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心配いらんから…最後の百円玉、公衆電話でついたうそ 「泣ける猫マンガ」が描く貧困

withnews 10/13(木) 7:00配信

 「心配いらんから それじゃ」。夜の電話ボックスでうつむきながら受話器を置く男性。深刻な「ワーキングプア」について、マンガ家の深谷かほるさんが公衆電話を舞台に描きました。

【漫画】「最後の百円玉」はこちら withnews描き下ろしの作品も

手持ちのお金 最後の100円でかけた電話

 見かけることの少なくなった公衆電話ボックス。

 ひとりのサラリーマンが、ふるさとの母に電話をかけています。
 「紹介したい人?そんなんまだだよ うんうん頑張る 心配いらんから それじゃ」

 こんなに働き疲れているのに、スマホも持っていない。
 それでも、母に心配かけさせまいと、最後の100円を使って電話をかけ、うそをつきます。

人の切実な思い 聞いてきた公衆電話

 深谷かほるさんは、働いても働いても、困窮してしまう若者を創作で描きました。

 この「ワーキングプア」の問題は、大きく広がっています。

 2016年9月11日付の朝日新聞のコラム「天声人語」は、100年前と変わらない貧困問題を取り上げています。

▼ 「驚くべきは現時の文明国における多数人の貧乏である」。経済学者の河上肇は、そんな書き出しから『貧乏物語』を始めている。大阪朝日新聞での連載開始から、あすでちょうど100年になる▼主に英国の統計をもとに、貧乏が世界の大問題であることを、大正時代の読者に示した。もしかしたらこれは、「いま」の話ではないか。読んでいて、そんな気がしてくるところは少なくない▼河上は述べる。毎日規則正しく働いているのに、ただ賃金が少ないために生活に必要なものが手に入らない。きわめてわずかな人々の手に、巨万の富が集中されつつある――。働いても生活が苦しい「ワーキングプア」の言葉が生まれる現代社会とだぶって見える。「上位のわずかな層に所得や資産が偏っている」との指摘も、近年強まっている――(朝日新聞 2016年9月11日天声人語)

 それでも若者は、公衆電話でふるさとの母親にうそをつきます。

 深谷さんは「人が長く使ってきた古いものには、魂が宿るような気がします。特に公衆電話は、人の切実な思いを、並の人間よりたくさん聞いてきただろうな」と話します。

 「公衆電話で、人は、本当のことを言ったり嘘を言ったりしながら生きているな、と。黙って人の話を聞き、お呼びがかからなくなっても〝いつでもここにいる〟というたたずまいに、しみじみするのです」

【マンガ「夜廻り猫」】
 猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
 泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
 そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
 遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
 ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

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深谷かほる(ふかや・かほる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。昨年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始め、6月30日に単行本を発売。自身も愛猫家で、黒猫のマリとともに暮らす。

最終更新:10/13(木) 7:00

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