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県内「聞き書き」に注目 お年寄りの語り、冊子に

北日本新聞 10/16(日) 0:24配信

 お年寄りらの話を聞き取り、話し言葉のまま小冊子にまとめる「聞き書き」の活動が県内で広がっている。お年寄りと交流するボランティアにとどまらず、患者に寄り添う看護に生かしたり、人材育成に取り入れたりする病院や短大もある。22日からは富山市内で聞き書きボランティアの養成講座がスタートする。関係者はお年寄りの生きがいを育む地域づくりにつなげる考えだ。(社会部・荒木佑子)

 9月下旬の昼下がり。かみいち総合病院(上市町法音寺)の一室から、入院患者の女性(81)の楽しそうな声が聞こえてきた。「子どものころは女の子なら家(うち)ん中でメンコしたり、お手玉で遊んだり。その時分にゃ何(なん)にもなくて、それで楽しいがいね」

 ペンを手に「そうだわねぇ」と笑顔で相づちを打つのは、看護部担当の山崎列子副院長。女性はうれしそうな表情で「貧しかったけど良(い)かったわ」と思い出を語り続けた。

 山崎副院長は富山聞き書きボランティアクラブ(代表・八塚美樹富山大大学院医学薬学研究部教授)のメンバー。2010年に知人を通じて聞き書きを知り、これまで知り合いや母ら4人の語りを冊子にまとめて手渡してきた。

 病院でも患者とのコミュニケーションに生かせると考え、今年から患者の思い出話などに耳を傾け、書き留めて家族に渡したり、医師に伝えたりする取り組みを始めた。

 「病院では治療に必要な会話ばかりになりがちだけど、人生を語ってもらうと皆さん笑顔になる。本人だけでなくご家族とも良い関係を築くのに役立っている」と言う。

 北陸では、10年ごろから石川県を中心に聞き書きの講座や講演会が開かれるようになり、県内でも関心を持つ人らが同クラブを結成して広めてきた。同クラブによると、聞き書きは▽お年寄りが話すことで「自分にも役割がある」と生きがいを感じる▽聞き手側が知識や技術、生き方を学ぶ▽人々の歴史が活字で残る-などの意義があり、認知症ケアにも役立つ。

 砺波総合病院(砺波市新富町)も4年前から、看護師とボランティアが希望する患者への聞き書きを行っており、完成本は27冊に上る。本人や家族に喜ばれ、増刷を求められることもあるという。松原直美看護部長(59)は「冊子は患者さんの生きた証しであり、地域の財産」と話す。

 看護学生の育成に生かす動きもある。富山福祉短大(射水市三ケ・小杉)は看護学科2年生の授業に聞き書きを取り入れ、高齢者施設で実習も行う。「看護する相手の身になって話を聞く姿勢を養える」と炭谷靖子看護学科長(62)。学生中心の聞き書きサークルも今月発足した。

 富山聞き書きボランティアクラブは22日から来年4月まで、富山市中央保健福祉センターでボランティア養成講座を開く。4回継続で講師は天野良平金沢大名誉教授。作家の小田豊二さんの特別講座もある。八塚代表(57)は「聞き書きはお年寄りを敬い、学ぶ心が基本。この文化を富山に根付かせたい」と話した。

 講座は受講無料、定員40人(予約制)。問い合わせは同クラブ、電話076(422)1172(平日のみ)。

北日本新聞社

最終更新:10/16(日) 9:28

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