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androp、未来に対する“最高の青写真”を示した『best blueprint』ツアーファイナルをレポート

M-ON!Press(エムオンプレス) 10/17(月) 15:13配信

光と闇、希望と絶望。陰と陽がつねに一対で語られるように、まったく正反対のものとして捉えられる二者は、往々にして根本は実は同じものだ。単にスポットライトを当てる方向によって、どちらが浮かび上がるのかという違いでしかなく、すなわち闇を知らない者に本当の光は見出せない。そしてandropは自身がこれまで積み上げてきた“光”とあらたな“闇”、その両方を描くことで、そんな真理を我々に教えてくれたのだ。

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結成から7年目を迎え、より誠実に音楽を届けるべく、今年3月に“image world”を立ち上げた彼ら。その第1弾作『blue』を携え、全国5都市で敢行されたワンマンツアー『best blueprint』のファイナル、10月16日の東京Zepp DiverCity公演は、andropが7年で培ってきた過去と現在、さらに、その名のとおり未来に対する“最高の青写真”を示すものであった。

ステージに青い光が溢れてシンセ音が鳴り響くと、場内からは満場のクラップが湧き、大きくフロアを揺らしながら打ち鳴らされるその音と、ステージの上と下が一体となったコーラスが共鳴する「Voice」でライブはスタート。「もっといける?」との内澤崇仁(vo&g)に応えて合唱するオーディエンスの熱量に、そして“夢も嘘も愛も闇もずっとずっと忘れないでよ”というラストフレーズに、初っ端から熱いものが胸に込み上げてきてしまう。

「ようこそ、andropです」という挨拶を挟み、まず披露されたのは7月にリリースされたベスト盤『best[and/drop]』の楽曲たち。ステージへと手を伸ばすオーディエンスと、力強いサウンドで床を揺らすバンドとの求め合う力がしかと伝わる「One」で“ラララ”の大合唱を招けば、早くも場内はクライマックスの様相に。間髪入れず続いた「Roots」といい、佐藤拓也(g)が愛器をロックにかき鳴らす「Glider」といい、メンバーから放たれる気合たるやすさまじく、曲が終わるたびに湧き上がる拍手との相乗効果で、会場の熱気は天井知らずにヒートアップ。派手に明滅するライトを浴びて、前へと突き進むバンドの姿には一点の迷いも曇りもない。

加えて、今ツアーではサポートキーボーディストが帯同していることで、そのサウンドはより色鮮やかなものに。「Colorful」では曲を牽引する前田恭介(b)のワイルドなスラップベースに鮮烈な鍵盤プレイが掛け合い、歌詞のとおりにステージバックの白いキャンバスが次々に色を変えれば、あっという間に幻想的な世界へ。「Nam(a)e」で透明感を増した内澤のハイトーンな歌声は、続く「Bell」でも零れ落ちる朝露のようなクリーンギターの音色に映えて、サビへのエモーショナルな展開を際立たせる。さらに内澤と佐藤が向き合ってギターを鳴らして幕開けた「Rainbows」では、“君はいつでも君でいいよ”と聴く者を勇気づけるメッセージと、ステージから上空を照らす七色のライトのマッチングに、ポジティブなオーラが全開。これぞ7年で培ってきたandropの集大成なのだろう。

ベスト盤に収録された未発表曲「Sayonara」で交錯する幸せと悲しみを歌い、andropならではの繊細な感情描写を体現すると、佐藤から「来年は2年ぶりに各地を細かく回る予定!」とうれしい報せが。さらに「みんなに“andropいいね”と思ってもらえるライブにしたい」という内澤の言葉を有言実行すべく、オーディエンスとのコール&レスポンスもたくましい「Run」からはダンサブルにフロアを巻き込み、「MirrorDance」では伊藤彬彦(ds)が演奏中にドラムスティックを放り投げて見事キャッチする場面も(笑)。客席から絶えず聴こえるクラップと合唱に、彼らの楽曲が間違いなくリスナーの生活に寄り添っていることを実感させると、ここで内澤がimage world設立と新作『blue』に対する想いを語り始めた。

