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人工知能は精神疾患の治療にどこまで貢献できるか

ニュースイッチ 10/9(日) 9:35配信

大塚デジタルヘルスが精神科向けデータ解析。高リスク患者を洗い出す

 大塚製薬と日本IBMの共同出資会社である大塚デジタルヘルス(東京都千代田区、清水泰喜社長)は、精神科医療向けのデータ解析サービス「メンタット」を発売した。人工知能の一種と言われるIBMのコグニティブ(認知)システム「ワトソン」を使い、電子カルテに自由記述された情報を解析する。リスクが高い患者を洗い出し、円滑な治療や支援につなげる効果が期待されている。

 「精神科においてはカルテのデータの90%以上がテキストデータ。日々、診療に追われている病院のスタッフにとって、全ての患者の情報を見るのは非現実的だった。埋もれていた宝である情報を、患者や、病院の運営に還元するのがメンタットの技術だ」。大塚デジタルヘルスの天野和京執行役員は、力を込める。

 メンタットを導入した病院は院内でカルテを匿名化し、IBMのクラウド(ネットワーク上にある記憶装置)へ保存・更新する。その内容がワトソンの自然言語処理技術で解析される。「例えば類似患者の検索ができる。(ある患者が退院した後の)再入院の確率も出せるし、治療難易度の判定結果なども病院へ非常に分かりやすく提示させて頂く」(天野執行役員)。

 言葉の検索自体はどの情報システムでもできるが、メンタットは「意味をきちんと認識する」(同)。例えば、患者が自分を病気だと認識しているか否かについてのカルテ上での記述は、「病識なし」「病識が欠如」「病識がないことはない」などが考えられる。

 このときメンタットは、ないことはない、という二重否定を理解し、「病識あり」と判定してデータ化する。医師によって表記が変わってしまっても対応可能な点は強みと言える。

 医療現場からも期待の声が出ている。メンタットの開発に携わった桶狭間病院藤田こころケアセンターの藤田潔理事長は「精神疾患は個別性が非常に高い。メンタットの活用で、より適切な医療が提供できる」と話す。

 桶狭間病院は従来、医師や看護師、作業療法士といった各医療職がいつ、何をするのかを定めた「クリニカルパス」を導入・運用してきた。いわば業務の標準化で、統合失調症患者の平均入院日数が70日から48日に減少などの成果をあげた。

 しかし、「患者には個性があるので、パターン化された医療だけではダメ」(藤田理事長)。患者の発症時期や経済基盤、支援する家族の有無などの情報はカルテに書かれている。

 統合失調症は若年時に発症し、治療が数十年にわたる事例も多い。その間主治医が変わることもありえる。「メンタットを使えば必要な情報が整理され、全職種で確認しあえる」(同)など、情報共有の意義も大きい。

 厚生労働省によると、国内における精神疾患の患者数は2011年に320万人で増加傾向にある。メンタットがこの歯止めに貢献できるか、注目が集まる。

最終更新:10/9(日) 9:35

ニュースイッチ

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