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景気ウォッチャー調査(16年9月)~台風や残暑の影響が下押しも、持ち直しの基調は変わらず

ZUU online 10/12(水) 11:40配信

■景気の現状判断DI:3ヵ月ぶりの悪化も、持ち直しの動きが継続

10月11日に内閣府から公表された16年9月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DIは44.8(前月差▲0.8ポイント)と3ヵ月ぶりの悪化となった。もっとも、参考系列として公表されている季節調整値は46.3(前月差0.3ポイント)と3ヵ月連続で改善しており、景況感は緩やかながらも持ち直していると判断される。

前回調査では、海外経済や金融市場への懸念、円高・株安によるマインド面の下押しが幾分和らいだほか、16年度当初予算の前倒し執行による公共事業の増加、雇用情勢の改善などが景況感の押し上げにつながった。

今回調査では、台風等による天候不順や残暑の影響が新たな下押し要因となったものの、これまでの下押し圧力が和らいでいることから、景況感の悪化は小幅にとどまった模様である。

小売関連では、オリンピック開催による客足の減少といった下押し要因が剥落したものの、台風が相次いで発生したことや残暑が続いたことが足を引っ張ったとみられる。企業動向関連では、円高への懸念が残るものの、受注が活発化していることが景況感の改善につながったようだ。

コメントをみると、英国のEU離脱関連や円高・株安関連のコメントは、英国のEU離脱が決定した6月をピークに減少しているほか、熊本地震関連は復旧対応の進展とともに急減するなど、マインドは緩やかに持ち直していると判断される(最終頁の図参照)。一方、円高などを受けた物価下落を理由にデフレを懸念する声は高まっている。

■台風や残暑の影響で家計は悪化、企業・雇用は改善が続く

現状判断DIの内訳をみると、企業動向関連(前月差1.0ポイント)、雇用関連(同0.1ポイント)は前月から改善する一方で、家計動向関連(同▲1.5ポイント)が2ヵ月連続の悪化となった。家計動向関連では、小売関連(前月差▲1.6ポイント)、飲食関連(同▲3.5ポイント)、サービス関連(同▲0.8ポイント)、住宅関連(同▲2.4ポイント)のいずれも悪化した。

コメントをみると、家計動向関連のうち小売関連では「天候不順から客足が鈍くなっており、全体的な売上も減少している」(南関東・コンビニ)や「8月の台風の影響により、青果物を中心に価格が高騰しており、販売量も客単価も前年を大きく下回っている」(北海道・スーパー)といったように、台風の影響による客足の減少や青果物の価格高騰を指摘するコメントが多く寄せられた。

このほか「暑さが続くなか、その影響が強く出て、衣料品を中心に秋物が動かない」(近畿・百貨店)とのコメントのように、残暑による秋物商材の不振も景況感の下押しに働いた模様である。

飲食関連でも、「8~9月は天候不順やリオオリンピックの影響で来客数の前年比が大きく悪化したが、9月に入っても底打ちの様子がみえてこない。」(近畿・一般レストラン)など、天候不順などによる客の出控えを指摘するコメントが多数見受けられた。

このように、小売関連、飲食関連ではオリンピック開催による客足の減少といった下押し要因が剥落したものの、台風や残暑の影響が加わり客足の戻りの鈍さを残す結果となった。

このほか、「宿泊者数は15%以上落ち込んでいる。インバウンドも夏前の勢いはなく、個人や小グループの来客数も減少し続けている」(東海・観光型ホテル)や「売上の2割を占めるインバウンド売上は、今月に入っても減少傾向に歯止めがかからず、前年比で約19%の減少となっている」(近畿・百貨店)といったように、引き続きインバウンドの減少が百貨店(小売関連)、ホテル(サービス関連)の下押し要因となっている。

住宅関連では、「低金利の状況で土地から購入する客の動きが多少良くなってきている」(中国・住宅販売会社)とのコメントのように、低金利を背景の住宅市場が好調を維持している状況が窺える一方で、「アパート建設の受注はこれまで好調であったが、貸家バブルということがいわれ始めた影響もあるのか、建設需要が下降気味である」(南関東・住宅販売会社)など賃貸住宅市場におけるバブルの可能性を示唆するコメントもみられた。

