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コミックビームが「緊急事態」宣言 漫画雑誌はこの先生きのこれるのか

ねとらぼ 10/14(金) 11:10配信

 “これまでお決まり芸のように危ない危ないと叫んできたビームですが、現在、史上最大の崖っぷちに追い込まれております”――

【写真】コミックビーム“編集総長”奥村勝彦氏

 今年(2016年)で創刊21周年を迎える、KADOKAWAの漫画雑誌「月刊コミックビーム」が、公式サイトで異例の「緊急事態宣言」を出しています。要約すると「ビームがとにかく売れていない」「ビームだけでなく漫画雑誌自体がこのままだとなくなってしまう」といったもの。そのための実験策として、月額1980円のプレミアムサービス「読もう! コミックビーム」を10月1日からスタートするとしています。

 ビーム読者からすると、ビームがピンチなのはもはや「何を今更」ですが、定価500円そこそこの月刊誌が1980円の月額サービスを開始するというのはかなり異例のこと。また、どうやら窮地にあるのはビームだけでなく、漫画雑誌全体が今、同じように崖っぷちに立たされていると言います。

 漫画雑誌は今、どういう状況にあるのか。このままでは本当に漫画雑誌はなくなってしまうのか。コミックビーム・奥村勝彦“編集総長”に、ビームと漫画雑誌の現状について本音で語ってもらいました。

●プレミアムサービス「読もう! コミックビーム」について

 コミックビームが10月1日からスタートした新サービス。月額1980円のニコニコチャンネルに入会することで、電子版コミックビームが読めたり、編集部員のブロマガや月1回のニコニコ生放送など、貴重なオリジナルコンテンツが楽しめたりするというもの。タイトルはもちろん、桜玉吉さんのコミックビーム宣伝マンガ「読もう! コミックビーム」から。

・読もう! コミックビームhttp://www.enterbrain.co.jp/comic/beamch/index.html

●主なサービス内容

・電子版「月刊コミックビーム」が読める(10月中に登録すれば過去8号分のバックナンバーもダウンロード可能)
・月1回開催のニコニコ生放送「ビーム『マンガ実況』」開催(初回は10月15日19時開始/冒頭1時間半は無料放送)
・よりぬきのビームコミックスが毎月50冊以上読み放題
・奥村編集総長による「週刊奥村」や、岩井編集長の「岩井ッスの日記」など編集部員によるブロマガ配信
・漫画家インタビューや打ち合わせ隠し録り、「桜玉吉 伊豆からのビデオレター」など、製作の裏側に迫る音声・動画コンテンツ配信

●スマホが漫画市場を一変させた

―― 「緊急事態宣言」の冒頭で、岩井(好典)編集長が「しかし本当に売れないっすね」とボヤいていましたが、そんなにキツいんですか?

奥村 あー、例えばオマケを付けるとか、そういう要因で上がったりはするけど、トータルで見るとやっぱりグゥーッと下がってる。これはもう、どこの媒体もそうで、雑誌単体で黒字取れるとこなんてまあ、ほぼない状況です。その赤字を単行本で埋めてなんとかプラスに……というようなことを、この業界はもう何十年もやってきてるんだけど、そりゃまあポイントポイントで大ヒットはあるんだけど、トータルではやっぱり下がってきてるのね。特にここ2~3年はその角度が急になってきてる。

―― 2~3年の間に何か大きな変化があったということですか?

奥村 こらもう、理由は簡単です。これですよ(スマホを指さしながら)。

―― よく言われますけど、やっぱりスマホですか。

奥村 そう、圧倒的。全部が全部スマホのせいにしちゃうのもどうかと思うけどさ、街歩いたらみんなスマホ触ってるんだよ。道歩いてる時スマホ、電車乗ってる時スマホ、便所しゃがんでる時スマホ、寝る前もスマホ、起きてスマホ。ありとあらゆる暇つぶしの形態が、全部これに集約されつつある。こら、売れねーよな。

―― 電車の中の光景とか、明らかに変わりました。

奥村 それまで携帯っつーもんもあったけど、スマホになってそれがもっと顕著になった。画面がデカくなって、見やすくなって、これなら漫画もある程度読める。まあ、オレの歳になると老眼とか遠視とかでキツいけどね。そうすると、ほぼもう集約が完成しちゃったんじゃないかなと。

