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ペロブスカイト太陽電池の安定性が6倍向上、NIMS

EE Times Japan 10/11(火) 10:35配信

■「単結晶シリコン太陽電池に匹敵するものを」

 物質・材料研究機構(NIMS)エネルギー・環境材料研究拠点の韓礼元氏らの研究グループは2016年10月、ペロブスカイト太陽電池のホール輸送層に用いる新規添加剤を開発し、光照射下での安定性を6倍以上に向上させることに成功したと発表した。

【順セル構造ペロブスカイト太陽電池の模式図】

 ペロブスカイト太陽電池は、塗布法などの方法で安価に製造でき、研究レベルでは既に20%を超える効率が得られていることから注目を集める。有機無機ペロブスカイト材料を光吸収層とし、電子ホール輸送層を介して光生成キャリアを取り出す構造だ。

 いくつかのセル構造の中でも、酸化チタン、ペロブスカイト、ホール輸送層で構成された順セル構造のペロブスカイト太陽電池は、最も高い効率を示している。しかし、安定性が非常に低くなっており、光照射のない状態でも劣化が進み、200時間で約3割も変換効率が低下してしまう。そのため、安定性が低い原因の究明と、新規材料開発による長期安定性の向上が、実用化のために大きな課題となっていたという。

 同研究グループは今回、図1aに示すセル構造において、新規添加剤の開発によって、安定性の大幅な向上を実現した。一般的な順セル構造のペロブスカイト太陽電池において、ホール輸送層の導電性を増加させるためには、ピリジン系の添加剤ターシャリーブチルピリジン(TBP)が用いられている(図1b)。同研究グループは、従来使用されているTBPは安定でなく、ペロブスカイト層と化学反応が生じることを突き止めた。

 TBP溶液をペロブスカイト層に塗ると、ペロブスカイト膜が黄色くなる。X線回折により、黄色い物質は、ペロブスカイト結晶が分解してPbI2-(TBP)xという錯体が形成されたことによるもので、ペロブスカイト太陽電池の性能が低下する原因になっていたのだ(図2)。また、赤外フーリエ分光(FT-IR)による計測で、反応は主にピリジン環にある窒素原子(N)と、ペロブスカイト結晶の間で生じることも分かったとする。

 そこで、窒素原子の隣接する位置にアルキル基を導入し、新規ピリジン誘導体2-アミルピリジン(2-Py)を合成。窒素とペロブスカイト結晶との立体障害効果*)によって、この化学反応を抑制することが可能になったという(図2)。

*)立体障害効果:2つの反応原子を空間的に近づくのを防ぐこと。

 この結果、新規ピリジン誘導体を用いたペロブスカイト太陽電池は、暗所では1000時間を経ても性能の低下は生じなかった。連続光照射下でも、初期の変換効率から85%まで劣化する時間が、従来の添加剤の場合は25時間弱だったが、新規添加材で150時間まで伸ばすことができている。つまり、6倍以上の安定性の改善に成功した。

 今回の成果は、ペロブスカイト太陽電池の安定性を改善する新たなアプローチであり実用化を妨げる課題の解決につながることが期待される。同研究グループはリリース上で、「今後、安定性とともに効率向上にも取り組み、単結晶シリコン太陽電池に匹敵する高効率で、低コストのペロブスカイト太陽電池実現を目指す」と述べている。

最終更新:10/11(火) 10:35

EE Times Japan