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ドレスコーズ・志磨遼平、俳優としての可能性「音楽では解消されない悔しさがある」

オリコン 10/15(土) 8:40配信

 音楽界だけでなく、クリエーターや文化人からも圧倒的な支持を得ているドレスコーズ・志磨遼平。そんな彼が映画『GANTZ:O』と『溺れるナイフ』の主題歌を手掛け、それを収録したシングル「人間ビデオ」を発売。さらに『溺れるナイフ』では役者デビューも果たすなど活動の場を広げているが、自分のことを「ラッキーなオジさん」と笑う志磨。そんなどこか掴みどころのない、“愛されキャラ”の魅力に迫る。

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◆役者に目覚めたというよりは悔しい感覚

――今作に関しては役者・志磨遼平としても見事にハマっていました。「ああいうカメラマン、いるいる!」っていう絶妙なニュアンスが出ていてちょっと笑ってしまった(笑)。
【志磨遼平】 あれが他の役柄、例えば普通の会社員の役とかだったら難しかったと思うんですよ。友達にもそういう人はあまりいないし。でもカメラマンなら仕事柄、よく見ているので何となく感じは掴めたかなと。

――ある種の“クリエイター感”をプロの役者さんが出すのはむしろ難しくて、ミュージシャンであり芝居をやったことがない志磨さんだからこそ、出せた雰囲気なのかなと思いました。
【志磨】 ああ、そうかもしれない。役者さんは1を10にも100にもしていくお仕事で、僕らは0を1にする仕事。それをやっているモノ同士として、広能を何となく理解できる部分はありました。ただ、演技に関しては初めてなので自己採点ができない。音楽だと0から100が生まれてくるようなビックリする体験ってたまにあるんですよ。何の苦労もなく100を手に入れた感覚ですね。もちろん、唸ってがんばったのにやっと出たのが、みたいなことも多々あるんですけど、音楽なら打開策や対策が見える。でも、演技に関しては監督がオッケーって言っても、何となくモヤッとして現場では着地点が見えないから試写を観るまではガクブルでした。自分のシーンはずっと半目で観ていて直視できなかった(笑)。

――芝居に目覚めたりとかは?
【志磨】 いや、目覚めたというよりは悔しい感覚。自分としては1回やって友達に笑われて、テヘヘってなって終わると思っていたんです。でも、いざやってみると「他に何かできなかっただろうか?」とか考えちゃうわけですよ。そうなるとね、もう1回試してみたいって気になってしまって……。

――芝居スイッチが入ってしまった。
【志磨】 ただ、悔しいという感じ。しかもこれは音楽では全然解消されない悔しさなんです。だからもしまた芝居のお話をいただいたらがんばってみたい……。マジメでしょ?(笑)。

――すごくマジメです(笑)。星野源さんや浜野謙太さん、ピエール瀧さんなど、アーティストから俳優として成功している人はいますが、志磨さんも今後は音楽と芝居を平行してやっていきたい?
【志磨】 僕はそんな、まったくですよ。かといって音楽のことばかり考えているわけでもなくて。音楽ばっかりやっている人の音楽って意外と面白くないので、僕も日々、いろんなことをして生きてますって感じなんだけど、とりあえずは人の役に立ちたいなと。これまで役に立ったことがない人生なので。

――そんなことはないでしょ(笑)。
【志磨】 いやいや、音楽をやり始めてやっと人が何がしかの価値をつけてくれたっていうか。それがないと“無価値オジさん”に戻ってしまうので、誰かの役に立つために24時間がんばってます、いつでも呼んでくださいってスタンスでいるようにしているんです。そのためには目の前のことに手を抜かない。そうやって一生懸命、生きております。

◆僕がいいと思う曲をみんなもいいと思うっていうのが一番難しい

――志磨さんは作る曲もキャラクターも、すべてにおいて独自の世界観を確立されていますが自身は自分をどのような人だと捉えていますか?
【志磨】 ラッキーなオジさんじゃないですか(笑)。みんなが苦労するところを苦労してなかったりしますから。みんなが一生懸命向き合って突破するところを全力で逃げてきた、イヤすぎて。で、逃げるために走り過ぎて普通の人より余計な筋力がついてしまい、そこを「雰囲気がありますね」みたいに言われているだけっていう(笑)。

――独特の世界観=筋力ですか?
【志磨】 そうそう(笑)。みんなはそこで立ち止まってちゃんとがんばっていると思うんです。朝、起きるとか銀行に行くとか、たまに区役所行くとか。そういうとき僕は区役所の“く”ぐらいのところでメチャクチャ遠くまで逃げちゃう。で、「すげー、足、早いな」ってみんなから言われてる気がします。

――今でも逃げているんですか?
【志磨】 走り続けています(笑)。そこの歩みを止めたことはない。

――しんどくなることは?
【志磨】 全然。立ち止まって向き合うほうがしんどいです。そもそも僕は曲を作るとき、自分のことばっかり考えているんだけど、それが仕事になるって変わっていますよね? みんな誰かのためにがんばっているじゃないですか。でも僕はまさかファンのためとは言えない。気持ちはわかるけど、ファンのためを考えても曲はできないし、たまたま僕と似たことを考えている人が僕のファンになってくれるんだろうなっていう理解をしていて。だから、今も日々、自分のことばっかりを考えています。でも普通だったらそれだと怒られるんですよね。

――しかも志磨さんはひとりっ子なんですよね。
【志磨】 そう! だから、家でも出されるものは全部、僕のモノだったんです。それで今まできちゃったんだけど、音楽を始めて自分のことばっかり考えていたら逆に褒められ出したっていう。

――だからラッキーオジさんと(笑)。
【志磨】 なので僕は何もやった気にはなっていない。だからこそ何ごとも一生懸命やるようにしてます。自分のことを考えるにしても、ひたすらマジメにやろうと。ここで今さら人のことを考えたりしたら、音楽ですらお金もらえなくなりますから。「ファンのためとか言い出したよ、あいつ」みたいな、そうならないために自分中心の暮らしをまっとうしたいと思っています(笑)。

――今後、やりたいことは?
【志磨】 大きいとこでライブしたいとか、たくさんCD売れて欲しいとか、いろいろありますけど。やっぱりカッコいい演奏がしたい、かな。スゴイことには聞こえないかもしれませんが(笑)。でもそのためには自分の中では難しいことがたくさんあって、ちょっとずつがんばっています。最終的にはすごくいい曲を書きたい。僕がいいと思う曲をみんなもいいと思うっていうのが一番、いいことなので。でもこれが難しいんですよねぇ。

(文:若松正子)

最終更新:10/15(土) 8:40

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