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「Google Glass」が失敗した理由と「Snapchat」が次に目指す場所

ITmedia ヘルスケア 10/16(日) 6:10配信

 Snapchatは、9月24日に社名をSnap Inc.へと変更し、「Spectacles」(スペクタクルズ)というカメラ付きサングラスを発表した。サングラスの右端にカメラが内蔵されており、左端のボタンをタップすることで10秒の動画を撮影できる。

【Snapchatが作ったカメラ付きサングラス】

 撮影された動画は、ワイヤレスでSnapchatアプリの「メモリ」に送信される。Snapchatのメモリは、Snapchatの特徴だった「自動的に消える写真やビデオ」を覆す、保存できるタイムラインのような存在だ。

 Snap Inc.は「カメラ会社」だというステイトメントを出し、企業の方向性のシフトチェンジを象徴するウェアラブルカメラという位置付けになる。

●ストックからフローの時代へ

 筆者は1999年からの4年間、大学生として過ごした。モバイルマルチメディアをテーマとしたゼミ生の間で注目されていたキーワードに「ライフログ」があった。直訳すれば生活の記録。

 ちょうどカメラ付きケータイが登場し、写真を撮ることが非常に手軽になったこと、そしてWeb日記を経て、言葉としてWebログ(ブログ)が登場し、文字を記録する場としてのインターネットも認知が進んだ。

 こうした情報を蓄積して行くタイプのサービスの最たる存在がFacebookだ。人間関係、写真、共有する情報など、全てが蓄積されていった。それにしては検索性の低さに非常に不満を覚えているが。

 一方、今回のテーマであるSnapchatは、米国だけでなく日本でも、若者世代を魅了するサービスだ。Facebookを避けてSnapchatを楽しむミレニアム世代の言い分は、「親がいないこと」。

 ただ筆者は、情報の扱い方にも大きな違いを見いだしている。

 それはすなわち、ストック型のFacebookに対する、フロー型のSnapchat、という対比だ。フロー型のサービスでうまくいっているのはSnapchatくらいだろう。Twitterもフローが得意なサービスであるが、おそらく登場が早すぎた。

 人々がストックのサービスに興味を持っていた時代が、今ようやく終わろうとしているからだ。ジャック・ドーシーがリーダーシップをとって、「ニュースネットワーク」との方針を打ち出しており、輝くようになるのではないだろうか。

●ライフログからフローへ

 こうしたメディアのモードの違いを指摘した上で、Spectaclesをあらためて見直してみよう。

 メガネにレンズをつけるアイデアは、Googleが「Google Glass」で実現したスタイルだ。そのため、必ずしも新しさを感じるものではない。もちろん、新しいガジェットが重要なわけではない。

 というのも、Google Glassは未来的なガジェットであったが、何を表示するか、そして何を撮影するか、という「サービス」がなかったこと、そしていくら何でも高すぎたことから、既にその存在感が消えつつある。ちなみにGoogleは10月4日のイベントで、Daydream Viewを発表し、VR体験を楽しむ方向へとシフトした。

 Spectaclesは、Snapchatというサービスを前提に作られている。撮影された10秒のビデオは、スマホが縦でも横でも、画面いっぱいに表示される仕組みを実装し、カメラがついていない方の左端には、撮影中は白いLEDのランプが灯る。

 こうして、友人と楽しんでいるとき、自分がいる場所などを、直接Snapchatアプリに送り込んで、すぐに友人に送ったり、メモリとして公開できる仕組みを作り上げた。「カメラ会社」を名乗るSnap Inc.としては、スマホを構えず撮影できる点で、新しいカメラを打ち出せるのではないだろうか。

 Spectaclesはウェアラブルカメラと分類できる。アクションカメラなど、身につけてアクティビティーをする際に便利なカメラは既に存在している。こうしたウェアラブルカメラについては、最近悲しいニュースがあった。それはNarrative Clipの販売とサービスの終了だ。

 Narrative Clipは、襟などに装着して、30秒に1枚のペースで写真を記録してくれるカメラだった。いわゆるライフログの系譜から生まれており、撮影した画像をあとから分類して見ることで、写真撮影の煩わしさや撮り逃しを防ぐというアイデアだった。

 製品を販売してからは継続的にサーバのコストが掛かり続け、ビジネスモデルが発展しなかった点、そしてスマートフォンのカメラのさらなる高画質化から、自動的に記録してくれるカメラのメリットが薄れてしまった点が、サービス終了の原因だと考えられる。

 Narrative Clipも、Snapchat以前のストックを前提としたアイデアから出発している点で、時代遅れになってしまった、と捉えられるだろう。

●ウェアラブルとフロー

 この瞬間を刹那に楽しむことへの興味をかなえてくれるのがSnapchatだ。

 若者が今後、自分の情報を丁寧に蓄積し、関係性を重ねて行くことに価値を見いだすかもしれない。過渡期ともいえる当面は、例えばキャリアを意識したり、自分のプロジェクトを持つようになると、ストック寄りの志向が強まるのではないだろうか。

 Snapchatがメモリ機能を用意したのも、Snapchatユーザーが成長するにつれてストックへの興味を持つならば、それを満たす機能を入れよう、という戦略的な意味合いも透けて見える。

 しかし、彼らが経験した、フローの情報を扱う感覚は、失われないだろう。Spectaclesは、そうしたフローの情報を扱える人々のためのウェアラブルカメラとして、支持を集めることになると予測している。

 ウェアラブルデバイスは、特定の目的や最小限の機能を備えたものが多い。その理由は、身につけるためできるだけ小さくしなければならないからだ。より状況に応じた機能を発揮することが求められ、もし情報を扱う場合、フローの感覚が、ヒットを呼ぶヒントとして考えられる。

 Spectaclesの成否は、Snap Inc.の新しい戦略の正しさだけでなく、ウェアラブルデバイスの方向性を占う意味でも、注目していくべきだろう。

最終更新:10/16(日) 6:10

ITmedia ヘルスケア

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