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ピロリ菌を除去したら胃がんに絶対ならない…そんな“誤解”に注意を

デイリースポーツ 10/15(土) 12:00配信

 ピロリ菌を除去したから、もう胃がんの心配はない。そのような会話をしたり、聞いたことありませんか?確かにピロリ菌の除去は大きな効果があるようですが…。兵庫県伊丹市の「たにみつ内科」で日々診察にあたっている谷光利昭医師はそんな“誤解”に注意を促しました。

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 毎年多くの人が、癌(がん)で亡くなられ、闘病をされています。成人の約3分の1が癌になるのですから、結構な確率です。近年、増えているのが肺癌です。喫煙が重要因子ではありますが、それ以外にも大気汚染など様々な外的因子が関係しているようです。その中で、以前は胃癌大国であった日本で、胃癌の死亡率が低下しています。胃カメラ(上部消化管内視鏡)による健診が増えたのが理由の一つです。それに連動して、ヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)の発見、そして除菌も広く行われるようになりました。

 ピロリ菌は胃がんと密接に関係しているとされています。かつて、その除菌は胃潰瘍、十二指腸潰瘍のある人にしか保険適応とされていませんでしたが、現在は慢性胃炎などの人にも保険治療が適応されます。様々なデータがありますが、除菌前と除菌後では、胃癌になる確率が3分の1程度まで下がるといわれています。ですから、ピロリ菌に感染している人は、必ず除菌をしてほしいのです。現在は、生涯で2回のみ保険適応となっています。

 気をつけてほしいのは、胃癌になる可能性が“3分の1”になっただけで、除菌=可能性ゼロになるわけではないということ。ここを勘違いしている人がたくさんいます。例えば、幼少期に感染したピロリ菌は、数十年かけて胃粘膜を委縮させ、さらには前癌状態とも言われている腸上皮化生という状態にまで正常胃粘膜を悪化させている可能性が高いのです。除菌しても、それまでに悪化した状態が劇的に改善するわけではないので、癌になる因子は残っているということです。また、ピロリ菌に再感染してしまうケースだってあります。

 ピロリ菌に感染している人は、胃カメラを受ける年齢が遅ければ遅いほど、既に状態が悪くなっているリスクは高まります。ですから、若いうちに胃カメラを受け、感染を認めれば、直ちに除菌をしてほしいのです。それにより、胃癌発症のリスクは一層軽減します。もちろん、その場合でも胃癌になるリスクが“3分の1以下”になっただけという認識は持つべきです。除菌後でも年に一度は胃カメラを受けて、癌の早期発見を心がけてほしいです。早期胃癌であれば、かなりの確率で内視鏡治療を施すことにより完全に治癒することが可能です。今は癌と言っても死刑宣告ではないのですから。

 胃癌の中にも、ピロリ菌の感染と関係なく、出現してくる怖い種類のものもあります。このタイプの癌も早期に見つけることは難しいのですが、胃カメラを受けて早期発見できれば、治癒する確率は高まります。胃癌になる因子としては、塩分の過剰摂取、喫煙なども挙げられています。遺伝的な要因はないとされていますが、親族内で胃癌が多発しているケースも時々みます。これについてはピロリ菌の感染が原因であったり、共通した望ましくない生活習慣が引き起こしたのかもしれません。

 いずれにしても癌の予防は簡単ではありません。けれど、防ぎようがないと考えてしまうではなく、積極的な検査受診や治療によりリスクの軽減を図れるということを知ってほしいと思います。

最終更新:10/15(土) 12:00

デイリースポーツ