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モンサントが遺伝子改変技術「CRISPR/Cas9」使用権ゲット

ギズモード・ジャパン 10/13(木) 22:10配信

ドキュメンタリー映画『モンサントの不自然な食べもの』でおなじみのMonsanto(モンサント)社が、何やら大変なものを手にしてしまったようです。

遺伝子医学の世界的権威、ブロード研究所(MITとハーバード大学の共同運営)から遺伝子改変技術「CRISPR/Cas9」の世界規模の非独占的使用権を獲得したのです!

な~んかとんでもない種をつくりそうだなーと思っちゃいますけど、使用許諾契約にはこれはダメ、あれもダメ、まかり間違ってもこれしちゃダメ、という十戒並みのきつーい制限がついていますよ。

契約料は明らかにされていませんが、まあ、途方もない金額であることは間違いないでしょう。なんてったってブレイクスルーと畏怖される「CRISPR/Cas9」ゲノム編集技術ですからね。この出現を境に遺伝学者は神のごとく容易に生命体の特性を意のままに削除・追加できるようになり、今まさに多方面で革命が進行中です。たとえば…

・光るなんて目じゃない! 何千通りものバーコードを埋めたゼブラフィッシュができちゃった。

・感染者の免疫細胞からHIV-1ゲノムを取り除くことに大成功!

・世界初のCRISPR野菜でつくった、コラードの若葉のパスタ!

・ヒトの編集も認められたよ!

…な~んてな具合。

CRISPRのこのスピードとパワーがモンサントの手に渡ったら、そりゃもう水不足や病害に強い種、ヘルシーな脂肪分を含む種、風味のいい理想の種がどんどん量産されるでしょう。遺伝子組み換え技術といえばのモンサントですが、CRISPRはまさに史上最強の武器となります。

ちなみにモンサントは先週、ドイツ・バイエル社に660億ドル(約6兆6300億円)で買収されたばかりです。今、四捨五入で27億円ほど切り捨てましたが、いや~バイオテック会社ってこんな高値だったんですね~ひゃ~。

そんなことより、気になるCRISPR使用許諾の条件ですが、以下のような禁則がついてますよ。

・遺伝子ドライブはやるな。

遺伝子ドライブとは、遺伝にCRISPRを組み込むこと。末代まで改変が受け継がれるため、悪意で野に放たれると種を駆逐してしまうリスクがあり、問題視されています。まあ、最悪、リバースもできますが。変なものは広まらない方が◎。

・「ターミネーター」の種を作るな。

要するに種なしの種を作っちゃダメだよっていうこと。不稔種子技術は「遺伝子利用制限技術(GURT: genetic restriction technology)」といって、Monsantoがその特許をもっていることから、「いつか絶対使う! 使わないわけがない!」と恐れられています。子作りできない種をつくると、農家は毎年種を買わなきゃならなくなって、種を売るMonsantoはウハウハの庄屋に。まあ、庄屋じゃないですけどね。あんなイメージなんで。それはやらないでねって先制してるんですね。

・タバコの品種改良に使うな。

低温・高温、害虫に強いタバコの葉っぱの研究開発はNG。増産への応用もNGです。

CRISPRが悪用されないように、こうやって特許保有者が見張ってるのは何よりですね。モンサントは種をとっておいて次の年の作付けに使う農家を訴えたりして、あんまり一般のイメージが良くないですし。もちろんアンチの批判には行き過ぎな面もありますが。

使い方さえ間違えなければ、農業バイオ各社はこのCRISPRで従来考えられなかったような種がつくれます。昨年DuPont Pioneer (デュポンパイオニア)社はCRISPR初の農業製品として、もちもち粘りのあるトウモロコシのハイブリッド種を作る計画を発表しました。Cellectisの子会社のCalyxtは、別の遺伝子編集ツールの「TALENS」を応用し、麦のグルテンを減らしたり、オリーブオイルそっくりの油が絞れる大豆を作ったりしています。そういう応用は悪くない面も。

ちなみにアメリカでは農務省の制度に抜け穴があるおかげで、CRISPR作物の多くはGMO(遺伝子組み換え作物)みたいな政府の認可が要りません。なぜかというと、外来種の遺伝子を注入する必要がなくて、在来種の切り貼り&修正で間に合っちゃうから。そんな次第なので、カスタムデザインのCRISPR作物が店頭に並ぶのも、そんな先の話じゃなさそうです。

地球温暖化で猛暑、水不足、害虫は本当に深刻だし、人口も世界的には増えていて、「2050年までに今の倍に増やさないとぜんぜん追いつかない」という予測さえあります。そのうち「遺伝子組み換え=悪」とばかりも言っていられなくなりそうな予感がしますよ…。

image: 映画『モンサントの不自然な食べもの』予告編

source: STAT, Genetic Engineering & Biotechnology News

George Dvorsky - Gizmodo US[原文]

(satomi)

最終更新:10/13(木) 22:10

ギズモード・ジャパン

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