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琉球ゴールデンキングスの新たなる挑戦「沖縄の宝」がBリーグの頂点を目指す日々。 (2)

沖縄タイムス 10/15(土) 13:30配信

◆完敗の土曜日、元キングスのシーホース狩俣が大活躍

 10月8日、3000人を超えるファンが詰めかけた沖縄市体育館には、期待と不安の入り混じった緊張感が漂っていた。

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 琉球キングスは前週(10月1日、2日)、旧bjリーグで度々戦ってきた相手・滋賀レイクスターズに連勝して勝敗を五分(2勝2敗)に戻し、クラブもファンもひとまず安堵したわけだが、いよいよ旧NBLの強豪を初めてホームに迎えてのゲーム開催となったのだ。

 対戦相手は、シーホース三河(愛知)。

 開幕ゲームで連敗を喫した相手、旧NBLのアルバルク東京と同じく、日本代表選手を3人(橋本竜馬、比江島慎、金丸晃輔)抱え、Bリーグ初代王者候補とも言われるチームだ。

 三河のメンバー表には、懐かしい名前もあった。伊佐勉がヘッドコーチに就任した2013-14シーズン、キングスに所属して優勝に貢献した狩俣昌也(宮古島市出身、興南高校-国際武道大)である。

 当時のキングスでは岸本隆一、並里成の2人のポイントガードの陰でベンチを温める時間が長かった狩俣だが、翌14-15シーズンからbj新規参入の福島ファイヤーボンズに移籍。彼はここで、チームを引っ張る司令塔兼得点源として持てる才能を開花させた。その大活躍のおかげというべきだろう、狩俣には新リーグを代表する強豪チーム・シーホース三河から声がかかり、開幕早々古巣キングスと沖縄で対決するという檜舞台を迎えることになったのだ。

 選手紹介のMCの声が狩俣の名を告げると、会場のキングス・ファンは惜しみない拍手と歓声を送った。キングスに貢献した選手が対戦チームの一員としてホームに帰ってくるたび、いつでもこのように盛り上がる。これはもう「良き伝統」とさえ呼びたくなるキングス・ホームゲームの光景だ。

 狩俣自身も、試合後の記者会見で「久しぶりの沖縄でのゲームをすごく楽しみにしてたんですが、あのときの声援が本当に温かくて、沖縄のファンの皆さんにはとても感謝しています」と述べることになる。

 その狩俣が、土曜の試合でいきなり弾けた。

 トータル20分間出場のうち、4Qでの6分あまりのプレーのなかで、3ポイント2本、2ポイント2本の10得点と存在感を示したのである。

 しかも、前半苦戦を強いられたキングスが3Qで追い上げ、4Q開始間もなくスチールからの速攻で岸本がレイアップを決め、60対60と追いつき、さぁ試合終盤の展開はどうなるか、という4Q後半の勝負どころ。

 試合終了まで残り4分から1分強の3分足らずの時間で、なんと4連続ゴール(2P→2P→3P→3P)の駄目押しを決めたのが、狩俣だったのである。そのシュート精度は、敵ながらあっぱれというほかなかった。

 終わってみれば、69-89で、キングスの完敗だった。

 会見では、狩俣にこんなふうに訊ねてみた。

――久しぶりに元チームメイトと戦って、どんな感想を持ちましたか。

 「キングスは、個々のプレーに頼るよりもチームプレーで戦ってくるチームで、いまのB1(Bリーグ1部)のなかでもすごく良いチームです。これからチーム内の連携が取れてくるともっとよくなると思います。ですから、うちのチームもキングスには脅威を感じ、強いチームだということをしっかり意識して練習に臨みました。そしていい準備ができていたと思います」

――狩俣さんは、福島での大活躍の結果、レベルの高い旧NBLの強豪チームに入ることになったわけですが、旧NBLと旧bjのチームとを比較して、どこがいちばん違うと感じていますか? 

 「フィジカルと、それからシュート力ですね。NBLの日本人選手はサイズも大きいし体が強いです。キングスの選手もシュート力がありますが、(旧NBLの選手は)ノーマークのシュートはほとんど外しませんからね」

――そういう中で刺激を受けて、自分も成長していると感じますか? 

