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吉田鋼太郎、蜷川シェイクスピアを引き継ぐ 『彩の国シェイクスピア・シリーズ』2代目芸術監督に就任

デビュー 10/16(日) 20:34配信

 俳優・吉田鋼太郎が15日、『彩の国シェイクスピア・シリーズ』の2代目芸術監督に就任したことを発表した。彩の国さいたま芸術劇場において、シェイクスピア戯曲全37作品の完全上演を目指すシリーズを担ってきた先代・蜷川幸雄の遺志を受け継ぎ、吉田が残る5作品を上演する。吉田は「自分にとって父のような存在」と蜷川に思いを馳せた。

【写真】『彩の国シェイクスピア・シリーズ』2代目芸術監督に就任した吉田鋼太郎

 蜷川が亡くなる約1ヵ月前の今年4月、病室を見舞った公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団の竹内文則氏は「鋼太郎が役者の面倒を見ることも含めて、残りをやってくれたら安心なんだがなぁ」という言葉を聞く。この言葉を受けて9月20日に行なわれた会議で、吉田の2代目芸術監督就任が正式決定した。今後は『彩の国シェイクスピア・シリーズ』未上演の5作品(『アテネのタイモン』『ジョン王』『ヘンリー五世』『ヘンリー八世』『終わりよければすべてよし』)の上演に着手することとなる。

 これまで上演された32作品中、吉田は12作品に出演し4作で主演を務めている。蜷川の絶対的な信頼を受ける吉田は、2代目芸術監督に最もふさわしい存在だ。会見に同席した株式会社ホリプロ ファウンダー最高顧問・堀威夫氏は「『世界のニナガワ』の跡を継ぐというのは、勇気のある決断だと思う」と吉田を讃え、「ホリプロも社をあげてバックアップする」と約束。そして竹内氏によれば、蜷川はシリーズ完全終了の暁に、特別バージョンの『テンペスト』を上演することを計画。主人公・プロスペローの最後の言葉に、演劇に関わった全ての人への感謝を重ね、その台詞を託すプロスペローを演じるのは吉田しかいないと考えていたのだという。

 これだけ強い絆で結ばれた蜷川と吉田の出会いは、実は最悪なものだったと吉田は振り返る。「22歳のとき、『下谷万年町物語』という唐十郎作・蜷川幸雄演出の主役オーディションを受けたんですが、落ちまして。100人のオカマの一人として出ることになったんです。100人の群舞の稽古のとき、オカマをどう演じていいかも踊りのこともわからないときだったので、適当な感じでやっていたら、蜷川さんに『そこのお前―ッ!!踊れーっ!オカマで踊るんだーっ!』って怒鳴られて。それで嫌になって稽古場から逃亡しました(笑)」

 しかしその後「2004年の『お気に召すまま』のとき“小栗旬、成宮寛貴の台詞がどうにもならないから見てくれ”と言われたのをきっかけに、若手俳優の演技指導をやりはじめたんです。そのときから今日のことが始まったのではないか」と述懐。そして新たに芸術監督を引き継ぐ上で「シェイクスピアをやるからには、キチンと受け継ぐべきなのは言葉」と語る。「役者が言葉をしゃべれなければ、どんなセットも演出も台無しなんです。シェイクスピアを演じる上では、まず詩で書かれているので朗誦しなくてはいけない。そのうえで血と肉を入れて台詞・会話にできなくては。そこで壁が高くなるので、脱落していく俳優が多いんです。それを蜷川さんは “とにかくシェイクスピアは言葉をしゃべれなくてはダメだ”と危惧していたので、そこだけは受け継いでいきたい」と気を引き締める。

 さらに蜷川の「老若男女がドキドキワクワクする、唯一無二の演出」の魅力について「海外のカンパニーがシェイクスピアを上演する際には、物語の整合性を考えるあまり突拍子のないことが出来ずに、戯曲の持つ桁外れたエネルギーが押し込められてしまう。蜷川さんはシェイクスピアの“いいかげんさ”も含めて完全に解放してしまう」と説明。「自由な発想と自由なエネルギーの蜷川幸雄の血が自分にも流れていると思う。蜷川さんの血と自分の血とを混ぜ合わせて、新しいものを作れれば」と前を向いた。

 ここから2代目芸術監督としてのスタートを切ることになる吉田。「蜷川さんは、地味であまり上演されない、自分がやりたくないヤツばかり残してるんです」とぼやいてみせながら「だから逆に燃えるんですよね」と意気込む。「自分をここまで自分を引きずりあげてくれた蜷川さんは、恩師や師匠というより、父のような存在。恥ずかしいので面と向かってお父さんとはいいませんけど(笑)」という吉田。『父』の言葉、財産を受けて新たなシェイクスピアを作り上げる。

最終更新:10/18(火) 17:41

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