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PKに落ち込む必要なし 原口の際立つ存在感

ISM 10/12(水) 8:04配信

 原口元気が試合を重ねるごとに存在感を増してきている。2018年W杯アジア最終予選の分水嶺となり得たオーストラリア戦、原口は得点だけでなく、結果的に失点にも絡んでしまったことで「悔やまれるというか、申し訳ないというか」と唇を噛んだが、全体を通した貢献度を考えれば、もはや代表に不可欠な存在であることをさらに印象づけたと言っていいだろう。

 前半5分の先制点は、久々に1トップに入った本田と前もってコミュニケーションを取っていたことによる成果だった。「圭佑くんが一つタメて、そのタイミングで裏に出てくれという話をしていたので、本当に狙い通りのゴールだった」。パスを出すタイミングと、飛び出すタイミング。それがピタリと一致したから完璧に裏を取ることができ、あとはゴールに流し込むだけという形を作れた。

 もっとも、ゴールに繋がる一連の流れには今の原口の特徴もよく出ていた。攻撃のスタートは、イラク戦同様に自身のボール奪取から。長谷部誠にボールを預けると、敵陣に向かってスプリントを開始し、本田が反転しながらダイレクトでスペースにパスを出した時には全力疾走で裏に駆け抜けていった。

 守備からシームレスに攻撃に移り、走力を生かして攻め切るというのはヘルタ・ベルリンで普段から取り組んでいるもので、ブンデスリーガで磨きをかけている武器をうまく代表に還元できたプレーだった。

 試合全体を通してみても、原口はハリルホジッチ監督の求める守備の役割をしっかりとこなした。この日、原口に与えられた役割は相手の右サイドバック、ライアン・マッゴーワンをマークすることだったが、実際にほとんど自由は与えなかった。

 オーストラリアは戦術的にマッゴーワンにかなり高い位置を取らせたため、原口はまるでサイドバックのように自陣深いところでの守備対応を強いられたが、「何も問題なく守れた。サイドバックが思ったより高い位置を取ってきたので、僕が引く時間が多かったけど、変な話、対面のサイドバックより僕の方が速かったので、逆に引いてもいいかなくらいのイメージでやっていた」とまったく気にしていなかった。今の自分の走力であれば自陣深いところからでも攻め上がっていける、そういう自信の表れだった。

 後半6分に与えたPKについては反省するばかりだったが、倒してしまったトミ・ユリッチは本来、原口がマークする相手ではない。あの場面では原口がファールで倒すまでに、いくつかのミスが連続して起きていた。

 まず、長谷部誠がインサイドハーフのアーロン・ムーイに遅れてプレスに行き、後方にスペースを空けたこと。次にアンカーポジションを埋めていた山口蛍も左サイドに流れていたトップ下のトム・ロギッチのフリーにしていたこと。その状況でムーイのパスをフリーで受けたアンカーのミル・ジェディナクが長谷部の空けたスペースにパスを通し、山口がマークを見ていなかったロギッチが受けにいった。その瞬間、酒井高徳がロギッチに寄せにいったが、相手が一枚上手で、フリックでサイドに流すと、左サイドバックのブラッド・スミスが酒井の裏のスペースを完璧なタイミングで取ってマイナスのクロスを折り返した。

 その時、DFはエリア内に3枚残っていたが、ニアの吉田麻也は全力で戻りながらのプレーだったので、スミスの折り返しに対処するのは簡単ではなかった。ファーの森重真人と逆サイドの槙野智章はFWアポストロス・ジャンヌーのゴール前に飛び込む動きにマークを引っ張られていた。

 そういった状況により、もう一人のFWトミ・ユリッチがペナルティエリア付近でフリーになっていたが、その局面ではすでに戻れていた山口か、あるいは様子見のランニングをしていた香川真司が彼をカバーしなければいけなかった。原口はオーストラリアの一連の攻撃の中で、自陣ゴール前からかなり遠い位置にいた。最終局面で全力疾走でカバーに戻れていたことは、むしろ評価されるべきだ。むろん、欲を言えば、PKを与えないような守備対応をすべきだったが、原口が戻っていなければユリッチはフリーでビッグチャンスを迎えていた。

 原口が引き分けの結果に下を向く必要はない。終了間際には左サイドを突破して、あわや浅野拓磨の決勝点という決定的なクロスも送った。この日も存在感は際立っていた。しかし、本人に充実感などなく、表情は険しかった。

「何も変わっていない。もう一回ヘルタに帰って、もっとクオリティを上げるしかない。1点を取った後、一戦目も二戦目ももう一回仕事ができるシーンがあったのに、そこで一つしか仕事ができなかったのがもったいないというか、クオリティが足りないと思う。変な話、ヘルタに帰ったらもっと難しい試合があるので、なおさらそのクオリティをもっと求めていきたい」

 代表でポジションを掴み取ったという考えも依然として持っていない。だが、その強い危機感と飽くなき向上心、そして尽きぬ闘志があるからこそ、今の日本代表で最も頼もしく見えるのだ。(神谷 正明)

最終更新:10/12(水) 8:04

ISM

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