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【オーストラリア】【有為転変】第105回 日本の中高生に出会う

NNA 10/14(金) 11:30配信

 1カ月ほど前から、ボランティアで日本人高校生の留学生をわが家に受け入れている。シドニーに半年間、英語を学びに来たという。そのほかにも、最近まで日本が夏休みだったせいか、弊社で日本人学生のインターン生などを受け入れたり、多くの日本人高校生や大学生と触れ合う機会がここ数カ月は多かった。今回はその時の体験。
 茨城県の私立茗渓学園高校2年生の生徒8人が先日、弊社を訪れた。オーストラリアで展開する日系企業を、生徒だけで訪問し、そこで働く日本人に体験を聞いて報告書にまとめるという。なるほど興味深いカリキュラム。日本の教育は海外に目を向けず、内向きのカリキュラムが多いと揶揄(やゆ)される中で、こういう企画を実行できる高校は日本にはほとんどないだろう。
 こちらは、日本に住んでいる高校生に何を話そうかと思案していたが、8人はわがオフィスを訪問するなり、開口一番、全員がトイレを借りたのには、むしろ初々しささえ感じたものだった。
 だが彼らはまじめに耳を傾け、全員が積極的に鋭い質問をしてきた。「会社はどうやって立て直すのですか」「どういう基準で記事を選んでいるのですか」「高校2年生の時に、やっておけばよかったことはありますか」――。こちらは相手が高校生であるだけに、かえって真剣に話していた。
 
 ■ある日本人中学生
 
 また先日のことだった。わが家の他にも、日本人留学生をボランティアで受け入れている友人のオーストラリア人家族が複数おり、ある週末に家族で夕食に招かれた。
 その友人家族にホームステイしていたのは、日本から来た中学生の秀司君(仮名)だった。とても純粋な性格の生徒だったが、英語は片言も話せないので、周囲のために筆者が逐一通訳してあげていたが、ひとつ気にかかることがあった。
 ホストファミリーなど周囲が、秀司君の家族やきょうだいのことを尋ねていた際、秀司君には父親がいないことが分かった。彼がまだ幼い時に事故で亡くなったと聞いている、と言う。
 そうだったのか……とその場をしらけさせずに自然に流そうとしたのだが、おやと思ったのは、秀司君が「父親の名前は知っているが、ほとんど母親から知らされていない」と話したことだった。
 秀司君は、父親のことを知りたいと思っているという。そこで、それからは皆に通訳せず、ネットでお父さんの名前を調べてみたら手がかりがあるのではと伝え、その場で筆者のスマートフォンを貸してあげた。デジタルに慣れていない純粋な中学生らしく、今までネットで調べることさえ思い浮かばなかったという。
 
 ■見つけた新聞記事には
 
 秀司君がさっそくお父さんの名前を検索してみると、情報は一瞬で出てきた。しかも、いくつもの新聞記事として。彼の瞳孔がぱっと開くのが分かった。
 ここで詳しくは書かないが、記事の概要はこうだった。今から10年以上前に、日本のある海辺にキャンプで遠足に来ていた小学生の児童たちが海に入って遊んでいた際に、何人かが沖に流された。その場に居合わせた当時まだ三十代だった彼のお父さんは、とっさに海に飛び込み、児童ひとり一人を抱えて岩場に上げるのを繰り返したが、ついに力尽き、彼自身が波に飲まれて亡くなった――。
 お父さんの知人による追悼文も掲載されており、「年下だったがいつも尊敬していた」と、人柄を偲んだ思いが吐露されていた。
 秀司君は、微動だにせずにネットの記事を食い入るように凝視し、こちらが話しかけても全く聞こえていないようだった。何と声をかけたらいいか分からなかったが、「君のお父さんは立派な人だったんだね……」とだけ言った。おそらく、それも聞こえていなかっただろう。彼は目を潤ませて、押し黙っていた。周囲は、我々の異様な雰囲気に何かを感じ取っていたようだった。
 その1週間後、筆者の携帯電話が鳴り、出てみると秀司君だった。翌日の晩、日本に帰国するので、ひと言挨拶したかった、と言う。こちらも電話してくれたことに礼を言いながら、日本からまたいつか連絡して、と答えた。今夏、彼が南半球で「お父さんの姿」に出会ったことを含めて、オーストラリアでさまざまな刺激に出会えたことは想像に難くない。
 
 ■減少する海外留学
 
 日本では、海外に留学する大学生が減っているという。ましていわんや中学生や高校生となると、特に進学校では、生徒が海外に留学したくても教師側が勧めない、という。高校・大学受験の勉強にマイナスと判断されるからだ。高校生向けの海外留学奨学金を出す非営利団体を運営する知人は、日本人高校生の応募がゼロの年もあると、その内向き度を嘆いていた。
 部活動やテレビばかりで、本も教科書程度しか読まない中学生や高校生にとって、外国は文字通り疎遠な存在だ。だが、実際に一歩外に踏み出してみると、目を開かせられるような体験があることは折に触れて教えてあげたいと思っている。<NNA豪州編集長・西原哲也>

最終更新:10/14(金) 11:30

NNA

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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核融合こそ未来のエネルギー問題への答えであり、子どもにだって世界は変えられる、テイラー・ウィルソンはそう信じています。そして彼はそのどちらにも取り組んでいます。14歳の時に家のガレージで核融合炉を作り、17歳となった今、直前の依頼に応えてTEDのステージで自分の物語を(手短に)語っています。