―― 電子書籍だと置き場所もとらないですからね。

奥村 もう1つ大きな問題があって、電子書籍の利益ってそこまで多くないんだよ。

―― 紙の方が印刷とか輸送とか、物理的なコストの分高くつきませんか。

奥村 あー、掛け率とか今の取次とそんな変わんないのよ。でも紙の本に比べたら、電子書籍はまだまだコストを出せるほど数が出ない。だから電子書籍だけだと、コストを引いて残りはハイ皆さんで分けて、みたいなハナシになると意外と残らないんだ。

―― てっきり電子書籍になれば利益率は上がるものだと思っていました。

奥村 んで、最初に「紙も印刷代もかからない」って部分にだけ着目して、原価ゼロみたいな気で、電子はタダで配るみたいなことをちょっとやってしまった。最初の段階でやっぱりしくじってるところがあるね。そういう風に見ちゃダメだったんだよ、ホントはね。

―― うーん。

奥村 そうなると読者としても、タダでは読むけどお金取るんだったら買わないみたいな感じになっちゃうよね。よく1巻目をタダで配ったりしてるけど、2巻目を買う割合――業界でいうところの“定着率”なんて、ものすごく低いんじゃないかな。まあ、そんなこんながあって、単行本自体もあんま売れなくなっちゃった。

―― 今までは雑誌の赤字を単行本がカバーしていたけど、構造的にそれができなくなってしまったと。

奥村 そう。そうなるってぇと、最初にやっぱりビームみたいなマイナーなとこらが真っ先にキツくなるわけだ。多分な。だから非常に厳しい状況にある。それでこういうのを始めたと。

―― なるほど。

奥村 そらね、もちろん収益あげるのが目的ではあるんだけど、じゃあコレやればバーンともうかるなんて、そんな簡単なモンじゃないことは分かってます。だけど、このまま今までのやり方を続けて行っても、正直あんまり先はないなという自覚はあって。これをやることで次のステップみたいなのがなんか見えればいいし、ここで見えなかったらまあ、キツいだろうな、うん。

―― それで「崖っぷち」と。

奥村 ただ1つ勘違いしないでもらいたいのは、会社全体で金がないわけじゃないからね(笑)。どんな会社でもそうだけど、赤字を続けるような部門はどこかで整理の対象になるっつーのは商売としては当たり前の話で。

●Webコミックは「お城がない城下町」

―― 雑誌単体で黒字を出してるところってないんですか。

奥村 あるにはある。ものすごく歴史があって、載ってる作品の寿命がやたら長いところとかね。

―― 数十万部とか刷ってるところは?

奥村 あー、どうなのかな。でも雑誌の利益って、ある程度の部数を越えたら輸送コストの方が跳ね上がっちゃって、そこからは横ばいに近くなるって話は聞いたな。だから部数が多いから黒字とも限らない。

―― 雑誌の赤字を単行本でカバーする、というのはどこもできてることなんでしょうか。

奥村 できてたのよ。

―― 過去形ですか。

奥村 今、それが順調にできなくなりつつある。

―― それはビームも?

奥村 もちろんそうです。「テルマエ・ロマエ」みたいなヒットがあった時はもう、そりゃ黒字ですよ。誰が何と言おうが黒字になります。ウチみたいな規模の小さいところにしてみれば、ちょっとできすぎちゃったくらいの数字だった。だけどじゃあトータルで見ればどうかというと、一時的にはポーンと跳ね上がるけど、他の単行本の部数はやっぱりジリジリ下がってた。そういうドカーンと当たるのを待ちながら、ちょっとくらい赤字でもなんとか頑張ろう! みたいな感じで必死に穴埋めしながらやってるところは多いと思うよ。

―― 一種のギャンブルですね。

奥村 ただ、なんで雑誌が赤字になるかっていうと、雑誌は原稿料を払わなきゃいけないからなんだよね。雑誌の方でもう原稿料を払ってあるから、単行本は利益率が高い。でも本当は全部、そういうのも含めて原価って計算しないと不公平なんだよ。だからまあ、雑誌だけのせいとばかりも言えなくて。

―― 雑誌が赤字というより、単行本も含めたトータルが赤字になってるのが問題だと。

奥村 もう1つ大事なのは、雑誌って「月に何ページ描かなきゃいけない」っていう楔(くさび)なんですよ。まあ、それがないと人間、描かないよね(笑)。締め切りなしで漫画描ける人ってよっぽどよ。だからみんな雑誌やめれないの。そりゃみんな言うよ「雑誌が赤で単行本が黒だったら、雑誌切り離したら真っ黒じゃねえか」って。

―― それはちょっと考えました。

奥村 だけどやっぱりね、ある程度の拘束力がないとモノって描かないです。みんなケツをにらみながら「こんなの描いてていいんだろうか」って迷いながら表現してる。でもどっかの段階で判断下さないとモノなんて作れなくて、そのために何が必要かっていうと締め切りなんだよ。もう描かなきゃヤバイ! と思うから、いろんなものをシャットアウトしてモノ作れるわけよ。それは人間みんなそうなんじゃないかな。

―― 今って無料のWebコミックとかも増えてきていますよね。ああいうのにシフトしていくつもりはなかった?

