も思わなかっただろうと思います。

 でもその時の若者は、はや60代に突入し、いまでは次の次の世代が生まれています。

 いまの若者は希薄な人間関係しか見たことがない可能性が高い……。
 でもそれだけではやはり寂しいから繋がりたい……。
 ただし傷つかずに繋がりたいのです。

 ポケベルやケータイは、友だちは欲しいけど面と向かっていう勇気はない、傷つきたくない、ワンクッション置きたい、という子どもたちに熱狂的に受け入れられました。
 便利な通信機というだけでなく、新しいコミュニケーションツールとして採用したのです。

 ポケベルは、すぐに返事は返せない道具でした。
 それがケータイになりメールが生まれ、スマホになり、になってくると三秒以内に返信しないといけない三秒ルールが始まりました。

 果てしないヤギさん郵便の始まりです。
 それが現在のSNSになり、「既読」マークがついてしまうとさらに加速が進みました。

 「なぜ読まないの?」から「なぜ読んでいるのに返信くれないの?」になり、「返信くれないってことは、無視された!? なんで!? ひどーい!!! 仕返ししてやる!」に簡単にエスカレートするようになったのです。
 なにせ、自意識過剰なお年頃のお子さまたちですから。

 いまや毎日が監視状態、ということになり、現実に隣の席にいるわけでもないのに近すぎて、ここ一、二年、子どもたちは悲鳴をあげるようになりました。

 今年、2016年はターニングポイントなのでは、という気がいまひしひしとしています。

 今年起きた10代のリンチ事件で、起こした子は、人、殺しちゃった……、と流しました。
 そうしたら流された子が警察に駆け込んだのです!

 いままでならそれはあり得ないこと、でしょう。
 子どもの間で起きたことは絶対に大人には言わない、が子どもたちの不文律です。
 言ってしまえばチクった……、ということになり、裏切り者になるからです。
 ですからティーンの事件は難しい。

 監禁されていることを何百人もが知っていても、それを大人に言おうとは思いつかないのです。
 子どもにとっては絶対の掟だったはずのものが、崩れた……。

 それがなにを意味するのかはまだわかりません。
 お互いに子どもだ、というだけで繋がっていた子どもたちの連帯感が薄れたのか、それは重大事件だから警察に言わなきゃいけない、という社会的な意識が芽生えたのか、その子だけが特別賢かったのか、そうでなかったのか……。

 そうして、つい三日前、電車のなかで「あたし、ケータイやめたっ!」という話をしている中学生の女子がいて、「嘘っ?!」と思いました。
 彼女は「スマホもSNSも一切やめた。さっぱりした。ホント、楽でいーよー」といって笑っていました。
 相手の女の子は、なんといって返せばいいのかわからない、というようなひきつった顔をして笑っていたので、これはまだブームになってるわけではないんだな、と思いましたが……。

 いつの時代も時代の先取りをする敏感な人たちはいます。

 それがこれからのトレンドになっていく……のでしょうか?

 正直いま、子どもたちがどこに向かおうとしているのか、まるっきりわかりません。
 大事なことは、一番よくわかっているのは当事者ですから、なにかあったときは、真剣に子どものいうことをきく、ことでしょう。

 これはいったいどういうことなのか、どういう過程を経て、そう思うようになったのか……。
 こちらが聞く気になっていれば、彼らは話してくれると思います。

■赤木 かん子(本の探偵)
1984年、子どもの本の探偵としてデビュー。子どもの本や文化の評論、紹介からはじまり、いまは学校図書館の改装からアクティブラーニングの教えかたにいたるまで、子どもたちに必要なことを補填する活動をしている。
高知市に「楽しく学校図書館を応援する会」として学校図書館モデルルームを展開中……。
著書多数。

最終更新:10/9(日) 19:00

ニュースソクラ