ここから本文です

カルビーが「成型ポテトチップス」の開発を止めなかった理由

ITmedia ビジネスオンライン 10/15(土) 6:42配信

 これまで手付かずだった「成型ポテトチップス」市場にスナック菓子メーカー大手のカルビーが本格参入した。筒型タイプの新商品「ポテトチップスクリスプ」を8月1日から北海道で、同月下旬には東北・信越エリアで順次発売し、10月10日から関東エリアでも販売している。

【クリスプの販促ツール。スーパーなどで子どもが興味を持つことが多いそうだ】

 日本では200億円の市場規模と言われる成型ポテトチップスは、長らく「チップスター」(ヤマザキビスケット)と「プリングルズ」(日本ケロッグ)の寡占状態だった。カルビーはそこに割って入り、今期で20億円以上の売上高、20%の市場シェア獲得を目指す。

 カルビーが成型ポテトチップスに参入した理由は主に2つ。ポテトチップス製品の売り上げ拡大と、原料調達に左右されない商品作りである。

 ポテトチップス市場全体で同社は国内シェア7割を超えるダントツの首位。2016年3月期決算ではポテトチップス製品の売上高が786億2700万円(前年同期比7.6%増)と好調だ。新ジャンルの商品によって売り上げの純増を図りたい考えである。

 もう1つは商品原料が安定的に確保できる点である。カルビーの既存のポテトチップスは国内で収穫した生のジャガイモを使用する一方、クリスプは輸入した乾燥ジャガイモを原料にしている。今夏に北海道を襲った台風でジャガイモ畑は大きな被害を受け、目下、カルビーは原料不足に悩まされているが、クリスプであればこうしたリスクを回避できる。なお、日本では生のジャガイモを海外から輸入することは規制されているため、国内で調達せざるを得ず、自然災害などのリスクが常に付きまとうのである。

●一度は失敗

 なぜカルビーはこのタイミングで成型ポテトチップスに乗り出したのだろうか。実は過去にもトライしたことがあり、1998年にはドイツ企業のOEM(相手先ブランドによる生産)供給で「チップスレッテン」という商品を販売した。しかし、消費者の支持を得られずに1年足らずで販売終了した。

 「やはり日本ではカルビーというブランドで商品化する必要があった。品質面でも改良の余地はあった」と、カルビーのマーケティング本部 ポテトチップス部で新規ポテトチップス課 課長を務める御澤健一氏は話す。

 ただしそこで諦めず、その後もカルビーは製品の研究・開発を進めた。2011年1月からは同社のR&Dセンターでテストを開始し、2013年にドイツのOEMメーカーと共同開発したレシピを使って、カルビーブランドを掲げた「ポテトチップスクリスピー」を完成。東北・信越エリアでテスト販売したところ好評だったため、正式にクリスプの商品化に取り組むこととなった。2015年3月には自社工場に成型ポテトチップス専用の製造設備を導入した。

 製品開発段階でこだわったのはパリッとした「食感」。チップスの膨らみ具合や揚げ具合など、何度もトライ&エラーを繰り返し、乾燥ジャガイモの品種も100種類以上試した結果、米国の品種である「ラセット・バーバンク」を使用して理想的な食感を作り上げた。

 ところが、カルビーは当初2015年8月に予定していたクリスプの発売を延期。その理由について御澤氏は「品質にばらつきがあった」と明かす。具体的にはチップスの形や食感、味付けにムラがあったという。味付けについて、成型ポテトチップスは生地に調味料などを練り込む製法が一般的だが、クリスプでは食感を良くするためチップスに調味料を上掛けするので、どうしてもばらつきができてしまう。そこで製造システムのオペレーションを細部まで調整して品質を均等にしていった。

●市場全体の活性化を

 クリスプの売り上げ状況はどうか。先行発売した北海道エリアでは、計画よりも売り上げが2割以上伸びており、発売1カ月間のシェアは40%に上った。スーパーマーケットなどで展開する販促ツールが好評だったそうだ。

 成型ポテトチップス市場全体を見ると、クリスプの発売前後4週間を比較して149%成長したという。つまり、カルビーの参入に他社も刺激を受けて、販売に力を入れたことなどがうかがえる。この結果にカルビーは手応えを感じている。「元々の参入目的が、競合他社からシェアを奪うというよりも、成型ポテトチップス市場を活性化することだった」と御澤氏は強調する。

 長らく成長が鈍化していた成型ポテトチップス市場。クリスプの登場によって市場は大きく盛り上がっていくのか、今後の各社の動きにも注目したい。

(伏見学)

最終更新:10/15(土) 6:42

ITmedia ビジネスオンライン