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山下智茂氏、作新学院・小針崇宏監督対談【2】尾藤監督から『高校野球を頼む』

デイリースポーツ 10/16(日) 11:00配信

 デイリースポーツ評論家の山下智茂氏(71)=星稜総監督=が次世代の高校野球を考える企画。第9弾は今年54年ぶりに夏の甲子園を制した作新学院の小針崇宏監督(33)を訪ねた。「怪物江川」らを輩出した名門の復活を成し遂げた若き指揮官の原点は、尾藤公氏(箕島元監督)、山下氏が講師を務めた若手指導者育成の「甲子園塾」だった。【1】~【5】でお届けする。

【写真】作新学院・小針崇宏監督 心に響いた「野球を愛しているか」

  ◇  ◇

 -甲子園を経験した後に、甲子園塾へ行った経緯は。

 小針崇宏監督(以下、小針)「自分から申し込み、当時の栃木県理事長の堀江先生にチャンスをいただけないかとお願いしました。『お前は(甲子園に)行っただろう』と言われたけど、まだ(就任)3年目だし(受講資格の)10年未満。もう一度しっかり勉強したいと言ったら、よし、勉強してこい」

 -講師は?

 小針「(当時鳴門工の)高橋広先生(現早大監督)、(元育英監督の)日下篤先生でした」

 山下智茂氏(以下、山下)「高橋先生は怖いよ。ユニホーム着たら鬼だから」

 小針「鳴門工時代もすごい練習だったと聞きました。自分一人で旅に出たことがありまして。1年目の冬から2年目に。四国に行かせてもらった。大学時代の知り合いが尽誠学園にいたこともあり、そのつてで鳴門工で練習を見せてもらい、高橋先生と食事もさせてもらったんです。そうしたら、甲子園塾で高橋監督とご縁がありました」

 -学んだことは多かった?

 小針監督「3年目に甲子園に立たせてもらったけど、なぜ行けたかとか、なぜ勝ったかわからないままでその年が終わろうとしていた。もう一度、自分自身の原点に立ち返る意味でも、甲子園塾で指導者としての基本を学べました。選手の気持ちに入っていくというか、心づくりというか、選手を叱るにしてもほめるにしても、何が原点になくちゃいけないか、自分のあり方に気づけた2泊3日だった。まだまだ足りないことだらけで、そういうのを見つめ直せたので、行かせてもらってよかったと思います」

 -山下氏も塾では熱い指導をするが。

 小針「熱さがすごく伝わってきました。自分が恥ずかしかった。基本のキャッチボールとかトスバッティングとかノックとか、負けてられないけど、かなわないなと思いました。1球1球ノックの打球とか、選手へ声をからせているところとかを見せていただいた。テクニックじゃなく、原点みたいなの。それまで自分は(生徒に)勝手について来いというタイプだったので、力を伝えていくことの必要性を感じました」

 山下「私もよく覚えていますよ。(初代塾長、元箕島監督の)尾藤(公)さんと僕らで集まっている時に、尾藤さんが『目つきが違うな、あいつ』と言っていた。ちょっといじめてやろうと(笑)。『お前は作新を強くするんだぞ、お前しかいないぞ、頑張れよ』と言っていた覚えがある。尾藤さんはもうその時に体調が悪かったけど『小針、小針』と言っていた。名門復活と力が入っていたよね。甲子園塾は有名校より県立校などの指導者育成の趣旨があるけど、その中で顔つきや目つきが群を抜いていたと思う」

 小針「(座学で)よく当てられました(苦笑)。お声がけしていただいた。尾藤監督から『これからの高校野球を頼むぞ』と言っていただいた時に、すごくジーンとしたのを覚えています」

 山下「今回の優勝も尾藤監督が一番喜んでいるんじゃないかな。(塾生で)最初に日本一になったからね。監督7人、部長3人くらい出ているけど」

 小針「今夏は、富山第一の監督、黒田(学)先生が、同じ年の受講生です。あの甲子園塾から本当のスタートを切れたと思います」

 山下「実は、大会前に放送局から優勝候補を聞かれて、作新学院と言ったんです。理由は、監督が結婚したから(笑)。投手の奪三振数と打率がよく、三拍子そろっているのもあったけど、監督が結婚したら優勝するよ」

 小針「ありがとうございます。(子供は)1歳3カ月です。(結婚して)切り替えができるようになりました。それまでは寮で朝から晩までだったので(選手は)顔を見たくなかったでしょう」

 山下「僕は6畳と8畳の二間の時に最初の女の子が生まれた。秋の大会があるのにやかましいから、出ていけと言ったら(妻が)いなくなって。自転車に乗って探しに行ったら、公園のブランコに乗ってあやしていました。子供ってそうやって育てるのかと思ったら、生徒への接し方も変わりました。それまではわがままで、野球、野球だったけど、子供を育てるのは大変。言葉を慎まないといかんなと反省しました(苦笑)」

 小針「いまだに言うたびに反省しています」

 -甲子園塾を受講後の変化は。

 小針「言うべきことを言うようになりました。選手にこういう考え方でチームを動かしたいと伝える。いいものはいい、ダメなものはダメと選手に言える関係をつくらないといけないという部分ははっきりした」(3に続く)

最終更新:10/16(日) 12:44

デイリースポーツ