奥村 もちろん考えたけど、ピンと来なかったね。それやっちゃうくらいならもうやめちゃった方がいいのかな、とか思ったりもした。オレのイメージだと、お城がない城下町みたいな感じがするんだよな。

―― 雑誌はお城ですか。

奥村 オレはそう思ってる。

―― で、漫画は城下町。

奥村 多分な。でも城下町にはやっぱ城がいるんだよ。例えば今、日本にお城っていっぱいあるけど、実は明治時代あたりにほとんどつぶされてるのね。でもポンポンポンポンあちこちで復活してる。なんでかというと、城下町に城がねえとイマイチしっくりこねえだろ。そういう構造になってんのよ。それをなんだろう、形はないけどデジタルの漫画雑誌です、っていわれてもさ。うーん、これはでも感覚的なモノかもしんないなあ。でも感覚的なモノだけど大事なモノのような気がどっかでしてるぞ。

―― お金の動きだけ見たら、雑誌は赤で単行本は黒なんだから、作品はWebで読んでもらって単行本で元を取ります、ってのは一見理にかなってはいますよね。

奥村 理にかなってます。だからみんなやるんです。でもなかなかうまくいかないんです。

●「おせっかいな兄貴」がいなくなった

奥村 もう1つ、オレは雑誌で育ってきた人間だから、雑誌ってのは出会いの場だと思ってるんです。ビームが絵柄も話もバラバラな作品を一緒に載せてるのはそのためで、例えばある作品が目当てで雑誌買ったら、それ以外の作品も読むじゃないですか。そこから自分が知らなかった作品に出会って、世界が広がっていく。単行本がメインになったら、みんな自分の好きな傾向のモノに縛られちゃってそこから広がらなくなるよ。雑誌ってのはそれを広げていく役割が本来あるはずで、そういうのがないと、漫画読みの修行としては非常に偏ったモンになるんじゃなかろうかなと……まあそんな修行なんてしなくたっていいんだけど。

―― 僕らネットニュースの世界でも同じようなことをよく言われます。ネットだとみんな自分の好きな記事しか読まない、だから新聞を読めみたいな。

奥村 そういうことです。

―― ただ「修行」っておっしゃってましたけど、一般的な漫画読みの価値観からすると、興味がないものを読むのって、やっぱり苦行なんじゃないですかね。

奥村 こないだ会議で話したんだけどさ、おせっかいな兄貴がいないのかもしれねえなあ。オレらの年代以上、特に団塊の世代なんかそうだけどさ、いたんだよ、おせっかいな兄貴。

―― おせっかいな兄貴?

奥村 そう、なんかの先輩とかさ。「お前こんなのも知らねえの? うわあコレ知らねえ奴とオレは話してたのかよ~!」みたいなのがいっぱいいたんだ。で、後から後から「ロックってのはよぉ」とか「漫画、大友(克洋)読んでる? 読んでねえ? あーまた出た、1冊貸してやっからよ、読んでみろよお前、な?」とか。そういうおせっかいな兄貴がいっぱいいてさ、若いやつを見ると髪の毛をつかんで引きずっていってさ、「コレでも見ろオラァ!」って見せるんだよ。

―― 桜玉吉さんも、近所のお兄さんの影響で岡林信康にハマったって言ってましたね。

奥村 そういうのが必要なんだよ。こっちが子どものころから面白いと思ってたのをボコボコにしてさ、実は大したことねえんだよみたいなことを言ってくる兄貴がさ。青春の挫折だよな、そんな大げさなもんじゃねえか。でもさ、ありがたいんだよ……ありがたい。だって世界広げてくれるんだぜ。むりやり。

―― そのための雑誌だと。

奥村 多分そういうことなんだと思うぜ。だから雑誌も今はいらなくなってきてるのかもしれない。雑味しか感じないと。オレなんかはさ、雑味の中にこそ新たな味覚っつーもんがあると思ってるけどな。ずっと甘いモンばっか食ってるんじゃねーぞバカヤローって。まあいいや。それが多分オレの本音なんだ。

●娯楽が萎縮すると戦争になる

―― 「読もう! コミックビーム」の話に戻しますが、これはどれくらい前から企画していました?

