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ついに実現! 黒沢清監督が夢見た新作『ダゲレオタイプの女』が公開

ぴあ映画生活 10/12(水) 10:44配信

『岸辺の旅』『クリーピー 偽りの隣人』など精力的に新作を発表し続ける黒沢清監督が初めてフランスで撮影した新作『ダゲレオタイプの女』が公開になる。フランス人俳優とスタッフが起用され、全編がフランス語で撮影された本作は、黒沢監督の“新境地”と言えるが、同時に本作は監督が長年に渡って抱き続けてきた欲望がスクリーンに結実した真に“原点回帰”的な作品になったようだ。

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本作の企画は、長い時間と様々な事情を経て変化し続けた末に誕生した。「この話を考えたのは15年ほど前で、当時はJホラーが流行っていましたので、イギリスから『何か企画がないか?』と言われて、考えたのが元ネタなんです。その時は恋愛なんかどこにもないホラーだったんですが、その後に何本かホラーを撮りましたから、月日が流れてフランスで撮る際にはホラーではないものにしたいという想いがありました、そこで、一番最初に書いた物語の中で膨らませてもいいかと思ったのが若い男女の部分。最近僕はほとんどやっていない若い男女が危機的な状況に陥って逃げていく、若い男女が転がり落ちていく物語であれば、今やる意味があるかなぁと思ったんです。ところが、どういう風のふきまわしか、幽霊と人間が旅をする『岸辺の旅』を日本で撮ることになって、こちらを再びホラーの方向に戻していったんです。結果、ホラーの要素もありながら、若者同士のせっぱつまった恋愛のような要素もあるものになっていったんですね」

映画は、世界最古の写真撮影技法“ダゲレオタイプ”の写真家とその娘、若きアシスタントの愛と死のドラマが描かれるが、『岸辺の旅』や『回路』など黒沢作品で常に愛は“死”と共に描かれる。「愛することと死はほぼ近い場所にある。“あまりにも愛するあまり、もう死んでもいい”という感じは僕にでもわかります。それぐらい愛すると、人は死を乗り越えられるのかもしれない。愛と死は、僕の映画の中で絶対に切り離せないものになっているようです」

これまで、多くの黒沢作品は東京とその近郊で撮影されてきたが、監督はある時期まで「東京で映画を撮ることをやめたい、その痕跡を消したかった」という。「現実的には東京で撮るしかないので、東京には見えない場所を探して撮ることが多かったのですが、近年は、現在の東京を撮ることを運命だと思って受け入れるようになっていました」

しかし、どこでもない場所で、どこにも存在しない言語で“真に映画的なもの”だけで構成された映画を作り上げたいという夢は、黒沢監督の中で生き続けていた。「どこでもない場所というのは、現実にはありえないんですけど、そんな場所を夢見ながら物語を作っていて、その企画にお金を出してくれた国がたまたまフランスだったということです」その証拠に、本作には“フランス”を連想させる場所はほとんど登場しない。「頭の中では“フランスで撮影している”とわかってはいるんですが、実際の映像はここがフランスだとはわからないわけで、撮影しながら『これこそが映画の世界なんだ』という想いを密かに楽しみました。初心に戻るではないですけど、日本であれ、パリであれ、映画の普遍的な部分は信じていいんだと改めて感じられましたし、現代の東京によって隠されてしまっていた僕のむきだしの欲望や夢が、この映画で無意識に実現したのかもしれないです。昔からこういう映画が撮りたかったんですよ。ついに実現してしまいました」

『ダゲレオタイプの女』
10月15日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開

最終更新:10/12(水) 10:44

ぴあ映画生活