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「豊洲」を機に“公共浪費”退治を

ニュースソクラ 10/10(月) 12:00配信

役所には任せられない、民間事業者活用せよ

 「豊洲」で思い出した。「役所が余計な支出をすれば、役人の給与を削り穴埋めさせる。そうすれば役人はカネを使う代わりに頭を使うようになる」と故シリル・ノースコート・パーキンソン氏が言っていた。「役人の数は仕事量に関係なく増える」という「パーキンソンの法則」を“発見”した英国人だ。 

 東京都の内部調査では、豊洲市場・建物下の「盛り土」から「地下空間」への変更を、いつ、だれが決めたのか不明。土木部門と建築部門、技術職と事務職、上司と部下の意思疎通が不十分なのが原因とか。民間企業なら、とっくに倒産だ。“犯人”はパーキンソン氏が目の敵にした「お役所仕事」だった。

 東京五輪では、開催費用の大膨張を調査チームが指摘した。宮城県への会場変更案も浮かぶ「海の森水上競技場」(ボート・カヌー)は、整備費用が当初の69億円から491億円と7倍に膨らんだ。仮に、あなたが自宅の新築を建設会社に見積もらせたとする。最初に6900万円と言い、後から実は4億9100万円です、となれば「ふざんけんな」と一喝するだろう。

 ふざけたことが通るのが、お役所だ。世の中は長くデフレだったのに、公共工事費はなぜかくも膨らむのか。役所が手がける公共投資は往々にして“公共浪費”になりがちだ。何も東京都に限らない。

 記憶に新しいのは、東日本大震災の復興予算。臨時増税までして工面したのに、省庁がピラニアのように群がり復興と無関係の事業に流用された。反捕鯨団体「シー・シェパード」への対策費まであった。流用額は会計検査院の調べで1兆円超。公共浪費の典型だ。

 豊洲問題や五輪経費の見直しを、小池百合子都政の顔見せ興業に止めず、国をあげての「公共浪費退治」の契機にできないか。というのは、長期金利がゼロ近辺に下がったこの際、「国土強靭化」などの名目で公共投資を増やせ、という圧力が高まっている。

 失業率などが完全雇用を示すのに、第2次補正は建設国債を2.7兆円増発してまで公共事業を積み増す。金利がわずかでも、借金は借金。公共浪費で散財されてはたまらない。

 では、どうするか。パーキンソン案も魅力的だが実現は難しい。そこでコスト意識の薄い役所に代わり、コスト意識が高くリスクもとれる民間事業者に事業主体になってもらえばよい。実際、空港、有料道路、上下水道などの公共施設の運営を民間に任せる「コンセッション方式」が一部で実施、検討されている。

 この方式を思い切って拡充し、事業の立案、建設段階から民間に任せられるようにすべきだ。築地市場の移転も、最初から民間が関わっていたら、こうも悲惨なことには、ならなかったはずだ。

 最後に「豊洲」で私見を。盛り土問題を理由に、豊洲移転を白紙撤回せよ、と言うのは暴論だ。巨資を投じた新施設がほぼ完成している。専門家が安全性を確認すれば、いたずらに移転を引き延ばすべきではない。すでに民間業者には、ずいぶん迷惑をかけている。一方、地下空間化の経緯の究明や、責任の追及も移転と並行して進めればよい。さらなる公共浪費を防ぐためにも。それができるかで、小池知事の手腕が問われる。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

最終更新:10/10(月) 12:00

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