 「はい。日本代表の選手たちと一緒に練習しているので、刺激を受けますね。チームメイトに感謝しています。でも、まだまだ足りないところがあるのは自覚していますし、一日一日自分を(コーチやチームメイトに)アピールするのが精一杯です。レベルの高いところでやれるのは、やっぱり楽しいです」

 この日の4Qでの好調の要因を問われたときには、こう答えていた。

 「ヘッドコーチからは、ディフェンス頑張れ、足を動かしてこいと指示を受けて出て行きました。それでディフェンスからアグレッシブに動いてリズムを作れたのがよかったと思います」

 狩俣よりも先に会見に臨んだシーホース三河の鈴木貴美一HCは、彼をこう評していた。

 「非常にまじめな選手です。うちに来たときより、ゲームコントロールとか覚えて、さらにいい選手になっています」

 ともかく狩俣の活躍のみならず、11-29と突き放された4Qの差が現在のチームの実力差、というべき試合になった。

◆喜多川、岸本の「前向き」な敗戦の弁

 一方、キングスの喜多川修平、岸本隆一両選手は試合後の会見で、「実力差」を認めていた。

 喜多川は「桜木(ジェイアール)選手の得点はある程度覚悟していたわけですが、それ以外のところでもやられましたね。こっちのリズムがつかめない時に、しっかりディフェンスしてくるところは、敵ながらさすがだと思いました。思っていた通り、インサイドの強さはかなり強烈で、例えば金丸(晃輔)選手なんかにはインサイドをやられ、外から(のシュート)もやられましたので、明日はその対応を修正してチームで止める(ディフェンスをする)というプランの遂行レベルを上げたいと思います」と言い、岸本もこう語った。

 「比江島(慎)選手の個人技にもやられましたし、シーホース全体が試合巧者だな、と感じました。基本はインサイドの強さが特徴のチームですが、トランジション(攻守の切り替え)の速さで勝負してきたり、想定外のところで攻めてこられたりしました。今日は力負けでしたね」

 岸本には、自ら強引にインサイドへ切り込むオフェンスで気を吐く姿勢が見られたので、そのことに水を向けた。彼はその時の意識をこう教えてくれた。

 「相手がスローダウンして攻めたいという時間帯に、無理矢理にでも行かなければ流れを変えられない、という場面で行きました。決められたからよかったですが、外れると相手にますます流れを持って行かれる場面でしたね。オフェンスに関しては3Qでいい感触を得たので、明日はディフェンスを修正して臨みます」

 力負け認めた上で、毅然として前を向くキャプテンであった。

◆伊佐HCが示した翌日への不思議な自信

 伊佐勉HCは、むしろさばさばとした表情で潔く敗北を受け入れていた。
「さすが日本代表クラスを揃えた三河さんだけあって、レベルが高くて、シュートは落とさないし、わくわくするほどのゲームでした。レベルが違うな、と思いました」

 そしてこの日も、伊佐は自分に責任がある、という言い方をしていた。

 「3Qで10点差つけられてから追いつくために、選手を変えずに引っ張ってしまったぼくの失敗かな、と思います。向こうはメンバーを休ませながら戦っていたのに、うちの選手は体力を消耗してしまいました。あそこで休ませていれば4Qはああはならなかった(突き放されなかった)と思います。12名の選手みんなで戦えていたなら…」

――狩俣選手には成長を感じましたか? 

 「もともと力のある選手ですし、3ポイントは警戒していたんですが、やはり以前より成長していますね」

 そして最後に、翌日の試合に向けての抱負を問われた伊佐HCは、不思議なほど落ち着いた口調でこう言った。

 「ホームですから、明日はお客さんに気持ちよく帰ってもらえるように、(旧NBLチームからの)1勝を上げたいと思います」

 強がるわけでも気負うわけでもない、ましてやリップサービスなんかではない、じつに自信に満ちた淡々とした口ぶりと表情だった。

◆旧NBLのトップチームからあげた記念すべき1勝

 翌日の日曜日、10月9日。

 キングスは、昨日とは違ってしぶとく食い下がるような試合を見せてくれるのだろうか。しかしやっぱり、今日も簡単には勝たせてもらえないだろうなぁ、というのが、試合会場で選手のウォーミングアップを眺めながら抱いた予測だった。

 キングスの課題と言われる1Qのすべり出しに注目した。

 ジャンプボールは、シーホースの手に渡って試合は始まったが、序盤からキングスのアグレッシブなディフェンスが光り、シーホースに24秒バイオレーションをもたらした(攻撃権交代)。そこからすかさず喜多川の3ポイント。昨日と打って変わって、ディフェンスの集中力、オフェンスのスピードも素晴らしく、ドキドキするような快調なすべり出しだった。伊佐HCが日頃から目指している「人もボールもよく動く、沖縄らしいチームバスケ」だ。

 1Q終わって26-16。

 しかし2Qで36-31と詰め寄られ、3Qでは51-53と逆転を許してしまった。

 あぁ、今日もやはり勝ち切ることは難しいか、という思いも脳裡をよぎる。
だが、4Qこそは、昨日の経験を生かしたキングスの真価が発揮されるクォーターになったのだ。

 終わってみれば4Qだけで10点差をつけての、75対67の完勝。

 昨日のように3Qの追い上げで主力メンバーが体力を消耗することなく、4Qはマクヘンリー、金城、岸本、喜多川、ハミルトンの5人が10分間いい働きを続けることができた。

