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「コンビニの公衆電話」は、やがて消えてしまうのか

ITmedia ビジネスオンライン 10/14(金) 9:27配信

 「公衆電話をあまり見かけなくなったなあ」と感じている人も多いだろう。大規模な災害が起こるたび公衆電話の重要性は見直されてはいるが、携帯電話やネットが一般的になった今、「連絡をするためのツール」としての役割は終えたように思う。実際、近年ではコンビニの新規店舗でも公衆電話を新たに設置しているところは少ない印象だ。

【公衆電話(屋外)の設置状況】

 そこで今回は、コンビニの公衆電話の設置について考えてみよう。

●コンビニ開店時には欠かせなかった公衆電話の設置

 筆者が本部の社員だったころに新店の立ち上げを担当したことがあったが、開店準備に公衆電話設置の申請は欠かせなかった。だが、先にも述べた通り、携帯電話などの連絡ツールが普及したことで利用者が減り、コンビニが公衆電話を新たに設置するにはハードルが高くなったのかもしれない。

 NTTに問い合わせてみると、「今後、新規の公衆電話の設置は基本的には行わない」という回答だった。設置の基準は「500メートル四方に公衆電話がないこと」「24時間誰でも利用できること」などの条件がいくつかあり、それらをクリアした場所に設置していくとのこと。全国の電話網をバランスよく維持するために、単に利用者数だけで決めるわけにもいかないようだ。

 「いつでも誰でも利用できる」という点では、コンビニこそ公衆電話の拠点としてふさわしいように思うが、一方のコンビニ側は、公衆電話の設置についてどう考えているのだろうか。

 筆者の経験則で言うと、コンビニの公衆電話は、あっても問題ないが少しめんどくさいのだ。まずコンビニ側が設置の申請をして、設置の是非はNTTが行い、最終的にNTTからの委託という形で契約・設置をする。設置後は、料金の回収や機器のメンテナンスなどの管理業務は、設置場所であるコンビニが請け負うことになる。

 そして、あまり知られていないことだが、実は公衆電話の維持にはそれなりのコストがかかる。次のページで具体的に説明しよう。

●公衆電話を維持する3つの作業

 公衆電話を維持するには、主に3つの作業を定期的に行わなければならない。委託料として多少の収入はあるものの、コンビニのメイン業務とてんびんをかけるとサービスの1つとしてくくれない部分もある。

(1)料金の回収と支払い

 1つは、料金の回収と支払いだ。電話機の中のお金を取り出し、1カ月に1回NTTに料金を支払うという流れだ。

 今の時代、この作業を毎日行う必要はないだろうが、以前は利用者数が多かったので毎日お金を回収しなくてはならなかった。回収後は本部へ報告するために、レジへの入金と金額を記録しておかなくてはならない。テレホンカードの利用もあるので金額はイコールではないが、回収料金を日々照らし合わせるという作業が発生する。

 料金の回収作業そのものは難しいことではないのでアルバイトに任せることもできるが、先にも述べた通り、電話機の中のお金と利用金額は同じではないので、不正の温床になりやすい。仕入れがある通常の商品と違って在庫管理ができないので、現金を持ち出されてしまう可能性もあるので十分な注意が必要となる。

(2)清掃業務

 前回の記事で、店内をキレイに見せるために商品を「前出し」しなければいけないと書いたが、美化へのこだわりは店頭の公衆電話も同じ。屋外なので、毎日欠かさず拭き掃除をしないとあっという間に砂ぼこりにまみれてしまう。掃除そのものは取るに足らないことだが、時間や人件費といったコストがかかる。実際に、ひと月当たりのコストを以下の条件で計算してみた。

・所要時間:10分
・期間:1カ月(30日)
・アルバイトの時給:940円(東京都内のコンビニの最低時給額)

10(分)×30(日)=300(分)=5時間

5×940(円)=4700円

 掃除は難しいことではないし時間もさほどかからないので目に見えにくいコストではあるが、こうして計算してみるとバカにできない金額である。

(3)機器の管理

 3つ目は故障時の対応などをはじめとする電話機器の管理だ。屋外にあるがゆえ劣化も早く、故障することもしばしば。故障時にはNTTへの連絡や利用者への告知を行い、専門的な技術を要するメンテナンスはNTTが対応するという流れになっている。

 こうした対応が通常の業務にプラスされることを考えると、よほどの要望がない限り、公衆電話の設置をNTTに申請する気にならないのは当然とも言える。

●実際の公衆電話の設置数を調べてみた

 さて、減っていると言われる公衆電話だが、実際のところはどうなのだろう? 筆者ができる範囲で調べてみた。

 総務省が公開している『平成23年版 情報通信白書』によると、2000年(平成12年)には70万7233台あった公衆電話が、2010年(平成22年)には25万2775台とおよそ3分の1まで減少している。こう聞くと「もう、うちの近所に公衆電話はないんじゃないか?」とさえ思ってしまう。

 Googleで検索した防災マップには、公衆電話の設置場所が表示されている。屋外に限定しても、公衆電話はいたるところにあるように見える。

 皇居周辺の地図を見ても、公衆電話が少ないようには決して見えない。

●いざというときは、近くに1台はある

 では、コンビニでの設置状況はどうだろうか。試しに「東京都」「セブン-イレブン」というキーワードで検索すると、1441件ヒットした。2016年7月末時点、東京都のセブン-イレブンの店舗数は2426店なので、少なく見積っても店舗の半数には公衆電話が設置されているという計算になる。

 この状況を踏まえると「騒がれるほど公衆電話は減っていないのでは……」と思うのは筆者だけではないだろう。例えば、駅前に5つあった電話ボックスが2つに減ることはあっても、ゼロになるケースは少ない。設置数は減っているとはいえ、いざというときは近くに1台はあるということだ。

 とはいえ先述した通り、今後、公衆電話の新規設置は基本的にないとなれば、この先、減少の一途(いっと)をたどるのは想像に難くない。

 携帯電話やスマートフォンのバッテリーが切れていたり、電波が入りにくいところにいたり、何らかの事情で公衆電話を必要とするシーンは必ずある。そうしたときに、いまは「コンビニに行けば、公衆電話があるよ」かもしれないが、やがて「コンビニに行っても、ないよ」という日がやってきそうだ。

(川乃もりや)

最終更新:10/14(金) 9:27

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