奥村 最初は岩井くん(岩井好典編集長)が言い出したのかな、1年くらい前だったと思うよ。まだ銀座にいたころね(※)。そういうのに詳しい連中がエンターブレイン系にいっぱいいたから、そいつらと話をしているうちにいろんなアイデアがでてきて、じゃあボチボチやるかいって。

※6月までビーム編集部は銀座にあった。現在は引っ越して飯田橋に

―― 銀座にあったころってドワンゴも近所でしたよね。同じカドカワグループですし。

奥村 そうそう。ビルは違うけれど、ドワンゴの連中も何人か紹介してもらったな。

―― ニコニコチャンネルでやろう、っていうのもそこからですか。

奥村 もちろんそうです。ただいきなりニコ動でチャンネルやるって言ったって、こっちは全然コツとか間合いが分かんないんだよ。だけど直じゃないと伝わらないモノはやっぱりあって、それをどういう風に表現しようかな、とか考えてはいます。なんか面白いことできりゃいいね。

●ビーム「マンガ実況」10月15日(土)19時スタート!

 「読もう! コミックビーム」の目玉の1つが、毎月1回開催されるニコニコ生放送。初回は10月15日(土)の19時から、出演者と視聴者でビーム本誌&ビームコミックスを一緒に読む「マンガ実況」が実施される予定です。 初回のお題は「目玉焼きの黄身いつつぶす?」と「月刊コミックビーム2016年11月号」。出演者はおおひなたごうさん、上野顕太郎さん、呉智英さん、姫乃たまさん、奥村編集総長、岩井編集長。なお、最初の1時間半はチャンネル会員以外でも無料試聴可能。

・ビーム「マンガ実況」配信ページ無料放送(19:00~20:30)http://live.nicovideo.jp/watch/lv278729978チャンネル会員限定放送(20:00~)http://live.nicovideo.jp/watch/lv278634124



・読むもの目玉焼きの黄身いつつぶす?月刊コミックビーム2016年11月号



・出演(敬称略)おおひなたごう/上野顕太郎/呉智英/姫乃たま/奥村編集総長/岩井編集長

―― 紙の雑誌がWebで何かやろう、ってなった時に、この形(月額1980円のニコニコチャンネル)に行き着いたのって珍しくないですか。他でこんなことやってるところってないですよね。

奥村 他は一切参考にしなかった。他だったらもうちょっとシュッとした形に落とし込んでくるんだろうけど、ウチはそれはやめようと。みっともないけど、ぐちょぐちょ足掻いて何かを作っていかないと意味がない。まあ、そこにわれわれのいい部分や悪い部分がこれから出てくるんだろうな。

―― いきなりまったく畑の違うことをやるわけで、不安とかはないですか。

奥村 不安しかないですよ。今までも相当ぶっちゃけてたつもりだけど、それをWebでやるとなったらさ、ネットで変に拡散されるんじゃないかとかやっぱり考えちゃう。でも、おっかながっててなんか面白いモンやれるかというと、そりゃあ厳しいよな。面白いモンってある意味、無意識の中から生まれてくるわけで、そういうのって身体が強ばっている状況だと、まあなかなか出てこないんだよ。最近のテレビなんかそれを一番感じてるんじゃないかな。

―― 最近はすぐ炎上しますからね……。

奥村 昔だったら単体で電話してきて、「ああスイマセンね」で終わってたんだけど、今はスポンサーに電話するからね。文句付ける側が妙に賢くなって、俺らのクビ飛ばすのなんて簡単だぞってことに気づいちゃった。昔だったら「だったら読まなきゃいいだろ!」ガッチャーン! でよかったんだけどな。

―― 時代ですねえ。

奥村 それやらないとこっちは力が出せないんだよ。

―― Webも同じ傾向は感じます。特にPC(ポリティカル・コレクトネス=政治的・思想的に公平公正であること)にはすごく敏感になった。

奥村 あのね、オレはさ、そういう縮こまりの先に何があるんだろう、ってやっぱ考えちゃうんだよ。で、1つ結論としてあるのは、戦争だろうなと。

―― 戦争?

