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【9月米雇用統計】強弱混じる結果。雇用者数は若干弱かったものの、労働参加率は改善、賃金も伸びが加速した。

ZUU online 10/11(火) 11:00配信

■結果の概要:雇用者数、失業率は予想対比で悪化。

10月7日、米国労働省(BLS)は9月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で15.6万人の増加(*1)(前月改定値:+16.7万人)となり、上方修正された前月改定値から低下、市場予想の+17.2万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った。

失業率は5.0%(前月:4.9%、市場予想:4.9%)とこちらは前月、市場予想を上回った。一方、労働参加率(*2)は62.9%(前月:62.8%)と前月から上昇した。

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(*1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
(*2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
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■結果の評価:雇用者数増減、失業率は小幅悪化も、年内利上げ方針への影響は限定的

9月の雇用増加数は、市場予想を下回り、雇用増加ペースの鈍化が続いていることを示したものの、7-9月の月間平均雇用増加数は19.2万人と4-6月(14.6万人)を上回り、1-3月(19.6万人)に近い水準に留まっている。労働市場が完全雇用に近づく中で20万人超の雇用増加ペースを維持するのは難しくなっており、10万人台半ばから後半で雇用の拡大が維持できれば労働市場は堅調と判断して良いだろう。

家計調査では失業率が予想に反して、前月から小幅に上昇したが、労働参加率の上昇にみられるように職探しを再開して労働市場に再参入する人の増加による部分が大きいため、心配する必要はないだろう。今後も失業率の改善が滞る可能性があるが、労働参加率の改善を伴っていれば労働需給のタイト化は持続していると判断できる。

一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.2%(前月:+0.1%、市場予想:+0.3%)と市場予想は下回ったものの、前月から伸びが加速した。さらに、前年同月比は+2.6%(前月:+2.4%、市場予想:+2.6%)と、こちらは前月を上回り、市場予想に一致する伸びとなるなど、賃金の伸び加速がみられた。

このようにみると、9月の結果は雇用者数や失業率と言った雇用統計のヘッドライン数値は労働市場の改善ペース鈍化を示したものの、労働参加率や賃金などで改善が持続しており、ヘッドラインが示すほど悪い結果でなく、強弱混じる結果であったと評価できる。

9月のFOMCでは、年内利上げの条件として更なる労働市場の改善と、新たなリスクが発生しないことが挙げられていた。9月の雇用統計は11月利上げを確信させるほど強い結果ではなかったものの、依然として年内利上げの条件を満たす結果であったとみられる。当研究所は引き続き12月の追加利上げを予想している。

■事業所調査の詳細:専門・ビジネスの伸びが加速、製造業は2ヵ月連続減少

事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+15.7万人(前月:+16.9万人)と前月を下回った。

サービス部門の中では、人材派遣業が前月比+2.3万人(前月比:▲0.1万人)と前月から増加に転じたことから、専門・ビジネスサービスが+6.7万人(前月:+3.1万人)と伸びが加速したほか、医療サービスも+3.3万人(前月:+2.2万人と伸びが加速した。一方、社会扶助関連が▲1.1万人(前月:+2.3万人)と減少に転じた。

財生産部門は、前月比+1.0万人(前月:▲2.5万人)と増加に転じた。製造業は▲1.3万人(前月:▲1.6万人)と2ヵ月連続で減少したものの、建設業が+2.3万人(前月:▲0.5万人)と増加に転じたほか、資源関連が+0.02万人(前月:▲0.3万人)と、僅かながら14年9月以来の増加に転じた。

政府部門は前月比▲1.1万人(前月:+2.3万人)と前月から減少に転じた。内訳をみると連邦政府が+0.4万人(前月:+0.2万人)と前月から伸びが加速した一方、州・地方政府が▲1.5万人(前月:+2.1万人)と前月から減少に転じた。

前月(8月)と前々月(7月)の雇用増(改定値)は、前月が+16.7万人(改定前:+15.1万人)と+1.6万人上方修正された一方、前々月は+25.2万人(改定前:+27.5万人)とこちらは▲2.3万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲0.7万人の下方修正となった。

なお、BLSの公表に先立って10月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+15.4万人(前月改定値:+17.5万人、市場予想:+16.5万人)となり、前月、市場予想を下回った。雇用統計とADP統計は5月から7月にかけて水準の大幅な乖離がみられていたが、8月、9月は比較的小幅な乖離に留まった。

9月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.79ドル(前月:25.73ドル)となり、前月から+6セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.3時間)と、こちらも前月から0.1時間増加した。その結果、週当たり賃金は887.18ドル(前月:882.54ドル)と前月から増加した。

■家計調査の詳細:就業者数の大幅増加を反映して労働参加率は改善

家計調査のうち、9月の労働力人口は前月対比で+44.4万人(前月:+17.6万人)と前月から大幅に伸びが加速した。内訳を見ると、失業者数が+9.0万人(前月: +7.9万人)となったほか、就業者数が+35.4万人(前月:+9.7万人)と前月から大幅な増加となった。一方、非労働力人口は▲20.7万人(前月:+5.8万人)と前月から大幅な減少に転じた。この結果、労働参加率は62.9%(前月:62.8%)と前月から上昇し、16年3月(63.0%)に次ぐ水準となった。

失業率は、5.0%に上昇したものの、小数第2位までとると9月は4.96%(前月:4.92%)となり、前月から0.04%の小幅な悪化であったことが分かる。前述のように、今後労働需給改善が持続する中でも、失業率の改善が滞る可能性があるが、FOMC参加者の16年の失業率予測や中期目標の水準である4.8%に近いことから、金融政策の意思決定への影響は限定的とみられる。

次に、9月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、197.4万人(前月:200.6万人)となり、前月対比では▲3.2万人(前月:▲1.4万人)と2ヵ月連続で減少した。この結果、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは24.9%(前月:26.1%)となったほか、平均失業期間も27.5週(前月:27.6週)と前月から改善した。

最後に、周辺労働力人口(184.4万人)(*3)や、経済的理由によるパートタイマー(589.4万人)も考慮した広義の失業率(U-6)(*4)をみると、9月は9.7%(前月:9.7%)と、前月に一致した。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は4.7%ポイント(前月:4.8%ポイント)と、前月から0.1%ポイント縮小した。

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(*3)周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
(*4)U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

最終更新:10/11(火) 11:00

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