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社説[那覇市民会館の行方]住民合意の形成丁寧に

沖縄タイムス 10/14(金) 8:25配信

 沖縄の歴史を刻み、建築文化としても評価が高い那覇市民会館が13日から無期限の休館に入った。

 城間幹子市長が会見して明らかにした。市民会館は復帰前の1970年に建設され、老朽化が著しい。国の安全基準に基づく耐震診断で、震度6以上の地震で倒壊や崩壊する危険性が高いとの結果が出たからである。

 市は総事業費約95億円をかけ「新市民会館」(新文化芸術発信拠点施設)を久茂地小跡に建設することを決め、2021年度の開館を目指している。その間、現市民会館を使用する予定だったが、コンクリートの剥離や落下が相次ぎ、休館を余儀なくされた。

 安全性を最優先するのは当然である。一方で建築は文化であると同時に、歴史の「生き証人」でもある。

 市民会館は故金城信吉氏らが設計した沖縄現代建築の原点ともいえるものだ。沖縄の原風景の赤瓦、軒を深くとった雨端(あまはじ)の空間、屋敷を囲う石垣など伝統的な建築様式を取り込み、建築界では国際的にも高い評価を受けている。

 文化施設が貧弱な当時の沖縄で「文化の殿堂」の役割を果たし、1972年の復帰記念式典の会場にもなった。

 城間市長は補修工事にかかる経費を算出した上で、「庁内で一定の方向性を出し、有識者を入れた検討委員会で広く意見を聴く」と今後の手続きを説明した。

 市が方向性を示した後では検討委員会が追認機関となる恐れはないのか。先に住民や有識者に情報開示して意見を聴く場を設け、合意形成を図るのが筋ではないのか。

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 那覇市民会館に限らず、大型公共施設が一斉に建て替え時期を迎えている。那覇市内では、戦後から復帰前の沖縄を色濃く残していた市場が大きく変貌しようとしている。

 戦後、沖縄本島中南部の食生活を支えてきた市樋川の農連市場は今年4月から再開発事業が始まっている。

 昔ながらの相対売りを残し「人とものが行き交うマチグヮーセンター」をコンセプトに、防災上の危険性の解消も目的だ。観光客を取り込むことも念頭に、中心市街地の活性化を目指す。面積は3・1ヘクタールに及び、約177億円の大規模再開発事業だ。

 市は「県民の台所」である第一牧志公設市場の移転計画も老朽化に伴い進める。紆余(うよ)曲折を経て現在地で建て替えることにしている。近くの「にぎわい広場」に仮設店舗を設置し、2019年度に着工する方針だ。だが、組合から見直しの声が上がっている。

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 気になるのは、市の住民合意の在り方が十分でないように見えることだ。市民会館移転先では決定後の住民説明会で交通渋滞などを心配する声が出る。牧志公設市場移転でも市はいったん「にぎわい広場」に決定しながら組合の反発を招き現在地となった。

 那覇市も遠からず少子高齢化に突入する。税収増を見込むのは困難な中で大規模事業は市の財政に影響を与える。市民と情報を共有しながら、政策決定過程の透明化を徹底し、住民合意に向けた丁寧な手続きが求められる。

最終更新:10/14(金) 8:25

沖縄タイムス

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