企業動向関連は、製造業(前月差2.1ポイント)、非製造業(同0.1ポイント)ともに前月から改善した。

コメントをみると、製造業では「円高傾向で、受注は若干縮小している」(東海・電気機械器具製造業)とのコメントのように円高への懸念が根強い様子が窺える一方で、「とにかく受注量が多い。断るのが、もったいないほどである」(九州・繊維工業)など受注が活発化していることを指摘するコメントも散見された。

非製造業では、「補正予算の執行による工事や台風による水害復旧工事が増加傾向にある」(北海道・その他サービス業)など公共工事の増加を指摘するコメントが目立つようになってきた。

雇用関連では、「製造業やサービス業で、正社員での求人募集が増加している」(東海・職業安定所)や「製造業全般に人手不足感がある」(四国・民間職業紹介機関)といったように、製造業での人手不足感の強まりを示唆するコメントが多く寄せられた。

■景気の先行き判断DI:3ヵ月連続の改善、先行きも持ち直しが続く

先行き判断DIは48.5(前月差1.1ポイント)と前月から改善し、参考系列として公表されている季節調整値も49.6(前月差0.7ポイント)と3ヵ月連続の改善となった。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連(前月差1.2ポイント)、企業動向関連(同1.1ポイント)、雇用関連(同0.2ポイント)のいずれも前月から改善した。

家計動向関連では、「秋の行楽シーズンであることや、年末にかけて年末商戦用の商材や販売量が増えてくるため、良くなる」(北関東・コンビニ)や「忘年会、クリスマスシーズンを迎え、当然ながら忙しくなる」(近畿・高級レストラン)などクリスマス商戦や年末商戦へ期待を寄せるコメントが目立った。

一方、「台風で農作物が品薄となるため、価格の高騰が見込まれる。原材料コストの上昇で飲食店の経営が圧迫されるほか、家庭でも同様の動きが予想される」(近畿・一般小売店)といったように、引き続き天候不順の影響を懸念する声も寄せられた。

このほか、「デフレ傾向があり一層強まっているように感じる。業界ではディスカウント店しか集客できていない」(近畿・スーパー)とのコメントのように、デフレに対する懸念は依然根強いことが窺える。

企業動向関連では、「中国経済がまだまだ悪化していくのではないかとの声があちこちから聞こえる。客からも良い情報が入ってこない」(九州・その他製造業)といったように、引き続き海外経済の動向に対する懸念がみられる一方で、「年末年始の旅行は前年と比較して予約が若干増加傾向にあるので期待が持てる」(中国・都市型ホテル)など年末年始の季節需要を指摘するコメントが散見された。

このほか、「低金利で借換需要はあるが、新規の顧客はなかなか見つからない。先行き不安の状況で、不動産のような大きなものは、もう少し様子を見ようという傾向がみられる」(四国・不動産業)など住宅投資を手控える動きがみられるとのコメントが多く寄せられ、住宅市場にやや頭打ち感も見られ始めている。

雇用関連では、「求人活動が活発な警備業や人材派遣業を含むサービス業や、コンビニなど新店舗開店が相次ぐ卸売小売業などを中心として、新規求人数の増加は今しばらく続く」(中国・職業安定所)など、先行きも人手不足感の強まりが景況感を下支えする模様である。

9月調査では、台風等による天候不順の影響が下押しとなったものの、前述のとおりマインド面の下押しが和らいでいることから、景況感は緩やかな持ち直しが続いている。もっとも、年末にかけ米国の利上げや大統領選挙などを巡って金融市場が再び混乱するリスクもあり、不透明な金融市場の動向が引続き景況感の重石となろう。このため、景況感は振れを伴いながら、緩やかに持ち直すことが予想される。

岡圭佑(おか けいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部

最終更新:10/12(水) 11:40

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