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企業のデジタル化に欠かせない5つの要件

ITmedia エンタープライズ 10/11(火) 14:55配信

 「多くの企業が今、既存のITシステムの見直しとともに、クラウドやモバイル、ソーシャルといった新しい技術を採り入れて“デジタル化”に取り組み始めている。だが、企業全体のデジタル化を実現するためにはそれだけでは足りず、5つの要件からなる“デジタルプラットフォーム”を構築するとともに、それを推進する組織体制を整備していく必要がある」

【画像】これからのITシステムに求められる要件とは

 こう語るのは、米Gartnerのシニアバイスプレジデントでリサーチ部門の最高責任者を務めるピーター・ソンダーガード氏。ガートナージャパンが10月5日から3日間、都内ホテルで開催したカンファレンスイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2016」で講演を行うために来日し、メディア限定セッションを開いた際の発言である。

 実は、ソンダーガード氏は2年前の同イベントで、「企業は新しい技術を採り入れて“デジタルビジネス”を積極的に推進すべき」と訴えた経緯がある。同氏の影響力は大きく、それから日本でもデジタルビジネス、さらには「企業のデジタル化」の動きが本格化したというのが筆者の印象だ。

 そのソンダーガード氏が、企業のデジタル化に向けて「それだけでは足りない」と述べ、新たな見解を示した。そのキーワードとなるのが「デジタルプラットフォーム」である。デジタルプラットフォームといえば今や、ITベンダーが今こぞって関連する製品やサービスを整備したソリューションを提供し始めている。だが、同氏の主張は、そうしたソリューションを上手に採り入れながら、“企業が自ら最適なデジタルプラットフォームを構築すべき”ということである。

 では、同氏が新たな見解として示したデジタルプラットフォームに求められる5つの要件とはどのようなものか。キーワードを挙げると、「ITシステム」「カスタマーエクスペリエンス」「IoT(Internet of Things)」「インテリジェンス」「エコシステム」となる。図1がその関係性を示したもので、「それぞれが重なり合っているところに意味がある」(ソンダーガード氏)という。ちなみに図1では、IoTを「モノ」と表記している。また、インテリジェンスとは主にビッグデータアナリティクスや人工知能(AI)技術の活用を指している。

●デジタルプラットフォームに求められる5つの要件とは

 これらのキーワードが、デジタルプラットフォームに求められる要件とはどういうことか。1つずつ簡単に説明しておこう。

 まず1つ目の「ITシステム」は、既存のITシステムの合理化や近代化とともに、クラウドやモバイル、ソーシャルといった新しい技術への対応を進めていくことだ。ソンダーガード氏によると、「バックオフィス一辺倒からフロントオフィスへの注力」や「クラウドの有効活用」がポイントになるという。

 ただ、こうしたITシステムの取り組みは、「5つの要件の1つにすぎない」と同氏。あとの4つが新たな見解である。

 2つ目の「カスタマーエクスペリエンス」は、企業と顧客の接点になるところだが、「この分野は今後、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの新しい技術が適用されて大きな変革を遂げ、その評価が顧客満足に多大な影響を及ぼすようになる」(同氏)という。従って、企業はこの分野をデジタルプラットフォームの1つの要件として捉えて注力していく必要があるというわけだ。

 3つ目の「IoT」については、2つの側面があるという。IoTを構築・管理する「IoT統合プラットフォーム」と、IoTから得られるデータをリアルタイムに分析する「IoTアナリティクス」である。同氏によると、いずれもITベンダーが提供する製品やサービスを適用すればよいが、重要なのは自社のビジネスにどう生かすか、である。そのためには「IoTアナリティクスをどううまく使いこなすかが勝負どころになる」という。

 4つ目の「インテリジェンス」は、企業に関わる全てのデータを有効に活用することを指し、技術的な観点からいうと、主にビッグデータアナリティクスやAI技術の活用を意味している。同氏によると、ここでのポイントは「今後、アナリティクスにAI技術が採り入れられていく中で、それを活用できる人材を十分に確保できるかどうか」にあるという。

 そして5つ目の「エコシステム」では、顧客、パートナー、サプライヤーとのAPIによる緊密なつながりがポイントとなる。また、そうしたAPIの管理や、エコシステム用のアナリティクスを整備することも重要だとしている。もちろん、リアルなエコシステムとも連携するのだが、ガートナーではあえて「デジタルエコシステム」と呼んでいる。

 これら5つがデジタルプラットフォームに求められる要件だと説明したソンダーガード氏はさらに、「企業がこれらを推進していくためには、組織の在り方も見直す必要がある」と指摘。社内の各組織と連携したデジタル推進部門やそのリーダーとして最高デジタル責任者(CDO)を設置することなどを提案した。

 企業は自ら5つの要件からなるデジタルプラットフォームを構築すべきだというソンダーガード氏の話は、2年前に語った自らの考え方を進化させたものとして非常に興味深かった。とくに、カスタマーエクスペリエンスやエコシステムを個別の要件として捉えた新たな見解は、企業がデジタル化を進める際のグランドデザインを考える上で参考になるのではないだろうか。

最終更新:10/11(火) 14:55

ITmedia エンタープライズ