奥村 オレ昔から思ってるんだけど、最高のエンタテイメントって何かって考えたら、多分戦争なんだよ。自分とか身内が殺されない限り、戦争って一種のエンタテインメントなんじゃないかって。あの「日本チャチャチャ!」なんて足元にも及ばないくらいの爆発力がある。もちろんこれは極端な考えだよ。でもさ、実際戦争なんてやったら悲惨この上ないからね。人間同士殺し合うわけだから。

―― エンタメが萎縮すると戦争に向かうということですか。

奥村 おれはそう思うよ。メディアってそういうのがモロに最初に出てくるものだから。で、ああもう嫌だ平和になりましょう、っていうところからグゥーっとエンタテイメントが盛り返していって、それが一定の飽和点を超えるとまた戦争の方にグゥーっと行って。恐らく人類の歴史ってそれを繰り返しているのね。

―― でも、だとしたら面白いモノを作り続けるのは、ある意味戦争へのカウンターになるということですよね。

奥村 そうそうそう。何人かとしゃべったけど意見モロに一致で、みんな戦争好きですよねーって。でも、それ認めるところから始めなきゃいけないという気も最近してきてる。戦争は娯楽の行き着くところだけど、でもそれって最悪ですよ、っていうところからいろんなことを考えなきゃダメなんだろうな。その言葉(戦争)を封印しようとすればするほど、全部裏目っていくみたいなことに多分なっちゃう。

―― うーん。

奥村 こんな言い方しちゃいけないんだけれど、若い子とか見てて、なんだろう、ふびんな感じがしちゃってね。世の中が閉塞してて面白くねえ、面白くねえ、面白くねえ、っていう中で育ってきて、ちょっとこれは生きててどうよ、みたいな感じになってて。ホントはオレらの世代がもうちょっと頑張らなきゃいけないんだよな。

―― おせっかいな兄貴もいないし。

奥村 ホントに。申し訳ねえなと思うよ。だけどこういうことは言い続けなきゃいけないし、若い人にもなるべく言おうとしてるんだけど、やっぱり開いていくのは大変だよな。もう硬~い甲羅がある。それを剥がしていくともうこんなん(謎のジェスチャー)なっちゃって、ああああみたいな。いやいやもうちょっと誰か剥いてあげてよ、そのまま殻のまま一生終わっちゃうよ、って。

―― やっぱり外気に触れないとイカンと。

奥村 学校の先生も剥いてあげないでしょ、先輩も剥いてあげないでしょ、親も剥いてあげないでしょ、そりゃそうなるよ! で、そのままワケ分かんないことになってどんどん漂流していっちゃうんだよね。それは本人も損だし、周りも損だし、いいこと何もない気がするねえ。

―― なんか、中も外もいろいろ苦しそうですね。

奥村 や、苦しいですよ。でも苦しい時は苦しいって言っていいんじゃないかな。苦しいのに見栄張って大丈夫でーすって言って、いきなりドカーンと潰れちゃうのって、まあそれはそれでダンディかなとは思うけれど。苦しい時に「苦しいでーす!!」って言うのって、そんな悪いことじゃないよ。

―― ネットだと意外に「助けて!」って声には優しいんですよね。

奥村 多分、見てる側もそんな余裕ないんだよ。余裕ありそうな奴にタックルかましてひっくり返すのはやるだろうけど、余裕のねえ奴に余裕のねえ奴がタックルして何の意味があるんだという気もするわな。

●「桜玉吉 伊豆からのビデオレター」とは……?

―― ところで、桜玉吉ファン的には、予告にあった「桜玉吉 伊豆からのビデオレター」をものすごく楽しみにしています。

奥村 あー、あれなあ。アイツの車にドライブレコーダー放り込んで、なるべく面白そうなモンがあったらそれで写るようにしろとか、あと音声を入れろとか言ってるんだけど、なかなかそういう時に限って面白いモン写らねえんだよ。今まで結構あったのになあ。

―― そういえば本題からそれますけど、玉吉さんはシン・ゴジラ見たんですかね?

奥村 まだ見てないのよ。「お前見ろよ」って言ったら「伊豆の山奥だからどうしよう」って。小田原まで出ないと映画館がないんだってさ。知らねえよ(笑)。

―― てっきり速攻で見たものとばかり……。

奥村 「3回くらい見ろよ」って言ったけど、「ええ~しんどいよ」だって。ちょうど夏場だったから、伊豆って夏場えらいことになるんだよ。国道なんてずーっと渋滞だからね。

―― 意外でした。

奥村 ホントなら真っ先に見るようなタイプなのになあ。

(2016年10月6日 飯田橋のKADOKAWAにて)

最終更新:10/16(日) 11:55

ねとらぼ