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イスに座るだけ、心拍・呼吸をピタリと測定

EE Times Japan 10/13(木) 12:01配信

■「接触型」と「非接触型」

 ヒトを対象としたセンサーは、「接触型」と「非接触型」に大きく分かれる。接触型はさまざまな情報を取得しやすいものの、欠点もある。わざわざ身に付ける手間だ。

 非接触型には逆の特長がある。身に付ける必要がなく、ほぼ無意識に利用できるものの、得られる情報が少ない。例えば人感センサーは検知用として広く普及しているものの、ドアの開閉や照明のオンオフなど限られた用途にしか使えない。

 より高度な情報を非接触型センサーで得ることはできないだろうか。機器を意識せず、日常生活を送るだけで健康状態のデータを取得できれば、応用が広がる。

厚さ20cmのマットレスの下でも取得可能

 2016年10月4日から同7日まで東京ビッグサイトで開催された「2016 東京国際包装展」では、凸版印刷が「シート型非接触振動センサー」のデモを展示。非接触センサーの可能性を見せた(図1)。

 木製のイスに座るだけで1分間当たり生体データを取得できるデモだ。「脈拍数と呼吸数をリアルタイムに取得している。これらの情報をソフトウェアで統合、心理ストレス度を計算・表示した。厚さ20cmのマットレスの下に配置した場合でも、生体情報を取得できる能力がある」(凸版印刷)。

 デモではイスの座面の下に60cm×20数cmのシートを入れている。シート中央部長手方向に細長い面状のセンサーを形成した形だ*1)。展示品に用いたセンサーはデモ用だけでなく、製品に近い形のもの。2016年10月には、既にシート型非接触振動センサーのサンプル出荷を開始している*2)。

*1)センサー形状が面であるため、ヒトがイスやベッドのどの位置に接触しているのかを検知することはできない。位置情報ではなく、振動情報を得るためのセンサーだ。*2)同社は2016年10月4日に生体センサー事業に参入することを発表している。今後は2017年4月から事業の本格展開を開始。2020年にセンサーと関連システムを含めて、約100億円の売上を目指すとした。

■4種類の生体情報をリアルタイム取得

 同社が開発したセンサーが取得できるのは心拍、呼吸、体動、発声という4種類の生体振動(図2)。

 非接触でセンシングできることから、3つの用途を狙うことができるとした。第一がモニタリングセンサー。介護・看護業界向けに心拍や呼吸を検知する際に役立てる。あらかじめマットレスの底面に置いておくだけで検知できるため、導入のハードルが低い。

 第二がヘルスケアセンサーだ。一般向けにイスやクッションに組み込んだ形で提供できる。日常的な健康管理や心理ストレスの可視化によって、健康増進に役立つ(図3)。

 第三がセーフティセンサー。例えば自動車業界向けに身体の異常を検知する用途がある。運転席の座面に設置すれば、ドライバーの眠気や身体異常を把握でき、自動車側にフィードバックすることも可能だ。

■得意の印刷技術を応用してシートを製造

 同社が非接触シート型振動センサーを開発、事業化した理由は、得意の印刷技術を活用できるからだ。

 振動センサーでは圧電素子を利用した。フッ素系樹脂を用いた圧電素子だ。同樹脂は圧力が加わると起電力を生み出す。40μmと薄い樹脂フィルムの両面に電極を形成し、振動センサーとして用いた。

 「当社はフィルム表面加工技術(フィルムコンバーティング技術)を得意としており、約2年前から同技術を応用して非接触センサーの開発に取り組んできた。今回のセンサーでは、フッ素系樹脂の表面と裏面に電極を形成する際にこの技術を用いている」(凸版印刷)。フィルムコンバーティング技術を生かすことで、高品質なセンサーを大量に生産でき、これによって、コストダウンが容易になるという。

■センサーが敏感すぎる

 今回のセンサーを開発するに当たって、最も苦労したのは雑音の排除だったという。

 センサーの検知範囲は、0~100Hz。心拍などを検知するには周波数の範囲が広すぎる。「センサーが周囲の不要な振動を拾ってしまうため、図4にある外付けの制御ユニットを開発した。

 4種類の生体振動に応じて必要な周波数帯の信号のみをクレンジング(クリーニング)し、増幅することで問題を解決した。フィルタとアンプを組み合わせて実現している。なお、フッ素樹脂系の圧電材料には手を入れていない」(凸版印刷)。

■医療よりの取り組みも進める

 なお、凸版印刷は同展示会において、ライフサイエンス領域における事業や研究開発の内容を3つ見せた(図5)。

 医療医薬系包材では、いわゆる包材(パッケージ)だけではなく、封入から梱包までのワンストップサービスを展開中だ。

 マイクロニードル/ナノフィルムは現在、開発中の技術。直径数百nmの微細な針の配列を微細加工技術によって形成。注射針を使わずに患部に薬剤を供給できるという。ナノフィルムは外科手術後の臓器などの癒着を防ぐための部材。

 遺伝子解析システムは、患者の遺伝子配列に応じて最適な治療法(薬剤)を選択できるテーラーメード医療に向けたもの。DNAチップやカートリッジなどの単体の部品も開発中だ。

最終更新:10/13(木) 12:01

EE Times Japan