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マーケティング部門とIT部門の断絶が顧客体験の創造を阻む――マルケト 福田康隆氏が語る

ITmedia マーケティング 10/16(日) 7:10配信

 データやテクノロジーを駆使した「デジタルマーケティング」へのシフトが必須であることは、多くの企業で認識されていることであろう。

 その一方で、デジタルマーケィングを効果的に運用するに当たって「マーケティング部門とIT部門がいかに連携するか」「IT部門はマーケティング部門にどう関わるか」といった悩みも聞こえてくる。日本企業が構造的に抱える「縦割り組織」の弊害をどう乗り越えるかというテーマが、マーケティングのデジタル化をトリガーにして、新たに浮かび上がってきているといってもいい。そして、それは今度こそ待ったなしだ。

 部門間の壁を超え、デジタルマーケティングを経営に生かしていくためには、CIO、CEO、CMOの協調が欠かせない。利害を乗り越え、自社のビジネスを加速させるために3者はどう取り組むべきか。マーケティングオートメーションベンダーのマルケト代表取締役社長 福田康隆氏による講演からヒントを探ってみたい。

●組織を超えた変革が必要な時代

 冒頭、福田氏は現在を変革の時代と位置付け、マーケティングの領域で顧客に起きている変化について3つの観点から分析した。

 1つ目は、「溢れるメッセージ」。顧客の日々の生活はマーケティングメッセージに満ちているが、ほとんどは記憶に残らない。すなわち企業にとっては、顧客に届けたいメッセージが届かない時代になっている。

 2つ目が「高い情報リテラシー」。顧客の購買行動のほとんどは自らの情報収集で完結しているともいわれる。オンラインで十分な情報を得て既に意思を固めた顧客を広告で翻意させるのは容易なことではない。

 3つ目が「高まる期待値」。ある調査によると、64%の人は「価格よりも顧客体験の方が大切である」と回答しており、その体験はかつてのような店舗での対人コミュニケーションではなく、その前段階での体験となる。この顧客体験の設計において、日本の多くの企業は後れを取っており、高まる顧客の期待値を上回るために、企業は日々進化していかねばならない。

 「そのためには組織を超えた変革が必要。デジタルトランスフォーメーションにおいてはCIO、CEO、CMOが協調して動くことが大切であり、3者の協力体制が最も重要」と福田氏は述べる。

●従来の企業組織は「顧客体験の創造」を念頭に設計されてはいない

 3者が連携してデジタルマーケティングにおける顧客体験を成功に導くためのポイントは何だろうか。福田氏は「戦略」「組織と人材」「テクノロジー」の3つの視点から語った。

戦略

 一方通行のマーケティング施策からデジタルを活用した対話型のマーケティング施策へ。顧客とのワンツーワンのコミュニケーションが求められる。そしてそれを実現するテクノロジーは既に生まれている。一律に同じ内容を大勢に送り付けるマスメールやマス広告よりも顧客の行動に基づいたトリガーメールやターゲティング広告を、コールドコールよりもソーシャルセリングを、誰がいつ見ても内容が変わらない静的なWebサイトよりもWebパーソナライズを活用していくべきである。

 そして、顧客のライフサイクル全体を見据えることが重要だ。マーケティング部門においても従来のように新規顧客獲得ばかりではなく、顧客体験を創造し、LTV(顧客生涯価値)を高めることを意識する必要がある。

組織と人材

 しかし、従来の組織体系は機能別に分かれており、顧客体験の創造を念頭に設計されてはいない。顧客の行動がクロスチャネル化しているのに対し、企業のマーケティング(プロモーション)活動はテレビや印刷物、Web、イベントなどチャネル単位に分断されている。サイロ化した組織はそれぞれ顧客のライフサイクルを部分的にしか担うことができず、一貫した顧客体験を作り出すことを困難にしている。こうした課題を解決するためには、従来の機能別組織編成を見直し、クロスファンクショナルチームや集中組織を作り、共通の指標を持ちながら一体となって動くことが効果的である。