「何がいちばんやりたいかって、聴いてくれる人に対して真摯に音楽をやっていくこと。7年間、光だったり希望だったりを描いてきたのは、音楽は辛いとき、悲しいとき、何かにチャレンジするときに力をくれるものだと思うから。ただ、これからはいろんな音楽をやりたいと思っていて、光を描くんじゃなく絶望的な闇を描けば、聴く人によって感じ方も違うはず。それがその人にとっての強烈な光のカケラのような気がして、それを感じてほしいと作ったアルバムです」

そして「ありきたりだったり周りに評価されなくても、その道を突き進んでほしいという想いで結成初期に作った曲です」と披露されたのは、ベスト盤に収録されているもうひとつの未発表曲「Hana」。歳を重ねれば誰もが感じたことのある虚しさや諦めを、優しく抱きしめて溶かしてくれるような歌声に、人肌の温もりから徐々に温度を上げていくプレイは、今回のツアーにおけるひとつの大きな分岐点であった。ここから先『blue』の収録6曲が次々たたみかけられると、夢も希望も霧散することになる。

ライブ冒頭と同じように青い光が満ち、歪なギター音が不穏な空気を振りまいて、素直な声色からは想像もできないほど憎悪に満ちたリリックを内澤が吐き出す「Kaonashi」で空気は一変。不整合なコード展開に原色で瞬くライティングと不吉極まるムードのなか、鬼神のようにスティックを振るう伊藤を背に、ヒリヒリするようなテンションで“あなたを許せない”と絞り出してボウイング奏法で弦をかき鳴らす内澤の姿は、まったく狂気に満ちたものだった。続く「Irony」も淡々としながら歌の内容は相当に痛烈で、むしろ抑揚を抑えたぶんだけ苦しみの果ての勝利を誓ったリリックが心の深部に刺さる。デジタリックなダンスチューン「Digi Piece」に至ってもフロアが身じろぎひとつできないのは、煌びやかなビートの裏に強烈な皮肉と焦燥が見え隠れするから。恋人同士の時間を舞台にして、性急なギターとスラップベースでアグレッシブに雪崩れ込む「Sunny day」でさえ、愛する人との通い合わない残酷な心模様を描いているのだからすさまじい。

そしてラストの2曲はandropで初めて内澤以外のメンバーが手掛けた曲というのも、彼らのあらたな挑戦を示すものだろう。佐藤作曲の「Kienai」はキャッチーなメロディながら、描いているのは絶望と悲愴であることは“誰か助けてよ”と歌う内澤の血の滲むような声音や、高速へヴィに刻まれる伊藤のドラミングからも明らか。最後に美しいピアノの音色から幕開けたバラード「Lost」は前田の曲に伊藤が歌詞を載せたもので、“どうか許してほしい 未来へと”というフレーズがandropの紛れもない変化を証明する。未来へ向かうという前向きな姿勢に許しを請うとは、果たしてどういうことなのか? その答えも告げず「どうもありがとう。また、音楽で会いましょう」とひと言だけ告げて、青い光のなか彼らは去った。まるで、答えは彼らの音に触れるそれぞれの胸に委ねるかのように。

『blue』で描かれた闇を具現化した最終ブロックでは、ステージ背後のスクリーンに無数の“眼”が映し出されていた。それは“人の目”から逃れられない現代社会で、絶望や不信感に苛まれながら、いかに自分らしく生きるか? を問いかけていたからのような気がしてならない。しかし、結局それは「Hana」で歌っていたことと少しも変りないだろう。より眩い光を目指すため、より色濃い闇へと身を沈めた彼らの目に映る“次”に興味は尽きないのだ。

TEXT BY 清水素子
PHOTO BY Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

androp OFFICIAL WEBSITE
www.androp.jp

最終更新:10/17(月) 15:13

M-ON!Press(エムオンプレス)

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