ここから本文です

医薬品や血液をドローンで空輸 アフリカ各地でプロジェクトが進行

ITmedia ニュース 10/12(水) 9:18配信

[AP通信] 最初はこのドローンについて説明が必要だった。不安を抱いた村民の間では、自分たちの頭上を飛ぶことになる採血用の見慣れぬ物体に関するうわさが飛び交った。魔術だと恐れる人もいた。

 だが真実はもっと現実的だった。国際連合(UN)がアフリカのマラウイの僻地において、小型の無人航空機(ドローン)を使い、HIV検査の血液サンプルを陸路よりも効率的に輸送できないかを試すプロジェクトを計画していたのだ。

 いったん理解が広がり、作業が始まると、ドローンの飛行音が聞こえるたびに、近隣の学校から若い学生や教師たちが歓声を上げて飛び出してくるようになった。「とてもワクワクする体験だった」とユニセフ(国連児童基金)職員のジュディス・シャーマン氏は語る。

 今やドローンは世界中に急速に普及し、その用途は軍用から宅配ピザまで多岐にわたる。そうした中、世界で最も深刻な複数の人道危機に直面しているとされるアフリカ大陸は、ドローン技術がさまざまな問題解決に進展をもたらすことに期待を寄せている。

 世界で2番目に大きい大陸であるアフリカ大陸は、砂漠と熱帯雨林が存在し、雨季と乾季がはっきりと分かれる厳しい気象環境の下、世界銀行が「今日の開発地域の中で最悪のレベル」と評するほどのインフラ整備の後れに苦しんでいる。地方の主要路は未舗装で崩れやすく、多くの国々では電気の普及率が下がっている。空を利用してこうした問題を解消するというのは、非常に魅力的な目標だ。現にアフリカでは、固定電話のインフラ整備が遅れ、携帯電話のほうが先に普及したという地域が少なくない。

 アフリカでの人道支援にドローンを活用しようと取り組む人たちは、「ドローンは即効薬ではない」と警告する。だがアフリカでは目下、ドローンのさまざまな活用法を探るべく新しいプロジェクトがいくつか進行中だ。

 最も注目度の高い取り組みが今週ルワンダでスタートする。ドローンのスタートアップである米Ziplineがルワンダ政府の協力の下、遠隔地の病院や診療所に輸血用血液や医薬品を届けるためのドローンネットワークを立ち上げる。ルワンダはアフリカの最小国の1つだが、それでも物資の陸上輸送には数週間かかることがある。ドローンを使えば、輸送は数時間ですむ。

 ドローンは速度やサイズに制限があるため、援助団体や企業は小型でデリケートな緊急医療物資の輸送方法の改善に集中的に取り組んでいる。2016年5月には、ZiplineとGAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)の提携も発表された。

 アフリカ大陸東岸沖のマダガスカルでは、ドローンメーカーの米Vayuが米国際開発局(USAID)の支援を受け、僻地の村から血液サンプルや便サンプルを輸送するためのドローンの試験飛行を実施している。

 「こうしたプロジェクトをアフリカで実施するからこそのメリットがある」。そう指摘するのは、ドローンをサプライチェーンで効果的に活用する方法について南アフリカで研究中のシド・ルパーニ氏だ。同氏の雇用主であるサプライチェーンデザイン大手の米Llamasoftは、タンザニアでZiplineのパイロットプロジェクトを実施している。

 「アフリカの上空は混雑していない。対処すべき都市部も多くない」とルパーニ氏は語る。既にドローンは、地図作製や密猟対策を視覚的に支援する方法として、アフリカ大陸の一部の地域で活用されている。

 ただしドローンにはまだ複数の課題が残る。例えば、飛行範囲が限られたり、頻繁な再充電を必要としたりといった問題がある。墜落すれば、遠隔地からの回収が難しい場合もある。ドローンが国の主権を侵害する可能性を警戒する政府や、規制が整備されていないことを懸念する政府も存在する。

 救済活動の関係者でさえも懐疑的だ。Humanitarian UAV Networkなどの人道援助団体が61カ国の援助隊員を対象に実施した調査結果が2016年9月に発表されたが、この調査では半数以上の回答者がドローンを肯定的にとらえる一方で、否定的にとらえる回答者も22%いた。

 最大の懸念の1つは、地上の人たちが、自分たちが攻撃を受けているのではと誤解することだ。

 「好むと好まざるとにかかわらず、こうした無人航空機は武装ドローンと見分けがつかない」。コンゴで活動する援助隊員の1人は調査でそう回答し、国連の平和維持活動でドローンが配備されている点に言及している。

 コストも課題の1つだ。米ドローンメーカーMatternetの支援を受け、国連が今年マラウイで実施した試験飛行では、オートバイを使った陸路輸送のほうが安価であることが分かったという。「オートバイは他の積荷も運ぶこともできるからだ」とユニセフのマラウイ事務所でHIV/AIDS対策の責任者を務めるシャーマン氏は説明する。

 だが同氏はそれでも、ドローンを「これまで考えたこともないような大きな可能性を秘めた革新的な技術」と考えている。

 援助団体は新たなブレイクスルーを摸索中だ。オランダのWings for Aidは目下、ドローンの最大積載量を増やし、走行距離を伸ばす取り組みを進めている。同団体で事業開発および技術革新担当ディレクターを務めるウェズリー・クレフト氏によれば、最大100キログラムの荷物を半径500キロメートル内の複数の地点に運べることを目指しているという。

 ニューヨーク州バード大学のドローン研究センターで共同ディレクターを務めるアーサー・ホランド・マイケル氏は、次のように語る。「究極の目標は、自力で仕事をこなす自律型ドローンのネットワークを構築し、人間が一度に多数の輸送を監視できるようにすることだ」

 アフリカのように挑戦しがいのある農村地帯において、こうしたドローンに重要な輸送を任せられるようになるまでには、まだ数年はかかるかもしれない。「だがそのための技術はもう完成している」とマイケル氏は語る。
(日本語翻訳 ITmedia ニュース)
(C) AP通信

最終更新:10/12(水) 9:18

ITmedia ニュース