◆「これでゲームプランを信頼してもらえる」

 伊佐HCは記者会見で、4Qを主力の5人で戦えた点についてこう説明した。

 「3Qでの津山(尚大)の貢献があったからです。田代(直希)ももっとできるはずなので、(1試合)10分ぐらい出てもいいぐらいだと考えています」

 プレータイムをシェアしつつ、人とボールが絶えず動くバスケ。サイズの小さい選手が相手よりも盛んに動き回るのだから、相当のタフネスが要求される。だがたしかに、キングスがBリーグの強豪と互角に戦うには、この道を追求するしかないのである。

 伊佐HCは、試合全体をこう振り返っていた。

 「昨日は、4Qで勝負してくる三河さんのパターンをわかっていながら、3Qまでで消耗してやられてしまいました。今日はそこを修正して4Qを抑えようという意識で臨めたのがよかったと思います。選手たちも、コーチ陣の立てたゲームプランを遂行すれば勝てるんだと信頼してくれたと思います。そういう意味でも大きい1勝ですね。昨日今日と、シーズン序盤のこの段階で、レベルの高いゲームを経験させてもらえてよかったと思います。今後はプレーの確実性を高めるなどプロ意識をもって、厳しくトレーニングしていきたいと思います」

 具体的なゲームプランの一端を教えてほしいという質問には、こう答えていた。

 「例えば、打たせてもいい選手を決めて打たせる、とか、2点は仕方がないが、3点はやるな、といったディフェンスのプランですね。オフェンス面では、スローな展開では相手の流れになってしまうので、40分間、自分たちのテンポ、リズムで戦えたのがよかったと思います」

◆キャプテン岸本の得た自信

 岸本隆一も、試合後、満足そうにこう語った。

 「昨日は、悔しい負け方をしましたが、今日は最初からテンポの速いゲームにしようと意識して戦えたのがよかったと思います。そのテンポの速さが、徐々に相手の足にきたと感じました。それから昨日は金丸選手、比江島選手にやられてしまったわけですが、今日は抑えることができました。2人には3ポイントを決められなかった。特に金丸選手には3ポイントを1本しか打たせていないと思います。そういうところも昨日から修正できた点ですね。昨日はチームの力を出し切って負けたとは思えなかったので、今日は勝ちたいという意識がとても強かったです」

 大きい選手と戦うゲームではストレスもたまるのでは? と問われたときは、こんな答え方をした。

 「昨シーズンから、僕自身は考えながらプレーしてきているんですが、しかし、それ以前に必死さが必要だなと感じています。毎プレー毎プレーの必死さがないといけないな、と」

 そして会見をこう締めくくった。

 「この勝利は、成長のきっかけになる1勝だと思います。自信になります。そして、素直に嬉しいです。こんなに素直に喜べる感覚は久しぶりだな、と思います。この感覚を、これからももっと味わっていきたいと思います」

◆古巣に勝利した喜多川の喜び

 喜多川修平は、いつも会見場では温厚なポーカーフェースで通す選手だが、やはりこの1勝には、感慨深い表情を浮かべていた。

 「7年間在籍してよく知っているチームなので、他の人以上に今日は勝ちたいという意識をもって臨んだ試合でした。古巣相手だからこそ、絶対勝ちたかった。自分が成長したところも見せて、なおかつ勝ちたかったです。ですから勝てて、すごく嬉しいです。これからも後戻りすることがないように、頑張りたいと思います。チームメイトやブースターの皆さんに本当に感謝したいと思います」

 昨日と今日の大きな違いは? と記者団から質問が飛び、彼はすみやかに答えた。

 「昨日は、インサイドの桜木選手、アウトサイドの金丸選手に得点を重ねられたので、そこをチームで守れたのがよかったと思います。比江島選手もドリブルがうまくてスペースをつくるのもすごく上手です。こういう選手には間合いを詰めてディフェンスしなければいけませんが、今日はそういうところも含めてチームで守れたと感じています」

 会見場には、ラモント・ハミルトンも現れた。そして、滋賀レイクスターズ戦の試合後に伊佐HCが明かした彼への注文と符合する言葉を聞かせてくれた。

 「コーチからは、もっと積極的に行けるはずだ、アグレッシブに攻めろと言われていたので、今日はそれが遂行できての勝利だったので、よかったです」

 さて10月15日、翌16日、われらがキングスはアウェーで京都ハンナリーズと戦う。

 私見を述べれば、キングスは、旧bjリーグのチームには、最多優勝を誇る王者として横綱相撲で勝ち続けてほしいものである。

 そうして旧NBLの強豪を、一つ、また一つ、倒していく。その先に大きな希望の光が見えてくる。

 もちろんシーズンはまだ序盤戦だ。

 われわれファンとしても、焦らずじっくりと、今シーズンのチームの可能性を楽しみにしつつ見守りたい。(文中敬称略)

渡瀬 夏彦

最終更新:10/22(土) 8:45

沖縄タイムス