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大内宿で映画「一茶」ロケ 観光復興全国へ発信

福島民報 10/13(木) 11:04配信

 江戸時代を代表する俳人、小林一茶の半生を描いた映画「一茶」に福島県下郷町の大内宿が登場する。一茶の故郷の宿場町・柏原宿(現長野県信濃町柏原)の設定で、来年6月に全国公開される。映画の世界観や時代の空気を伝える重要な舞台となり、地元の関係者は「東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの観光復興につながる」と期待を寄せている。
 大内宿は江戸時代の宿場町を象徴する、かやぶき屋根の美しい家並みが国重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。映画「一茶」の関係者が歴史的な景観に着目し、ロケ地に選んだ。
 一茶の生家があった柏原宿は現在、国道が通り、時代劇を撮影するのに適さなかった。大内宿では宿場全体を一茶の古里に設定。宿場内でそばなどを提供する山形屋を一茶の生家の外観に使った。
 映画は9月中旬の大内宿ロケでクランクインした。一茶役を務める主演のリリー・フランキーさんが宿場内を歩く場面や本陣の中で句会を開くシーンを撮影した。通りを行き交う行商人や町人は地元の住民が演じた。四季折々の大内宿の風景も映画に映し出される予定だ。
 かつて年間約120万人を数えた大内宿の観光客数は現在、東京電力福島第一原発事故に伴う風評などの影響で以前の7割程度にとどまる。大内宿観光協会長で山形屋社長の浅沼弘志さん(62)は「全国公開映画のロケ地となり、観光客回復の呼び水になる」と歓迎する。
 前大内区長で土産物などを販売する南仙院本家の長沼定由さん(64)も「かやぶき屋根を守り続けることは楽ではないが、映画を通じて日本の伝統文化を知ってもらえればうれしい」と話している。

■来年6月公開 波乱の晩年描く

 映画の原作は藤沢周平さんの伝記小説で、江戸で俳諧(はいかい=俳句の源流)の権威を目指していた一茶が夢に終止符を打ち、「ついのすみか」を得ようと、50歳を過ぎて帰郷した半生に焦点を当てる。義理の母と弟を相手にした相続争い、3人の若い妻との生活、相次ぐ子どもの死…。波乱の晩年を送りながらも幸せを求め、句を作り続けた生きざまを濃密に描く。
 主演のリリー・フランキーさんは「そして父になる」などの話題作で存在感を放ち続けている。義母のさつを中村玉緒さん、義弟の仙六を伊藤淳史さん、最初の妻を佐々木希さんが演じる。俳諧仲間役の内野聖陽さんをはじめ、石橋蓮司さん、奥田瑛二さんら豪華俳優陣が脇を固める。
 多数のテレビドラマを手掛けた吉村芳之さんが監督を務め、吉田拓郎さんが主題歌を提供する。
 リリーさんは「一茶は無邪気で裏表がない、いとおしい存在。(妻や子どもとの死別など)次々と不幸に遭いながらも生き続けた。たくましさがあるからこそ、新たな幸せに出会えた」と話す。
 吉村監督は「素朴な作風と人生にギャップがあり、人間くさい人だと興味を持った」と製作の意図を明かす。

■民報社が出資

 福島民報社は映画製作に出資し、製作委員会に加わった。KADOKAWAから全国配給される。

■映画の題字担当金子兜太さん 「心の師匠」

 今回の映画の題字は現代俳句の巨匠で小林一茶に関する著作が多い金子兜太さん(元県文学賞俳句部門審査委員)が担当した。一茶の代表句「やせ蛙(がえる) まけるな一茶 これにあり」などの作風から素朴な人柄のイメージが強いが、実像は人間くささにあふれる。金子さんに一茶への思いを聞いた。

 -題字にどのような思いを込めたか。
 「気取らず、自然体で書いた。人肌のにおいが出ればいいと思った」

 -金子さんにとっての一茶とは。
 「一茶が自らを指した『荒凡夫(あらぼんぷ)』とは自由で平凡な人間でありたい、という意味だと考える。思うがままに生きた一茶は私の人生観そのもので、理想の生き方。一番好きな俳人であり、心の師匠だ」

 -映画公開を機に県内で俳句や一茶への関心が高まると期待する声もある。
 「現代の人々に一茶の魅力を知ってもらう絶好の機会。映画を楽しみにしたい」

福島民報社

最終更新:10/13(木) 11:18

福島民報