テクノロジー

 テクノロジーやデータを活用した「データドリブンマーケティング」が顧客体験の成功においては必須である。その中で、CMO(マーケティング部門)が最も重視すべきなのが、CIO(IT部門)のサポートだ。2部門が協調して、テクノロジーの利活用に関する意思決定を下さなければならない。

 ここで難しいのが、マーケティングテクノロジーの選定である。世界的にデジタルマーケティングは成長分野であり、ここ数年、マーケティングテクノロジーのツールベンダーは増加の一途にある。2011年には150社程度だったのが、2016年は3800社近くがマーケティング業界に集結しているともいわれている。進化の早いこの分野で、自社に最適なソリューションを見つけるのにマーケティング部門、IT部門どちらか一方だけで判断するのは困難だ。

●マーケティングテクノロジー採用のフレームワーク

 このような状況下、自社に最適なマーケティングテクノロジーを見極めるためには以下のようなフレームワークが必要となる。

ビジネスモデルの観点

 ビジネスモデルはB2Bか、B2Cか。マーケティング方針はインハウスかエージェンシーへのアウトソースか。また、グローバル企業の場合には、本社集中管理か、どこまで各拠点に権限移譲するか。

市場戦略の観点

 顧客は誰か。ターゲットとすべき見込み客は誰か。リーチするためにどのようなキャンペーンを打つか。どのチャネルを活用するか。適切なコンテンツは何か。

 上の2つの観点は、従来型のマーケティング部門でも検討できる範囲だが、多くの企業で見過ごされがちな以下の2点にも目を向ける必要がある。

組織の観点

 まず、将来の拡張性。現時点では「単純なメール配信をするだけ」と、スモールスタートのつもりでツールを導入したものの、やがて事業が拡大したときに身動きが取れなくなってしまうということがある。長期的に業務が高度化することを視野に入れる必要があり、こうした場面でIT部門からのアドバイスが必要となる。次に、複雑なビジネスモデルに対応できるか。1つの会社の中にB2BとB2Cが混在していたり、商材によって受注までのプロセスや商談期間に幅がある場合に対応できるツールかどうか。その他、グローバルとローカルのバランス、権限設定やワークフローのガバナンス、カスタマーサポートなどの視点でも、IT部門のレビューを受けることが有効である。

インテグレーションの観点

 シングルベンダーかマルチベンダーか、データ連係の方法やデータ移行、運用サポートコストの試算もしっかりしておく必要がある。

 最後に福田氏は、グローバル企業における成功事例として、Microsoftの事例を紹介した。Microsoftは数年前にマルケトのマーケティングオートメーションツールを導入、400万件のリード作成、マーケティング経由で45%の受注件数増という実績がある。

 ツールは当初、幾つかのビジネスユニットで小規模に導入し、最初は「Microsoft Azure」の部門で、次に「Office 365」、その次に「Microsoft Dynamics」というように、個別の成功状況を見ながら北米全社、そしてグローバルに展開していった。

 将来の拡張を見据えながら導入を進めていくに当たっては、上記のフレームワークを使い、IT部門が取りまとめ役を担った。同社ではマーケティングオートメーションツールの導入後も、自社のCRMとの連係やイベント、ソーシャルメディアの管理など多様な機能を追加していく必要があったが、IT部門が参画したことにより、顧客のデータを蓄積しながら、チャネルごとに最適なソリューションを提供していくことに成功しているという。

 マーケティングチャネルや顧客タッチポイント、顧客ライフサイクルの統合は、戦略、組織と人材、テクノロジーを意識したマーケティングテクノロジーの活用により初めて実現可能になる。

 福田氏は「デジタルトランスフォーメンションの最大のポイントとは、自社が顧客中心の組織に変化を遂げること」と締めくくった。

最終更新:10/16(日) 7:10

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